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サンタくんと一緒!  作者: 梅津 咲火
ホワイトデーもサンタくんと一緒!
8/16

そのさん!   「サンタくんなんて大っっっっ嫌い!!」

 これでホワイトデー編は終了。

 次の、1年後の二人の話で本編最後となります。



「で、だ。迷って決まらなかった俺は、結局チビに決めさせることにした」

「チビって言わないで! ……って、え?」


 それって、あたしがリクエストしてもいいってこと?

 なんだぁ、ビクビクしちゃった。そっか、あたしが決めていいんだ。


 うーん。だったら、駅前のケーキ屋さんのシュークリームがいいかも。モーモー印の牛乳をいっぱい使ってる濃厚なカスタードクリームが、ぎっしり詰まってて、すっごくおいしんだよね!


「じゃあ、シュークリ――」

「しかしだ。突然言われても困るだろうと思った俺は、候補を絞ってきた」


 今遮ったよね!? あたし、ほとんど言ってたよ!

 文句を言いたいけど、サンタくんの目には有無を言わさない感じがしてる。


 も、もしかして、ちょっと魔王モードのスイッチ入ってるの?


「どうだ、優しいだろ? さすが俺だな」


 全然、ちっとも優しくないよ! 少なくとも、優しい人はこんなことしないからねっ!?

 あたしが目で抗議しても、サンタくんは楽しそうに笑うだけ。さっきから笑ってるけど、なにがそんなにおかしいの!?


 うう、逃げちゃダメかな?

 一体、なにを言うつもりなの? さっきから、あたしの頭の中で警報がなってるんだけど。


「一つ。俺をもらう。二つ、伊月が俺のものになる。三つ、恋人という名誉をもらう。さぁ選べ」

「ホワイトデーなのに、あたしがサンタくんにあげるの!? そもそもあたしはものじゃないもん!」


 そんなの、選択肢って言わないよ! というか、どういうことなの?

 全部、なんか変だったような気がするよ?


 ???


 首を傾げても、わかんない。あ、あたしがバカだからじゃないよ!


「わからないか? 俺と付き合え、そう言ってるんだ」

「え、えええええぇぇえええええっっっ?」


 もしかして、まさか、だけど、ええ?

 これって、告白!?



 問題、『誰が、誰に?』。

 答え、『サンタくんが、あたしに』。



 って、ええええええええ?

 もう、何がどうなってこうなったの!?


 さっきまで、ホワイトデーのお返しの話だったよね?

 サンタくんはマイペースに腕組んで堂々としてる。なんでそう、いつも通りなの!?


「で、どうなんだ?」

「え……ええええ!? ど、どうなんだって、言われても……」


 そういうこと、よくわかんないよ。

 付き合うって、どういうこと?

 そもそも、あたしと、会ってまだ3ヶ月しか経ってないんだよ?


「……まだ、考えられないよ」


 あたしは困っちゃって、俯いて地面をじっと見る。

 サンタくんの目からだけでも、今は逃げたくて。


 あいまいなこと言ってるって、自覚はあった。だけど、それ以外、なんて言ったらいいの?


 わかんない。恋愛初心者でそういうこと、今まで全然関係なかったんだもん。


 でも、サンタくんの雰囲気が、あたしの言葉を聞いて緩んだ。

 ……え?


 パッといつの間にかあたしは顔を上げてた。

 な、なんで、笑ってるの?


 自然と視界に入ったサンタくんのほっぺは上がってた。

 今のあたしの返事って、サンタくんにとっていいものじゃなかったと思うのに。


「なるほど、友達からならいい、と」

「な!? そういうことじゃないもん!」

「ならどういうことなんだ? 伊月は、『まだ考えられない』って言った。『まだ』なら、これからはあるってことだろ?」

「え、ええええええっ!?」


 そうとっちゃうのっ? た、確かにあたし、そう言ったけど!


「……そうなれば話は早い」

「ま、待って。えっと、な、なにがなんだか、あたし、よくわかって――」

「待たない。いいか、俺の貴重でありがたい話をよく聞け」


 こ、こんなときでも、自画自賛!? サンタくんらしいけど!


