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ヒーローネイティブ(習作)  作者: 熊猫殺油地獄
魔法少女のそれから
4/4

おかしな二人(改稿予定地)

設定詰め込んでストーリー放置しちゃったので書き直し!

 ニオイっていうのかな、他人(ひと)に言うとおかしな顔をされるから、あんまり言わないようにしてるんだけど。必ず、どんな時でもってわけじゃない、でもニオイのする奴は大抵強い。

 だから私はニオイのする方に行けばいい。そうすれば、そこで強くて悪い怪人が――それに地底人だの宇宙人だの、人間の環境破壊に怒って山から降りてきた妖怪だのその他諸々が――暴れてるからだ。あとはそいつらをぶっ飛ばせばいい。

 ニオイのする奴がヒーローだったら……? そりゃサイン貰って握手さ!


「閉まっているな。なに、入館は5時までか……役人め」


 吐き捨ててユリが扉を蹴ると蝶番(ちょうつがい)がギシリと鳴いた。


「蹴るなよ、モノにあたっても仕方ねぇよ」

「貴様が連れてきたのだろ、時間ぐらい把握していろ!」

「アタシがわるいのかよ」


 非難を口にすると、ユリは大きく呼吸をしてから頭を振った。 


「……いや、すまん。失言だ」

「落ち着けよ。時間ならまだ充分あるんだからさ。ほら、向こう側からなら街が見渡せる」

「うむ……そうだな。すまん」

「なんだよ、キレたりあやまったり忙しいな、不安定かっ」

「己の愚さを猛烈に反省中の自己嫌悪中だ」

「気にすんなって! アタシはなんとも思っちゃいないから!」

「私も貴様についてはなんとも思っていない」

「だー!カワイくねぇ!」


 変なヤツだなと思った。

 少なくても、今までこんなニオイのヤツいなかった。怪人にも、ヒーローにも。

 ニオイのする奴はだいたい強いヤツだ。だからコイツも強い、それは間違いない。でもコイツのニオイは他のだれともちがう。

 コイツは……ユリは今までで一番”イイニオイ”がする。

 だから、コイツは今まで会った中で一番強いはずだ。そうじゃなきゃ、やっぱり変なヤツだ。


「ああ、たしかに此処ならよく見える。十分だ」


 頬の辺りで切りそろえた黒い髪が風に揺れている。夜の風は冷たい。凍えているのか顔色が悪く見える。ただでさえ白い肌が暗闇に青白く浮かぶ。

 今朝着ていた制服はこの辺の高校のだったな、でもこんな奴いたっけ? おぼえてない。

 テレビで観るアイドルなんかよりずっとルックスがよくて、ちがうな、あんなに下品じゃない。華奢で背が高くてモデルみたいだけど、もっと自然体で、でも動き方もいちいち女優みたいな、誰かに見られること前提の立ち振舞というか。たぶん”品がある”ってこういうことを言うんだ。きっとどこかのお姫様なんかは、こんな風なんだろうな。会ったことないけどさ。


「何をジロジロ見ている」


 実際お姫様みたいに綺麗な顔なしてるのに、なんだって目だけはこんなに鋭いんだろう。こりゃモテねぇな、残念な美人ってやつだ。絶対殴られるから黙っとこう。


「ん、なんにも。つーかまだ怒ってんのかよ」

「怒られるようなことをしたのか?」

「してねーけど。いちいち突っかかるなよ、ほんとにカワイくねぇな」

「生憎、容姿の是非を気にしたことなどない……私は、ない」

「なに言い直してんの。アタクシはそんなつもりないんだけどぉミンナがそう言うからぁアタクシそんなつもりないんだけどぉ。的な?」

「……」

「なんか言えよ!さみしいっ!」


 街が見渡せる場所に連れて行けといわれたから、せっかく山の上の展望台に連れて来たのに、さっきから拾った棒で地面をいじくっている。イジケてるのか?


