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ココネのうた  作者: 筑波社
ある街で――
16/23

最高のパン 2

 自分が近づいただけでドールは気づき微笑む。

「今日も持ってきたぞ」

「わーい!」

 ドールが歓声を上げて両手を差し出す。ぽんとその上に、持ってきたパンを乗せた。

「それは両手で持ってがぶり、って食べるんだぞ」

 今日はハンバーガーというものだ。上下に柔らかいパンを置き、間にメインとなる具を挟んで食べるもので、巷で最近流行っているそうだ。

「いただきます!」

 手が塞がっているので頭を垂れていつもの挨拶。

 小さい口を目一杯に広げてドールはパンにかぶりついた。

 ドールでもひと口で全層を食べられるように計算して作ったが、おかげで口の中がパンで一杯になってしまったようだ。

 時間をかけて咀嚼し、喉に流したドールは両手を頬に当てる。

「おいしい! な、なにこれ?」

「そうか、おいしいか」

 喜ぶドールの顔を見ると自分まで嬉しくなってくる。

 パンに挟まれた具は魚をすり身にしてから調味し、衣をつけて揚げた特製のフライだった。

 猫は魚が好きだが、ドールももしかしてと思ってやってみたのだが、思っていた以上の成果を挙げてくれたようである。

 すでにドールは二口目に突入していたが、飲み込もうとしていつぞやのように顔色を悪くさせた。

 おいしくた食べてもらえるのはありがたいのだが、もう少し落ち着いて欲しいものだ。

 思いながら水の入った椀をドールに握らせた。

「あ、あいがほう」

 しゃべりづらそうにドールは礼を言い、勢いよく水をあおる。喉がごくりと鳴って、水と一緒に詰まったパンが流れていく。

「はぁ……」

 ドールは吐息を漏らして、しかし懲りずに三口目を口に含む。いや、反省はしているようで量はだいぶ少なくなっていた。

 そうしてドールはおいしそうにパンを平らげた。

「ごちそうさまでした」

 最後に残った水を飲み干し、ぽん、と手を合わせて言った。

「お粗末様」

 それに答える。

「じゃあ――がんばれ」

 

 元気にしたい誰かのために。

 その歌に込められた想いが、聞く者の心に元気とやる気を植えつける。

 お互いできることを――やるべきことを。


 ドールに背を向ける。早くも声が、歌が聞こえる。


 ~~~


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