「伊月。いいから俺のものになれ。いくら考えても、お前のことだ。結局、いつまで経っても先延ばしするだけだろ」

「それは……」

「ない、なんて言い切れるか? どうなんだ?」

「う……」


 ズズイと身を乗り出してこないでよ。焦っちゃうのに。

 いや、むしろ、今もしかして急かされてる?


「保留は?」

「却下だ」

「だよねー……」


 即答だったね、サンタくん。でも、らしいかも。待つなんて、サンタくんの柄じゃないか。

 それなら、あたしが言えることはこれしかない。


 視線を上げて、サンタくんと合わせた。こういうことって、ちゃんと目を見なきゃいけないことだよね。


「なるべく、ゆっくり……ね?」


 サンタくんが聞く耳を持たないことを、あたしはよく知ってる。

 それに、サンタくんは口がうまいから、これ以上あたしが何か言っても、それを全部やり込めちゃうはず。


 だったら、せめて流されずに答えたかった。だって、プライドの高いサンタくんが、こんなこと冗談でも言わないことくらいわかってるから。


 でも、すぐには彼の気持ちに答えられない。だから、あたしの気持ちが育つのを、待っててほしかった。



 誰より、サンタくんと一緒にいるときが、いっちばんドキドキするのは嘘じゃない。



「……伊月、やっぱりわざとだろ」

「え、えええ? だから、いつも思うけど、サンタくんのわざとってなに?」


 すっごいしかめっ面、さっきまでしてなかったよね。なんで?


「ったく。そう言われれば、俺だって我慢するしかないだろ……」

「???」


 なんか、ブツブツ言ってる。やっぱり不満なのかな?


 あたしにばっかり都合いいもんね。サンタくんは意見が通らないと気がすまないタイプだから、結構譲ったのにさらに言われてムカムカしてるのかも。


 ま、魔王モードはヤダよぅ。


 ビクビクしながらサンタくんの顔を、ソローっと覗き込もうとした。けど、その直前に顔を急に上げた。

 ビ、ビックリした。サンタくんの頭にぶつかるかと思ったよ!


「……わかった。待ってる」

「なっ!」


 わ、笑った。ううん、いつもニヤニヤって感じで笑ってるけど! そうじゃなくって!

 なんか、今のはふわっとしてて、キラキラしてた。そんな爽やかなの、変態眼鏡サンタのサンタくんには似合ってな……くはないけど!


 心臓に悪いよ! 一瞬呼吸止まったかと思ったもん!


 口をパクパクするけど、何も出てこない。こんなとき、なに言えばいいのかな?

 だけど、サンタくんはほんの少しだけ浮かべた笑顔を、見慣れたニヤニヤしてるものにした。


「そのかわりに、来年のバレンタインは予告通りに、お前のコレ、もらうからな」

「え、ええええ!?」


 コレって、ま、まさか!?


 サンタくんの指でも指されてるけど、ええっ?

 彼の指の先にあるあたしの唇を、手でかばった。


 やっぱり、サンタくんはサンタくんだ! 彼が何の見返りもなしに、妥協なんてするはずないのに!

 忘れてたあたしのバカァ!


 で、でも、今更無理なんて言えそうにないよ。むしろ言った瞬間にサンタくんのことだから、『恋人ならキスするのは当たり前だよな?』とかなんか言って、すぐされかねない。


 も、もしかして、もしかしなくても、八方塞がり?


 あたしが困ってる様子見て楽しそうに笑ってるなんて、サンタくんの意地悪!

 でも、このまま何も言わないのも収まらなくて、あたしはサンタくんを睨んだ。


 うう、もうほとんど、半泣きだよ!


「や、やっやややっぱり、サンタくんなんて大っっっっ嫌い!!」



 ついに伊月、陥落です。サンタくんのゴリ押しでした。お返しは自分って、それ、なんてエロゲーですか?

 けれど、「お友達から」という生殺しに。サンタくんに「プギャーm9」してやりましょう。


 次の「サンタくんとこれから」で、このサンタくんシリーズ本編は一応完結となります。

 もしよろしければ、最後まで二人の物語にお付き合いしてください!


 読んでくださって、ありがとうございました。

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