「オマエ寒くねーの?」

「問題ない」


 嘘つけ、ずっと腕をさすってる。ズブ濡れのままで寒くないわけない。


「てか、なんでワイシャツ一枚なんだよ、季節感皆無」

「……関係ない――くしょん!」


 それが妙にカワイイくしゃみだったから、思わず笑った。

 睨むな、悪いのはアタシじゃないぞ。 


「だからさ、さっきのコインランドリーで乾燥機に突っ込めばよかったんだ」

「バカを言うな、貴様と違って私はこれ一枚なんだ、下着姿でうろつけるか」


 上に着ているものを交互に乾かして、さて下もとジーンズを脱ごうとしたら、物凄い勢いで止められた。


「別にいいじゃん。見られて恥ずかしいもんじゃねぇ」

「阿呆、釣りが要るほど恥ずかしいわ」

「え? 金もらったら脱ぐの?」

「……殴るぞ」

「あれか、ボリュームか? アタシより小さいの気にしてんのイッテ! 殴った! マジで殴った! さっきヒザ入ったとこ正確に突いてきた!」

「まったく! いいか? 貴様はもっとこう、恥じらいというものをだな――」


 小言がはじまったので、上着を脱いで投げつける。


「着なよ、お姫様」

「お…… 何故! いや、何だ、そのお姫様というのは」


 冗談で言ったのに、どういうわけかユリは目を白黒させる。

 なんだろう、やけに動揺されてこっちが驚く。


「え? なにそのテンプレ反応! なになに、マジなの? 当てちゃった系?!」

「チッ……」

「なにその舌打ち! なにそのオモシロ設定! 謎の美少女マジお姫?!」


 ユリがゆっくり体を起こしてアタシを見た。

 しまった、茶化しすぎたか。

 また殴られるかと思い身構える。でも拳は飛んでこなかった。

 ユリはただまっすぐアタシを見つめた。


「どのみち話すつもりでいた」


 風が吹いてユリの黒い髪を乱す。

 鳶色の瞳に映った街の灯が星のように輝いている。


「アサギリ、オマエは私を信じるか?」

「信じるよ」


 即答した。


「……今日、会ったばかりの人間のことを、どこまで信じられる」


 アタシは手を伸ばしてユリ顔にかかった髪を小指で払う。


「相棒が信じろっていったんなら、とことん信じるよ」


 乱れた髪を撫で付けてやる。やわらかい髪が指に絡んで気持ちがいい。


「だから、全部話してみな」


 ユリは抵抗もせずに、しばらくされるがままになっていたが、やがて諦めたようにため息をついて、それからアタシの手を軽く振り払った。


「全部、か」

「全部だ。どっちかって言うと、お前のほうがアタシを信用してねぇ。疑ってるというか、使えるかどうか値踏みしてるって感じだ」

「貴様は……貴様のその感の良さは何なんだ」

「そりゃあオマエ、ヒーローは悩める子羊も助けなきゃいけないからな!」

「手広いな、看板に偽りなしか」


 ユリはせっかく整えてやった頭をガシガシと掻いた。

 それから、多少忌々しそうに眉をひそめて、それでもやっぱり真っ直ぐにアタシを見た。

 その目は、ほらな、嘘をつくヤツの目じゃない。思いつめて、これから大事なことを話すつもりなんだ。

 付き合いは長くないけど、少し話してわかった。ユリは不器用なヤツだ。糞真面目なせいで嘘をつけないタイプだ。すぐに顔に出るくせに、何でもかんでも一人で背負い込むタイプだ。

 コイツはバカじゃないから、そこの所をよくわかってる。だからこれは、コイツがアタシを信用するための儀式みたいなものなんだ。


「正直、躊躇(ちゅうちょ)している。だが子供たちを助けるためには必要だ、話さなければいけないだろう」


 ユリがほんの少しだけ苦しそうな顔をした。


「荒唐無稽な話に聞こえるかもしれんが、真実だ。嘲笑わないで聴いてくれ」


 笑うもんか。アタシはヒーローだから、ヒーローとして相棒の言葉を真剣に受け止めなくちゃいけない。それがどんなにぶっ飛んだことだろうと。


「私は異世界から来た」

「ぶひゃははははははははははは!」


 爆笑した。











「なるほど、話は大体わかった……ぶふっ」


 アサギリが地面に座ったまま首を縦に振った。うなずいたというよりは、笑ったのを覚られぬよう視線を逸らしたといったほうが正しい。

 一方、ユリは仁王立ちで腕組みをしていた。先程までの寒々としたワイシャツ姿も、今はアサギリに渡されたジャージに袖を通し多少ましになってはいるがいるが、凍えて青ざめていたはずの頬が赤く上気しているのは、上着ではなく怒りのせいだった。

