【プロローグ2】昴という人物
今回は短いです。
※予定は未定ですが、しばらくは一日一話更新ペースでいくつもり。なるべく多分。
俺の名前は、立川昴。
『すばる』なんてどこのキャラ名だ?―――なんて思う人もいるだろうが、残念ながらこれは俺の実名だ。
キラキラネームとまでは言わないが、大の成人男性が名乗るのはかなり抵抗感がある名前だと思う。
名前に相応しい外見を持つイケメンなら関係ないかもしれないが、人並みのフツ面でしかない俺にはミスマッチも甚だしい。
正直、思春期の頃はこの名前が嫌いで仕方なかった。
しかしまあ、社会に出て大人になれば、良くも悪くもその辺は許容できてくるもので。
「似合わないでしょう?」という自虐で名前を売り込むのは、自己紹介の時の鉄板ネタにまでなっている。
そんな名前をつけた肉親は、両方とも生粋の秋葉オタク。
絵本の代わりに、ギャルゲー乙女ゲー(全年齢対象版)を読み聞かせ。
録画した深夜アニメを親と並んで視聴し、居間に流れるBGMは常にアニソン。
遊園地と同じ感覚でコミケを巡り、レイヤーデビューは小学生に上がる前に済ませた。
オタクの英才教育を受けて育ったと言っても過言ではない。
しかし実のところ、俺自身は自分のことをオタクではないと思っている。
それなりに知識はあるつもりだが、オタクを名乗るには熱心さに欠けるというか。
親の愛情は疑うべくもないが、自分よりもはしゃいでいる大人が2人もいると、逆に一歩引いて冷静になるものだ。
子供ながらに、自分がしっかりしなきゃいけないと、早くから自主性が芽生えたのは良いことなのか悪いことなのか。
まあ、反面教師が2人もいるせいで、確実に同年代よりも大人の階段を登るのが早くなったのは確かだ。
そんな俺が乙女ゲームの制作会社に就職したのは、因果なのか順当な結果なのか。
ぶっちゃけ要因は、就活中にあっさり試験と面接をパスしてしまったことくらいだ。
就職氷河期と呼ばれた時代にトントン拍子で入社できたのは幸運なことかもしれないが、それは更なる受難の始まりでもあった。
2対8という社内男女比に、色々と人間性に問題ありな先輩上司。
コアなファンがいる反面、運営や社外への対応などで黒い噂が絶えない職場。
右肩下がりの購入数を、速射と連射で何とか保ち、スピードを緩めたら即墜落するような低空飛行な環境。
少数精鋭で月刊レベルのハイペース発売、という過密スケジュールをマンパワー頼みで乗り切る日々。
新卒で入ったのでもう麻痺してしまったが、色々とおかしな会社だったと思う。
不満は日常茶飯事で、いつか絶対転職してやろうと思っていた。
その前に会社が潰れるとは予想外だったが。
『憎まれっ子世にはばかる』という言葉があるが、どうやらそれにも限度があったらしい。
しかし、まさか上司の痴情のもつれに巻き込まれて死ぬとは、流石に予想外がすぎる。
―――ましてや、自社ゲーの攻略キャラの一人に転生するなんて、一体誰に予想が出来たろう。
神様がいるなら、ちょっと一発殴らせてほしい。
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※作者のメンタルは高野豆腐なので、毒舌はほどほどに。
(高野豆腐=普通の豆腐より頑丈そうに見えるが、所詮は豆腐)