8話:真事実
「お前は今日、助けるのを失敗した。第89章23条より、奥死路 俊の処分を決定したため、担当対神妖精の口を通じ報告する。第七神より、寿命操作の一部条件の引き下げが決定したことに担い、第四実体侵攻装甲、奥死路 俊は、残り一年になるまで残り寿命を伝えられず、奥死路 俊により助けられたものは、助けられた回数だけ寿命を一年づつ縮める。なお、これまで助けられたものはは全て今日未明に寿命を縮める。これにより、我々は寿命の完全支配を可能にする」
俊の目の前で、フェラリーが壊れたおもちゃのようにカチカチになって喋ったのは、俊が実の両親に会った二日後だった。俊が釈放された時、刑務所の出口の両側に並ぶ桜並木の陰から、二人の女子が現れた。右からは瑠璃菜、左からは虐待されてた女子が現れた。二人とも、肩に木で編まれたかごをもって、走ってきた。
「出所っていうの? まぁ、おめでとう。これ、クッキー焼いてきたの」
「助けてくれて、ありがとうございました。……私もクッキーを」
俊に挨拶した二人は初めて会ったらしく、何やら口喧嘩を始めた。
「あんた誰よッ!! てか、なんで私の真似してクッキー持ってくんのよッ!!」
「私は、成澤 茶梨。……俊に助けられたの。だから……、その感謝のしるしに……」
「私だって助けられたわよ」
茶梨は、なぜか俊の名前を知っていた。
「俺の名前、知ってたのか?」
「だって……」
茶梨は俊の胸元を指差した。そう、そこには囚人服ならではの名札がついていた。
「あぁ、なるほどね」
幸せが戻ってきたように見えたこの時、俊の少しの笑顔はリスのフェラリーが顔の前に急に浮いて現れたことで消え失せた。そう、この時に、三人は真事実を知った。自分達の寿命が短くなることや俊の能力の正体を。でも、瑠璃菜と茶梨は冷静を装った。そして次の日、俊たちは屋上で授業をサボった。サボったというよりは、鐘が聞こえなくて遅れたところを先生に見つかったという方が正しいかもしれない。俊の人生は他人に、いや、妖精に握られた。俊が生きるも死ぬも、そいつの手にかかっていた。