夢精13
故郷の駅のホームへ付くと僕たちは電車を降りた。誰もいない。高崎の時と同じように結界が張られているのだろう。ある程度は予期していたことだ。
「お待ちしていましたよ」
ベンチに一人の男が座っている。
「私は桐生署所属の陰陽師、斎藤美足と申します」
こいつが群馬県警最強の…。
「あなたが私の後輩を三人も倒した松本くんですね」
「そうだ」
「いやあ、申し訳ない」
意外な言葉が出た。
「皆功に焦ってあなたに失礼な振舞いがあったでしょう」
話しの通じる相手かもしれない。
「そうだ、こちらは何も後ろめたいことはないぞ」
「しかし警官を三人も倒した」
「それは!」
「わかっています。しかし私もね、わくわくしているのです。久しく好敵手が居なかったものでね。そこでどうでしょう。もしあなたが私を倒すことが出来たなら、貴方の罪は無かったことにして、あなたたちの今後の幸福な生活を約束できるよう取り計らいましょう」
「…良いでしょう。その約束守って下さいね!」
言うと同時に僕は飛び掛かった。しかしそこにはもう斎藤はいない。
「そうです!そうこなくては!」
頭上から声が聞こえる。見上げると斎藤がまっ逆さまに落下してきた。
僕は体の周りに炎を展開し、待ち構える。しかし斎藤が僕に触れると斎藤の体は途端に水となって、僕に降り注いだ。
「何!」
体がびしょ濡れに…。
「くらいなさい!」
強烈な電撃が僕を襲う。
「ぐぐぐ…」
「ほう、耐えますか。なんて強さだ」
僕は寸の間を置かずに飛び掛かかる。
「何度も何度も!捕まりませんよ!」
斎藤が嘲笑って言う。しかし…
「な!」
僕の体は囮だ。斎藤が僕に気を取られている間に僕は斎藤と僕の周りに小さく結界を張った。
「自分ごと閉じ込めましたか…。どうします?」
「こうするんだ!」
僕はありったけの力を解放して霊力を爆発させた。これならあいつも立っていられまい。駅自体を覆っていた結界が壊れていくのがわかる。僕の勝ちだ。
「あいつは…?」
「すばらしい…! 自爆して尚も立っていますか。良いでしょう、あなたたちの今後は私が保証しましょう!」
そう言うと斎藤は霧となって消えた。
「逃走用するだけの力が残っていたのか…。もしあいつが死ぬ気ならとても叶わなかったな」
僕とミケは二人手を取り退魔寺へ向かった。
「すごい、すごいよひいくん。こんな日が来るなんて…」
「いやみっちゃん、これからだ」
そうだ、これからだ。僕たちの人生はこれから始まるんだ。僕たちの明日は明るく照らされている。僕は期待に胸踊らされながらこれからの事を色々考えていた。
私の処女作です。
処女作がきたない。