 

「私は今、心の底から貴様が死ねばいいと思っている」

「いやいや、もう設定が卑怯だわぁー」

「卑怯とは何だ卑怯とは!」

「だってお姫様っていったら、精々どっか名前も聞いたことない国とかそういうのじゃん! それがオマエ、ふひっ、ファンタジー(笑)って、んふふふふ、オモシロすぎんだろ。くふっ、でゅふふふっ」

「……笑い声の引き出しは開け尽くしたか? まだならその口を縫い付けても構わんだろうか」 

「いちいち怒んなよ。あーツボった、腹いてぇ、腹筋がやべぇ」

「悪い腹筋だな。裂いてやろう」

「わかったって! 脅しが血なまぐせぇんだよ」

「下半身にさよならを言え」

「あーもう! わるかったって!」


 ユリはアサギリに全てを話した。

 自分の生まれ育った異世界、触れ合った人々のこと。世界の崩壊と愛するものとの別れのこと。それからこの世界でのこと。偽りの家族、偽りの友人。偽りの自分。

 そして、たった一人の”本物の妹(小春)”のこと。

 その必要はなかったのかもしれないが、アサギリは――何度か吹き出してはいたが――ユリの話すことに一度も口を挟まず聴きに徹していたし、ユリはユリで、自分の後悔や罪悪感を他人に押し付けていいものかという若干の葛藤はあったものの、今まで誰にも話せなかったことを吐き出し、なんだか気分が軽くなった気がして、結局全て話してしまったのだ。


