ー幕5・城下町編ー
「あれ?1人いないよー?」
「あ、ほんとだぁー。そう言えば、さっきみかんが転がっていくのをコウが追いかけて行ってたよー。」
子供が少し騒ぎだしたのに気づいたスズは「どうした?」と声をかけると先程の9歳くらいの男の子が
「1人、女の子がいないんです…!!」
焦りの表情を浮かべてそう教えてくれた。
「なんだと!?どっちの方向に行ったか見てないのか!?」
「たぶん、姫様が来た方向だと思います…。」
(あっちは馬車が通る時があるし、人通りも多い…早くしないと危険だ…!!」
「いいか、お前達は大人しくここにいろ。分かったな?」
「は、はい!!」
そういうとスズは来た道を全力で走って戻った。
一時するとその子らしき姿が見えたのが、運悪く馬車が通ろうとしている所だった。
(まずい…。このままだとあの子が…!!)
一気に加速し、なんとか追いついたものの、女の子を庇って馬車の目の前に出てしまった。避けるにも無理だと思い、女の子をギュッと抱きしめ庇った衝撃に身構えた。
しかし、一向に衝撃がこないことを不思議に思い反射的にギュッと瞑っていた目を開け馬車の方を見てみる。
そこには、日の光に反射した落ち付いた金髪が風にサラサラと揺れ、青色の目を持った青年を思わせる整った顔立ちをした少年が、馬車から降りこちらをボーっと見ていた。
しばらくの間お互いにボーっとしていると、少年がハッと気がつき
「あ、あの…。」スズに声をかける。
すると、あまりの少年の美しさに見入っていたスズもその声でハッと気がつき
「あ…す、すみませんでした…!!」
そう言ってその場を去って行った。
スズが走り去りその場に取り残された少年は「さっきの子…」と1人呟いていた。