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五歳児、春「天川花乃、始めました」

 現世、開始しました。

 私は天川(あまがわ) 花乃(かの)。今年で五歳になる幼女だ。


 天川花乃、始めました。


 いや、別に今始めたわけではないんだけどね。すでに四年と数か月、天川花乃やってるから。

 ただ最近になって、天川花乃の人生始まってんだなと、実感したってだけでさ。


 実は私には前世の記憶があるらしい。赤ん坊の頃は全然記憶にないが、物心がついて脳が発達するのに合わせるように、前世の記憶が今の私にとけ込んできた。


 少し前に前世の記憶がうまく整理でき、天川花乃の人格が確立されたのだ。


 前世は前世。今は今。まったく別の人間だ。

 

 前世の人格を引き継いではいない。多少影響された所はあるが、前世の人格に飲み込まれないよう、しっかり線引きはした。


 前世には前世の愛してくれた家族がいて、私には私の家族がいる。私を産み、愛し、育ててくれている家族の為にも、私は私の人生を歩まなければならない。 


 前世の為に、天川花乃の人生を使うわけにはいかないのだ。


 もっとも、大学受験まで終えた知識は使わせてもらうけどね。良いとこ取りである。


 その所為か、少々子供らしくない子供になってしまったがね。





 今生の私は、どうやら少しいい家に生まれたらしい。お手伝いさんがいるような金持ちではないが、比較的、裕福な家のようだ。


 穏やかな性格で人の好い父に、優しく肝の据わった母、二歳下の可愛い弟の四人家族で、今生でも家族に恵まれた私は、人に恵まれる性質なのかも知れない。


 容姿は日本人らしく黒髪の黒目で、髪は伸ばしており左右対称に上の方で結んでいる。ツインテールというやつだ。子供らしい丸みのある頬っぺたの、可愛らしい女の子である。


 自分で可愛いとか思ってんのかよ。とか言われるかもしれないが、実際に可愛いんです。だって幼女だもの。


 五歳になる子供だよ。可愛いに決まってるじゃん。古今東西、例外なく子供と言う生き物は、可愛くできているのだ。よって、幼女のうちは自信を持って自分を可愛いと言えるのですよ。


 まぁ、同じ子供の中に混ざれば、埋もれる可愛さではあるけどね。これといった特徴のない、平均的可愛さの幼女です。


 可愛いと言えるのも、あと数年……。小学校上がったらアウトかも………。


 こうやって冷静に自分の可愛さ寿命を計算するくらいに、内面は可愛くない子供である。






 そんな可愛くない内面の子供らしくない私だが、先日度肝を抜かれる出来事があった。


 私は前世の知識のおかげか、しっかりした子供という評価をもらえている。そのおかげで割と自由行動を許されており、一人でよく近所を散策している。行動範囲と散策時間厳守で、防犯ブザーを常に手に持っているのが条件だ。ちなみにGPS付き携帯も装備している。


 先日、私はある場所を見つけ、自分がただの転生をしたのではないと知った。


 私がしたのは、異世界転生。それも前世でプレイした乙女ゲームの世界だったのだ。


 ここまで言えば、私が見つけた場所と言うのも見当がつくだろう。私が見つけたのは、その乙女ゲームの舞台となる学校である。その名も『王山(おうざん)学園』


 『学園恋愛日記~私の王子様~』という、学園もの乙女ゲームのヒロインが通う学校だ。攻略対象は学園内のイケメン共で、学園の王子様たちというわけだ。


 攻略対象たちと交流を重ね、好感度を上げ、信頼を得て、悩みを解決したりして愛を育むと言った、よくある乙女ゲームである。


 学園名が同じだけなんじゃないかとも思ったが、校舎の外観と制服も、ゲームの記憶と一致していた。それだけでは不安で、ネットで学園の公式HPも検索してみた。


 もう疑う余地もなく、私の知る王山学園だと確定した。



 

 異世界転生ってなんでやねん。とか、ゲームの世界ってどうなってんだ?とか、思ったりもしたが、深くは考えまい。完全に神の領域だ。


 前世で萌えたゲームで、私もそのゲームの記憶に萌えている。前世に影響された部分なのかもしれない。今生でも乙女ゲームに興味ありです。


 正直「ゲームの胸キュンイベントを生で見れる!」と、一瞬テンションが上がりかけたが、冷静に待ったをかけた。


 何故なら此処がゲームの世界だからと言って、私の人生がゲームシナリオとリンクしているとは限らないのだ。


 ゲームではヒロインの高校三年間を描いていたが、その三年間が西暦何年からの三年間なのかは、シナリオ中に出てこなかった。つまりゲームのイベントが起こるとしても、私が高校生になる前に終わってるかもしれないし、私が卒業した後に始まるかもしれない。

 

 ヒロインと同じ年頃に生まれているか分からない以上、期待するだけ損だ。


 少なくとも天川花乃という登場人物は、ゲーム中にいなかったのは確かである。ゲームシナリオとリンクしているかは、王山学園に入学するまで分からない。


 いや、メインキャラと会えたら入学前でも分かるか。…でも結局、偶然に頼るしかないわけだ。


 まぁ、期待はしないでおこう。うん。





 そんなこんなで私天川花乃は、この世界で生きていきます。


 

 

 

 主人公の説明です。攻略対象とはゆっくり出会っていきます。

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