「それで?」


 アサギリは先程より幾分真面目な顔をする。


「どうして急に、魔法が使えなくなっちゃったわけ?」

「ファンタジー(笑)だナンだとバカにしていた割には、妙に素直に受け入れるのだな」


 対して憮然とした表情をしていたユリが、片眉を釣り上げる。


「バカにしてたわけじゃねぇよ? ただ想像の斜め上だっただけだ。っていうか魔法くらい見たことあるし」


 さも当然というように答えて、アサギリは立てた人差し指を杖を振るように回した。

 驚いて目を丸くしたのはユリである。


「なに!? そんなはずは――いや、もしかすると! そ、その、名は? 名前はなんという! 魔法の使い手ならば知っているかもしれん!」


 掴みかからんばかりの勢いでユリが問う。


「使い手も使い手。ちょー有名」

「おお! それで、名は?!」

「おう、その名も」

「その名も?!」

「その名も――」


 アサギリはすっくと立ち上がると、左足を内側に曲げて浮かせ片足立ちになり、左手を腰に当て右手を高く掲げた。


「夢と希望の国からやってきた、愛と正義の使者! 魔法美少女マジカル・チョコ☆ミント!」

「……」

「知らない?」

「……知らん。一応聞くが、どこで見た」

「テレビだ。ちなみにこれはミントの決めポーズだ」

「そうか……二人、いるのか」

「そうだ、そしてチョコの決めポーズはこう、逆の手を腰に当てて、左手を顔の右側に――」

「やらんでいい。何だその、情報量が多い割に何もわからない名乗りは」

「魔法美少女マジカル・チョコ☆ミント!」

「二度もやらんでいい!」

「ドリーミング・ピュアハートフラーッシュ!」


 アサギリがひときわ高い声色を使って叫ぶ。


「……」

「魔法だ」

「そんな奥歯に粘りつくような甘ったるい響きの魔法は知らん。なんだ、菓子か」

「マジカル・チョコ☆ミントチップスとかあるぞ、カードが入ってるんだ」

「そうか」

「パンツもある。見るか」

「いらん! その児童向けアニメの情報はもういらんから座れ! ベルトを戻せ!」


 アサギリはおとなしくベルトを締め直して座った。

 冷たい夜の風が二人の間を吹き抜けていく。


「……チョコ☆ミントだ」

「黙れ、チョコミントはもういい。黙れ」

「チョコミントじゃない、チョコ☆ミント」

「なんだ、だからチョコミントと言っているだろう」

「ちがうって、チョコ『☆』ミントだって」

「……微妙に間があるのか」

「☆」

「……」

「☆」

「ええい! 顔芸をやめろ! くそ! なぜお前の口からは時間を無駄にするたぐいの情報しか出てこんのだ! 梱包材を潰してたほうがまだ有益だ!」

「プチプチ以下かよぅ」

「なにより忌々しいのは――!」


 ユリが手に持った小枝をアサギリに突き付ける。


「それでも、貴様のおかげで上手くいきそうだということだ!」


 ぽん、という柔らかい音とともに、蝋燭よりも微かな火が小枝の先端に(とも)った。











「大体、この世界にきてすぐ、私のように『流れ着いた』ものが居ないか確認したのだ……まったく、私は何を期待したんだ」


 ユリはほんの少し落胆した表情で頭を振ると、火の点る小枝を下ろす。だがアサギリは歓喜の声を上げてその腕を掴んだ。


「おお!! すっげー!! なにこれどうなってんの!? マジックみたい!」

「子供か貴様は」


 以前、小春も指の先に点した火を見て、こんな風に目を輝かせ喜んだことをユリは思い出した。


「今はこのとおり奇術と見分けの付かない程度だが、本来はもっと大規模かつ複雑な事象の再現も可能だ。私の故郷ではこんなこと、それこそ子供でも出来るぞ」

「すっげーまじかー! ビームは? ビームは出ないの?!」

「無茶を言うな」

「近日中に出せ! で? なんで急に使えるようになったんだ、魔法。なんか最初の質問すっ飛ばされてついていけねぇよ」


 アサギリが頭の上に疑問符を浮かべながら小首を傾げる。


「毎度おかしな方向に誘導するのは貴様だ。うむ、言ってしまえば、魔法とは”思いの力”だ」

「ふぁーんたじぃー」

「黙れ。正確にはわからんが”魔法を信じる”ことで魔力は生まれる。……そうだ」

「なんか矛盾してね? 卵と鶏どっちが先か、みたいな」

「座学も説明も苦手だ、私は学者ではないからな」

「実践派っぽいもんな。まぁいいや、続けろ」

「うむ。私はまずこの世界に魔法がないことを知った」

「ないのか?」

「正確には”魔法を扱う者が居ない”だな」

「そういうのわかるんだ」

「第六感のようなものだと思え、説明できん」

「都合のいいところだけマジカルだな、魔女っ子め」


 アサギリがひらひらと手を振って先を促す。


「私のいた世界では、妖精――こちらで言う人間だな、あるいは生物にかぎらずとも同程度の知能があるモノならば魔力を生み出すことができた。つまり、高度な思考と魔力は密接に関係していると思われる。ならばこの世界でもそれが可能なのではないかと、私は考えた」

「で、あったの?」

「無かったが有った」

「どっちだよ……」

「原因はわからんが、この世界には魔力をつなぎとめる力がないらしい、そのせいで生まれた魔力がすぐに散ってしまうようだ、霧のようにな。しかしそのおかげで微かにだが、人から発せられる魔力の残滓を感じることができた」

「めちゃくちゃ寒い日は水の中のほうが温かいみたいな?」

「……貴様の方が例えが上手いな」

「一応あるのか、はい! じゃあなんでアタシら魔法使えないの?」


 アサギリが挙手をして尋ねた。


「生まれても刹那で霧散してしまうのだ、有ると認識できない力を使おうとは思わんだろう。その代わりに機械文明がこれだけ発達しているのだから、当然といえば当然だが」

「消える前に使えないの? こう、どっかに貯めておいたり、集めたり」

「手段ならあるが、だがやはりこの世界の住人には無用の知識だろう」

「じゃぁ、集めて使えばいいのか。よし!」


 興奮気味のアサギリが中に向かって何やら念じはじめた。


「無理だな。羽が生えたところで、その扱い方を知らなければ飛べないのと同じだ」

「つまんねーな」

「腐るな。だいいち、自身の魔力のみでは弱すぎて出来ることが限られる」

「だめじゃん」

「そういうものだ。そこで重要なのが”魔力の指向性”だ」

「しこ……なに?」

「指向性。言ったとおり、魔力とは思いの力だ、善意悪意問わず他者を強く思い信じることで、その者に魔力を与えることができる。波長のちがう魔力は融和反応を起こし、小石を投げ入れた水面のように波打って膨れ上がる。自身の魔力を使い、その膨大な力を操る技術を魔法という」


