最高のパン 2
自分が近づいただけでドールは気づき微笑む。
「今日も持ってきたぞ」
「わーい!」
ドールが歓声を上げて両手を差し出す。ぽんとその上に、持ってきたパンを乗せた。
「それは両手で持ってがぶり、って食べるんだぞ」
今日はハンバーガーというものだ。上下に柔らかいパンを置き、間にメインとなる具を挟んで食べるもので、巷で最近流行っているそうだ。
「いただきます!」
手が塞がっているので頭を垂れていつもの挨拶。
小さい口を目一杯に広げてドールはパンにかぶりついた。
ドールでもひと口で全層を食べられるように計算して作ったが、おかげで口の中がパンで一杯になってしまったようだ。
時間をかけて咀嚼し、喉に流したドールは両手を頬に当てる。
「おいしい! な、なにこれ?」
「そうか、おいしいか」
喜ぶドールの顔を見ると自分まで嬉しくなってくる。
パンに挟まれた具は魚をすり身にしてから調味し、衣をつけて揚げた特製のフライだった。
猫は魚が好きだが、ドールももしかしてと思ってやってみたのだが、思っていた以上の成果を挙げてくれたようである。
すでにドールは二口目に突入していたが、飲み込もうとしていつぞやのように顔色を悪くさせた。
おいしくた食べてもらえるのはありがたいのだが、もう少し落ち着いて欲しいものだ。
思いながら水の入った椀をドールに握らせた。
「あ、あいがほう」
しゃべりづらそうにドールは礼を言い、勢いよく水をあおる。喉がごくりと鳴って、水と一緒に詰まったパンが流れていく。
「はぁ……」
ドールは吐息を漏らして、しかし懲りずに三口目を口に含む。いや、反省はしているようで量はだいぶ少なくなっていた。
そうしてドールはおいしそうにパンを平らげた。
「ごちそうさまでした」
最後に残った水を飲み干し、ぽん、と手を合わせて言った。
「お粗末様」
それに答える。
「じゃあ――がんばれ」
元気にしたい誰かのために。
その歌に込められた想いが、聞く者の心に元気とやる気を植えつける。
お互いできることを――やるべきことを。
ドールに背を向ける。早くも声が、歌が聞こえる。
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