序幕
「しかしつまらん依頼を受けたもんだな。」
「確かに退屈ではあったけどそう言うのもどうかねぇ?そこそこ面白かったじゃーん。」
「そうか?」
こんな会話をする二人の黒髪の男と少女がいた。
二人はとあるギルドの少女師団長と補佐である。お互いに強い信頼関係にあり、この少女師団長の人を嫌う性格から考えてこの男だけが彼女の信頼関係にある唯一のイレギュラーと言えるだろう。
ここで二人の容姿を説明しておこう。
男は目の下までかかる長い前髪で、腰あたりに拳銃を一つぶら下げ、日本刀を腰にさしているだけの簡単な装備。
少女は(といっても18ほどだろうが)真夏でも真冬でも、この足元まで覆い隠す黒いドレスを着ている。髪は腰あたりまであるロングで、背中に大鎌、日本刀。腰のベルトに魔術書と鞭がつけてあり、キャミソールワンピースの中にはナイフや鋼糸が入っている。
「ドラゴンの討伐なんて年に何度かの大仕事じゃん?それをつまんないって言っちゃダメだよー。くひひひひひひっ」
口元に手を当てて笑う少女をちらりと見たあと、無線に連絡が入ったようで男は手元の無線機に視線を移す。
「黒の師団、聞こえるか?面倒臭いことになった、すぐ帰還してくれ。」
「あいよ、うちの師団長に伝えとく。」
「頼んだぞ。」
無線が切れ、男は再び少女に目を向ける。
「帰れだってよ。」
「うぇー!?なにそれー!?ここ遠いじゃん!あーん面倒臭いー!」
ぎゃーぎゃーと不満を撒き散らす少女に、
「へいへい、ったくうちの師団長はよー。」
文字通りえり首を掴んで引きずりながら航空手段であるクラーク鳥に乗る。
「しゃーないね、みんな行くよー。」
少女が声をかければ、黒い集団が現れ、全員がクラーク鳥に乗り、男と少女の乗ったクラーク鳥を先頭に飛び立っていった。