 ユリは魔法の理論を一度に言い切った。

 アサギリが腕を組んで唸る。


「うーんと……使う魔力と操る魔力は別のほうが強力なのか?」

「そのとおりだ。理解が早いな」

「わかっても使えないからなぁ……じゃあさ、オメェがこっちに来て最初に使った”人を操る魔法”って簡単だったのか? 自分だけの魔力って弱いんだろ?」

「操ったのではなく記憶の挿入だ……それは先程話した集める技術だな、魔力を凝縮させると魔法結晶というものができる。消耗した魔力を外部から補うためなどに使う、云わば保険のようなものだが……言っておくが、それ自体も魔法だからこちらの人間には作り出せんぞ」


 アサギリはまた落胆して、手の中で何かをコネる仕草をやめた。


「一度使えば砕ける代物だ。こちらの人間は魔力に抵抗がなかったからな、大掛かりな魔法だったがそれでも間に合った」

「使い切りなのか。それで魔法が使えなくなったのか?」

「いや、指向性の魔力供給源が……たった一人、私を――魔法を心から信じるものが居た」


 アサギリがトンと手を打って納得する。


「ああ、妹――小春ちゃんか!」

「そうだ、たった一人から得られる魔力でも、効率的に使えば大規模魔法の維持は可能だ。そうだな、だいたい三日というところか」

「あ? じゃぁなんで解けたんだ? 三日は持つんだろ」

「ストレスやショックで一時的に魔力が不安定になることはある。私の場合、魔力を拡散させてしまうほど動揺したのだろう。情けない話だが、蓄積されたストレスが決壊した、というところだ」


 ユリは自嘲気味に「弱いな」といった。


「落ち込むなよ、片方は取り戻せる、そして――それは私のおかげ、ってところだな。へへっ」


 アサギリが胸を反らせて不敵に笑う。


「その通りだが威張るな。だいたい小春のように先入観のない子供ならまだしも、いや、貴様はたしかに底抜けの阿呆だが――この世界の常識を持った人間からでは、そう簡単に魔力を得られるとは思わなかった。初対面の人間をどうやったらここまで信用できるのだ貴様は。感心するぞ」

「けなすか褒めるかどっちかにしろよ……いっただろ、信じるって」


 アサギリが微笑むと。ユリは顔を隠すように俯いた。


「……感謝する」

「えー!? 声が小さくて聞こえなーい!」

「うるさい!」


 そういって後ろを向いたので、アサギリはやっぱりユリの表情が分からなかった。


「そんで、復活した魔女っ子は今から何をするんだ? ビームか?」

「出さん! 小春には小さな魔法結晶をもたせている、それを追う」


 ユリが手に持った小枝で地面を叩く、と彼女の足元から赤い光が炎のようにい立ち上った。


「おー! 魔法っぽい! ぽいっ!!」

「ぽい、ではなく魔法だ。私はこういった繊細な魔法がどうも苦手なのだ、性に合わん。だから地面に式を描いた」

「魔法陣か! イジケてほじくり回してるのかと思ってた」

「反論できんから余り情けなくなるようなことを言うな」


 赤い光は燃え上がるように輝きを増し、一際高く伸びる。

 やがて、目が開けられぬほど強く輝くと、突然消えた。


「おわっ!? びっくりしたぁ。どこに居るかわかったか?」

「いや、失敗した」

「ああ? しっかりしろよ」


 アサギリが呆れて叱咤するが、当のユリはしきりに首を傾げ唸っている。


「貴様から受け取った魔力の量が多すぎた……いや、濃い? なんだこれは」

「え、アタシのせい? なんもしてねぇぞ」

「わかっている、こんなことは私もはじめてだ」

「ムリ?」

「加減すれば問題ない。それにしても」


 ユリは目だけでアサギリをちらりと見た。


「魔力の質まで変わっているとは、お前もつくづくおかしな奴だな」

「オメェに言われたかねぇよ?」


 ユリは小さく鼻で笑ってから、再び小枝で地面の魔法陣を叩く。

 すると今度は、まるでオーロラのような青い光りが、静かに立ち(のぼ)った。

一応今までの展開で必要そうな分は説明したけど、このお話で魔法は他のヒーローが使うミラクルパワーとあんま変わんないので、これ以上広がんないと思う。ギミックとして使いたいけども。

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