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こばなし!   「な、なにをするつもりなの!?」 (新年記念)

 どうも、ごきげんよう。梅津です!

 皆さま、新年あけましておめでとうございます!


 新年記念に、久々にあのお二人を書かせていただきました。

 時系列的には、『おしまい! 「やっぱり、サンタくんなんて――」』の後です。

 糖分多めでお送りします。


 ではでは、どうぞ!

 1月2日の、サンタくんと初夢を配り終わった後。

 せっかくだからそのまま、初詣に行こうってことになった。


 ……あ、もちろん服は、一度あたしの家に帰ったからサンタコスから私服に着替えたよ!

 サンタくんは最初からそのつもりだったみたいで、私服を持ってきてたのにはビックリしたけど。

 きっとあたしをなんだかんで連れ出して、行くつもりだったのかも。


 仕事は終わったから、トナカイは帰っちゃっていない。でも、まだトナカイが残ってたとしても、目立つから乗っては行かないけど。


 テクテクと並んでサンタくんと歩いて、神社に向かう。

 冬だから午前6時くらいでも、外は暗いまま。一日じゃないから、夜中に歩いている人だっていない。


 あたしの鼻に、チョンッて軽くなにかが触れた。

 ? 冷たい?


 あ!


「ねぇ、サンタくん! 見て見て!」

「ああ、見てる」


 あたしは指を空へと向けた。そこにはひらひらと落ちる白いかけら。そっと手を伸ばすと、手のひらに冷たい感覚があった。


「だってほら、雪だよ! 雪!」

「そうだな」


 次から次に、雪が曇った空から落ちてくる。

 初夢を配ってた真夜中には降ってたけど、一度止んじゃったの。それなのに、また降ってくるなんて嬉しい!


 冬は好き。おいしいものもたくさん食べられるし、学校のお休みだって多い。大掃除は、片付けが苦手だから嫌いだけど。


 振り向くと、サンタくんはコートにマフラーをした厳重体制の恰好で、首をすくめてた。付き合い始めてわかったんだけど、彼は意外と寒がり。真冬の深夜にサンタクロースのお仕事をしてるのに。

 むぅ、反応が薄い。たしかに、サンタくんにとっては寒いって証拠だから嫌なのかもしれないかも。


「なんだ、わかってるじゃないか」

「ええ!? 口に出しちゃってた!? あたし?」

「っは、チビの考えることは全部顔に出てる」

「ぇえ!?」


 思わず顔を両手でサンタくんから隠す。どうかな、これでバレたりしない?


「……おい。一応、何してんだって聞くべきか?」

「え、ええ!? あたしに聞かれても、わかんないよ」

「……そうだな。何してるんだ、バカ」

「バカ!? バカじゃないもん!」


 自然と悪口を会話に混ぜないでよ! 失礼極まりないよ、サンタくん! 片手を握り、サンタくんに軽くパンチをしようとした。

 えいっ! くらえ、伊月パンチ!


「なにやってんだ?」

「~~う~~~っ!!」


 か、片手で、片手で抑え込まれた! い、いいもん! 今度は、もう片方の手でパンチするだけだから!

 えいっ!


「だから、なにがしたいんだ? チビ」

「っ! ううう~~~っ!!」


 また! またつかまった! もう両手がサンタくんにつかまってるから、攻撃の手段がないよ!

 うう~~っ! 悔しい!

 何とかこの不満をサンタくんに伝えたいのに!


 とりあえず、睨んじゃおう。ツーンだ、サンタくんのバーカバーカ! 変態眼鏡サンタ! いじわる! それからえーっとえーっと、ドエス!


 ジッと黙って睨んでいると、サンタくんが目を細めた。


「なんか言いたそうだな、チビ」

「……知らない!」

「そうか。……ちなみに、伊月」


 あたしの名前を呼んで、サンタくんは口の端を上げた。

 ……「ニヤッ」って。「ニヤッ」ってした!


