表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ココネのうた  作者: 筑波社
ある街で――
11/23

コネコが選ぶただ一つのパン 3

「少し真面目に考えてみろ。それでお前なりに答えを出せ。それまで、俺は推薦状は出さん」

 最後通達。マイスターの推薦状のない者は、コンクールに出場することすら適わない。

 父を糾弾するはずが、思わぬ方向に話は転がってしまった。その勢いに気圧され、それ以上の言葉が出てくることはなかった。

 居間を出て自分の部屋に戻る。ベッドに座り両手を突いた。

 愛って何だ。パンへの愛情は強く持っている。それに関しては自信があった。それは父も承知の上だろう。

 ならば足りないものはなんだ。

 いや――思い出す。叫んで、パンをぶちまけて、そのまま逃げるように去っていったのは、どこの誰だったか。

 窓に近寄り広場を確認する。

「あ……」

 散らばったパンをドールが、膝をついて手探りでトレイの上に集めていた。細かく切り分けたので数がある。だがそのほとんどがトレイの上だった。あれからずっとああしていたのが目に浮かぶ。

 それを遠巻きに見ていた男性が駆け寄って、残りのパンを集めた。ドールに一声かけて、離れていく。

 ドールはトレイの元に戻って持ち上げ、縁に帰った。

 土に汚れてしまったパンをどうするのかと思ったが、なんとそれをぽんぽんと軽く土を払うと、躊躇なく食べはじめた。みるみるうちにパンは減っていき、そうかからないうちに、食べきってしまった。

 見るに耐えかえて、目を背けて、自分がした行いを後悔する。

 ベッドに倒れた。

 いろいろわからなくなってしまった。パンに対する愛も、父の求める愛も。父のパンを思い出す、プロとしての行い。

 歌が聞こえる。お腹が満ちたせいか、この時間にしては、元気のこもった歌声だった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