夢精11
「ようこそ、高崎へ。私は群馬県警陰陽課、高崎署所属の刑事田中正秀と申します。あなたが私の同僚を二人もやった松本夢声さんですね?」
「ああそうだ!だが僕たちは誰にも危害を加えちゃいない、何の権限があって僕たちを襲うんだ!」
「あなたたちは二人も傷付けたじゃありませんか…。死になさい!」
「それは向こうが…、くそう!」
田中は問答無用で襲い掛かってきた。
「急急如律令!」
田中が呪文を唱えると、その手には二刀の大剣が握られていた。あれが田中の戦闘スタイルのようだ。
あの大剣はもちろん金属性だろう。なら火属性で十分対処できる…。しかし…
「そのような事で私を防げるとお思いで!」
僕の放った火球をいとも簡単に切り捨てると僕の方へ突進してきた。僕も刀を召喚して応戦するも、呆気なく刀は弾かれ僕は地に膝をついた。強いぞこいつ!
「ひいくん!」
「ゲームオーバーですね…。死になさい!」
田中は勢いよく大剣を降り下ろした。僕は覚悟した。しかし、いつまでたっても生きている。恐る恐る顔を上げると…、
「な、なぜだ!体が、う、ご、かない…」
田中は金縛りに逢ったように、いや、文字どおり金縛りに逢いぴたりと動きを止めていた。
「なぜ!なぜ!」
ふぉ!ふぉ!ふぉ!
「笑い声が聞こえた方向へ顔を向ける。そこには雲の上に乗って老爺がこちらを見下ろしていた。
「あなたは…、神山仙人!」
田中が怯えた声で叫んだ。
「そこまでじゃあ、お二人さん…」