 あ、あれ? なんだか、嫌な予感がするかも。


 思わずビクッと肩を揺らしちゃったけど、仕方ないよね?


「これで俺がなにをしても、伊月には対抗する手段がないわけだ」

「!?」


 なにをしてもって、え、ええ!?


「な、なにをするつもりなの!?」

「さぁ、なにをしてやろうか?」


 ニ、ニヤニヤ笑わないでぇえええ! すっごく怖いよ、サンタくん!


「さっきから伊月は俺の陰口を散々脳内で叩いていたわけだ。そこから考えるが、遠慮はいらないんだろ?」

「なんでわかるの!? あと遠慮はほしいよ!」

「やっぱり叩いていたのか」

「あ」


 あ、あたしのバカァアアアアアアア!! いっつもいっつも、これがサンタくんのやり方だって、わかってるのにぃ! なんで、引っかかっちゃうの!?


 あわわわっ! サンタくんがわっるい顔してる! 笑顔が黒いよ!

 え、笑顔でごまかせないかな?


「え、えへ?」


 笑ってみせると、サンタくんはニッコリと綺麗な笑みを返してくれた。

 ……えーっと、もしかして許してくれたり?


「覚悟はいいか?」


 や、やっぱりダメ!? うう、サンタくんのケチ!

 な、なにされちゃうの、あたし!?


 怖くって逃げ腰なのは、しょうがないよね!?


 ビクビクしていると、急に手を引かれた。


「わわっ!? っわぷ!?」


 体が前に傾いて、サンタくんの体にぶつかっちゃった。ちょっとだけ顔が痛い。

 でも、身体に触れている部分からサンタくんの体温が伝わってきて、あったかい。


 な、なに? なにがしたいの?

 混乱しているうちに、肩と腰の後ろになにかが回ってきた。


「え? え?」


 いつの間にか手は解放されてるなんて。どういうこと?


 ?? もしかして。この後ろに回っているのって、サンタくんの腕?

 距離がどんどん縮まって。サンタくんのコートに視界がふさがれちゃう。


 え、ええ!? あの、その。サンタくん、近っ近くないかな!?

 それと、あたし今……まさか抱きしめられて、るの?


「え? ええ!? サ、サンタくん!? な、なにしてるの?」

「抱きしめてられてることもわからないのか、伊月」

「え、う、うん。それはわかるよ、わかるんだけど」


 あたしが聞きたいのはそうじゃなくって。なんでしてるのってことだよ? わかってるよね、サンタくんだって。


 戸惑ってるあたしなんて知らんぷりで、サンタくんは小さく笑った。

 うう、その状態で笑わないでよ。息が耳にかかっちゃうんだよ? くすぐったいんだから。


「お仕置きだ。おとなしく、人間カイロにでもなってろ」

「え、ええ……?」


 た、たしかにあったかいかもだけど。外でやるにはちょっと恥ずかしいよ。

 サンタくんが寒がりにしたって、こんなことしなくたっていいのに。


「あ、あのねサンタくん。恥ずかしいよ」

「当たり前だろ、お仕置きなんだから」

「うう、そうなんだけど……」


 でもでも、恥ずかしいものは恥ずかしいんだもん。

 誰かに見られちゃったらなんて、考えるだけでも恥ずかしい。


 あたしの肩にあごをのせて、サンタくんはハァッと息を吐き出した。

 だ、だからそこで息を出さないでほしいの。それに、そこで落ち着かないでよ。

 あたしは全然、落ち着かないんだから。今だって、心臓がバクバクしちゃってるんだからね?


「サ、サンタくん、このままじゃ初詣行けないよ?」

「うるさい。寒いんだ。しばらく暖をとらせろ」

「え、ええ~……」


 本音が出てるよ、サンタくん。お仕置きとかじゃなくって、ただ単に寒いだけなんだよね?


「しばらくって、いつまでなの?」

「さぁ」


 うう、適当に返された! サンタくん寒すぎて対応もおざなりになってない?

