ー幕6・城下町編ー
スズが抜け出した城にて
「ク、クロさん!!」
城の中の執事達がアタフタしていた。その中、ティーセットを運んでいたクロはなぜこんなに騒がしいのか大体予想はついていた。
「どうしたんですか、騒々しい。」
1人の若い、と言ってもクロより1・2歳くらい下の執事が慌ててクロを呼びとめ
クロは不機嫌極まりないというような顔でその執事に言うと
「ス、スズ様のお姿が城内のどこにも見当たらないのです…!!」
クロが予想していた通りの言葉が返ってきた。
「はぁー…。そうだろうとは思っていましたが…。仕方ありません。
あなた方は各自、自分の仕事へ戻って下さい。スズ様は私が探して来ます。」
その執事にビシッとそう言うと運んでいたティーセットを一旦スズの部屋へと運んだ後少しの間スズの部屋を見渡しある1つの窓からカーテンが外へ出ているのを見つけ、そこに行ってみると見事に綱の代わりになっていた。
(まったく、あいつは世話が焼ける。ここからだと、裏門から出たな。)
スズの部屋から出ると城の裏門へと走って行った。
その時にすれ違った2人組の兵士達が
「なぁ、さっき城出て行ったのって隣国の王子なんだろ?」
「そうみたいだな。金髪ってこの国ではめずらしいもんな。」
そのような会話をしているのが聞こえてきた。
(隣国の王子か…。確か朝会議があっていたはず…。
今の時間に帰るということは、王と一緒に昼食を食べたということか…。
ん?ちょっと待て…隣国の王子が自国へ帰るなら必ず城下町を通るはず…。
何か嫌な予感がするな…。急ぐか。)