そのさん! 『……カツアゲ?』
短めです。次回は、倍くらいの長さになります。
次の日。14日の放課後。
図書室になかなか来ないサンタくんを探して、あたしは校舎内を歩き回ってた。
それにしても、めずらしい。サンタくんって、絶対あたしよりさきにいるのに。
体調が悪くて休んでるのかと思ったら、保健室にはいなかった。
まさか、休みってことはないよね。チョコ持ってこいってあんなに脅して……じゃなくて、要求してきたんだから。それだけはない、はず。
うーん……どこにいるのかな?
キョロキョロと周りを見て、サンタくんを探す。
サンタくんのクラスはもう行ったし、他の行きそうな場所は回った。だからあと残ってるのは、空き教室になってる3年のクラスぐらいなんだけど。でも、こんなところにいるかな?
だけど、他はここくらいしかないよね。すれ違いになった可能性もあるから、一度見てから、図書室に戻ろっと。
……っと。あ、いたいた!
「サン……っ!」
声をかけようとしたけど、教室にサンタくん以外にもう一人いたことに気づいて、やめた。
な、なんか、物々しいというか、緊迫感が……。
なんとなく姿を見せにくくて、あたしは扉の影に隠れた。顔を出しすぎないようにしなきゃ。
サンタくんと女の子が、二人っきりで向かい合ってた。ここからは横顔しか見えないけど、サンタくんは眉間にしわを寄せてる。……もしかして、機嫌悪い?
うーん……どうしよ。もう放課後だから、今渡せないと困っちゃう。明日渡すのも、サンタくんに文句言われそう。
しょうがない。ちょっとここで待ってみようかな?
「で、用はなんだ?」
「う、うん……あ、あのね」
強ばった表情で女の子は、後ろ手で持ってた包みを、サンタくんの前に出した。
「こ、これ! 受け取ってもらえる……かな?」
……カツアゲ?
ま、まさかね! ……ごめん、サンタくん。一瞬、ちょっと本気で疑っちゃった。
そういえば、バレンタインだった! じゃああれは……チョコ?
あのラッピングだから、中身は多分手作り、かな?
「そ、それとね。三田君、あの……わ、私、三田君が、好きです。だから、その……付き合って、くれませんか」
……えっ!?
こ、これって、告白?
女の子は、緊張してる様子で、サンタくんをじっと見てる。
「悪いけど、俺は――」
これ以上はあたしが聞いちゃいけない。
だから、固まってた足を動かして、あたしは慌ててその場から離れた。
***