夢精2
「ここが退魔寺か…。ごめんくださーい」
門から続く石畳を歩いてくる。
「おや、お客さんとは珍しい。どうされまし…は!」
表れた坊主が謎のリアクションをとる。
「お待ちなさい!待った!待った!今準備してくるから!」
謎の気迫に気圧された僕が玄関先で突っ立ってると直に坊主が表れ、本堂に通された。
「そこの座蒲団に座りなさい」
「ありがとうございます…」
「今日来た理由は分かっています。あなた悪霊に取り憑かれているでしょう?」
まさか本当にサキュバスだったとは…。
「ええ。実は数ヵ月前から連日連夜夢精してまして…サキュバスかなんかじゃないかと」
「なるほど分かりました。ここ退魔寺は昔からその手の事件を扱っています。伊勢崎の退魔寺とは関係ありませんがね」
坊主が笑って言った。
「私は夢範といいます。」
「ああどうも。松本と言います。よろしくお願いします」
「さあ早速除霊を始めましょう。何すれば良いんだったかな…」
「ちょっと大丈夫なんですか!」
夢範の言い方に慌てて答える。
「申し訳無い…。何分除霊は何十年ぶりでして…」
さっきまであんな偉そうな口叩いてたのに…。
「取り合えずお経を読みましょう。」
「取り合えずって…」
夢範は準備を整えて経文を開いた。
「では。…南無――
「きゃあああ!」
途端に少女のような声の悲鳴が響きわたる。
「もう出てきましたか…、南無しか言ってないのに…」
夢範の声を無視して辺りを見回すと、そこには猫耳の美少女が倒れていた。
「……ごめんなさい」
ごくり。
僕は思わず生唾を飲み込んだ。