11話:双光線
路地を廻り、公園が道の奥に見える。
「これで、この街を見るのは最後になるかもしれない……」
俊は街の方を振り返り、自分とこの街との思い出を思い出した。自分の生まれた街、自分の捨てられた街、自分の……生まれ変われる街。両親はまだ刑務所に服役中。もちろん、出所したら会いに行くなんてバカな真似はしない。充実していたとはあまりにも言いがたい人生に、俊は一つだけ思い残すことがあった。中学のとき自分を人生の崖っぷちから救ってくれた少女。その子に、一度でいいから感謝しておきたかった。強いて言うなら、あの子にもう一度会いたかった。
「でもいいんだ。少しの思い残しくらい、我慢しなきゃ生きていけない」
俊は、自分に言い聞かせた。ちょうどそのとき、後ろから悲鳴が聞こえた。
「助けてぇーッ!!」
短い叫び声だったが、俊には誰の声かはっきりと分かった。
「瑠璃菜ッ!!」
公園まで走って、腰くらいの低い柵を飛び越え、俊は見てしまった。
「瑠璃菜……だよな……」
公園にいたのは、血にまみれた大きな剣を持つ一人の少年と、体が真っ二つに切り裂かれた一人の少女。そして、奥で木に身を隠しながら震えるもう一人の少女。その三人だった。血にまみれて顔もはっきり見えないその少女が誰だか、俊はすぐに分かった。
「時間くらい守れよ……」
「我は、貴様を殺すのが2時と、はっきり言ったはずだが?」
少年はクールにへんとうすr
「まだ別れの挨拶だって、してないだろ……」
「我の知ったことか」
俊にも我慢の限界が来た。一生で一番怒りに燃えた俊に、フェラリーは耳打ちした。
「あいつには生身では勝てない。私の能力を使っても勝てるか負けるかは分からないわ。なぜなら、俊はあいつより一世代先の能力を持っている。しかしあいつは、昨日アップデートしたばっかりや。よって、どっちにも相手に勝る強さがある」
「時間を止めれば勝てるかも……」
俊は左手の甲に星を書いた。
「必ず殺してやるッ!!」
その声と共に目の前が変わった。左上には残り時間が表示され、視界には十字の赤いマークが現れた。幸い、俊以外は全て動いていない。時間が止まったのだ。
「5年分の寿命を使い、私の持っている対神護身攻撃能力を全部解放したるわ。欲しい能力、使いたい能力を思い浮かべろ。この地球にある本に書かれているようなものはすべて揃ってるわ」
俊には考えられない世界が広がった。
「飛行、レーザーガン、剣、最高級を揃えろッ!!」
俊は宙に浮いた。左手にはレーザーガン、右手には長い剣を持っていた。
「これなら勝てるッ!!」
俊は敵に向かって飛び始めた。
「うそだろ……」
飛んですぐに、俊は止まってしまった。
「時間止まってるはずなのに……」
リリスの体の周りには、サファイア色の渦ができた。渦が濃くなって、中のリリスが見えなくなったとき、俊は息を飲んだ。
「まさか貴様に妖精が戻っていたとはね」
渦を弾けて出てきたのは、青いマントに身を包んだリリスの姿だった。
「この技術は、暗殺防止用に開発され、今回のアップデートで実用化したものだ。まさかこんな早くに使うことになるとは」
「殺してやるッ!!」
俊はレーザーガンを向けた。
「他人の人生、踏みにじってんじゃねぇーよッ!!」
青と赤のレーザーが、相対した。同時に発射されたレーザーは、真っ直ぐ突き進んでいく。