 早く放してくれないかなぁ。このままずっとは、どうしていいのかわかんなくって困っちゃうのに。


「べつにいいだろ。伊月もあったかいんだから」

「それは、そうなんだけど」


 でも、どっちかっていうとね、熱いの。このままだと、寒さとは違う理由で顔が赤くなっちゃうよ。


「それとも。こうされ続けてると、困る訳でもあるのか?」


 ほんのちょっとだけ体を放して、サンタくんが顔をのぞき込んできた。

 だ、だからっ! 距離が近いの、サンタくん! 目線どうしたらいいのか困っちゃうのに!


 うう、正面からサンタくんの顔が見れない。でも、サンタくんからはなんだかすっごく見られてる!

 コッソリ横目で彼の顔を見て見ると、また楽しそうに笑ってた。


 いっつもそうなんだから! あたしばっかりサンタくんにドキドキされっぱなしなんだもん!

 サンタくんはそのくせ、余裕なんだもんね! ずるいよ!

 

 いいもん、もう知ってるから。ここで黙ってるほうが、からかわれるってこと!


 理解はしてるけど、言っちゃうとなんだか負けを認めちゃうみたいで悔しい。だから、ほっぺを思わずふくらましちゃう。


「ドキドキしすぎて、疲れちゃうんだもん」

「……」


 落ち着かないから、ちょっとだけでいいから離れてほしいだけなのに。

 それに、こんな近くにいたら、さっきみたいにサンタくんが言う、あたしの『顔に書いてあること』だって読まれちゃう。



 ――あたしばっかり動揺しちゃってるのが、すぐにバレちゃうから。そんなの悔しいもん。



 もっともっと、ドキドキすることされちゃったらどうしようなんて、不安にもなるんだからね?


「……」

「…………」

「…………?」

「………………」

「? サンタくん?」


 どうして、黙ったままなの?


 気になって、思わずサンタくんの顔を正面から見上げようとした。だけど、その前にサンタくんに強く肩を引き寄せられた。


「っぷ! サ、サンタくん!? あの、ちょっと、え? え?」


 さっきより、ギュッとされてる? なにかしゃべろうとしても、サンタくんのコートでモフモフしたくぐもった声にしかならないよ?


 どういうことなの?


 少しだけ首を傾げてると、その先にサンタくんの顔が下りてきた。

 あたしの横顔とサンタくんの頭が、コツンと軽くぶつかる。

 ほっぺが、サンタくんの髪の毛でくすぐったい。


「……まいった」

「? サンタくん?」

「本当に、ワザととしか思えない。これでにぶいとか、反則だろコイツ」

「??」


 またワザとって言ってる? そんなこと言われたってあたし、よくわかんないのに。


「それで、あの。いつ放してくれるの?」

「ずっとだ」

「え、ええ!?」


 ずっと!? ずっとってなに!? このままなの!?

 そんなの、あたしの心臓が持たないよ。


 困ったあたしの抗議の声に、サンタくんは『フンッ』て鼻を鳴らした。


あおった伊月が悪い」

「え、ええ!? あたしが悪いの!?」

「そうだ。おとなしくしてろ」

「え、あ、うう……」


 ここで文句なんて言っても、サンタくんのことだから無視なんだよね。サンタくんってこうって決めたら、絶対に変えないんだもん。

 うう~っ! この俺様サンタ!


 『なんで?』なんて聞いても絶対に答えてなんかくれないし。もう、ちっともサンタくんがわかんないよ。


 新年が明けたって、サンタくんってば変わらない。


 『ずっと』なんて言ったって、そのうちにサンタくん初詣に行く気になるよね?

 それがいつまでなのかな?


 できれば、顔が真っ赤になっちゃう前に放してくれるといいな。


 このままの体勢に諦めはついたけど、納得はしてなくって。あたしはつい、文句をつぶやいた。


「サンタくんの、バカ」


 その言葉に、サンタくんはフッと笑った気配がした。


「……うるさい。それは伊月もだ」


 そんなサンタくんの返しが、あたしの耳に優しく届いた。



 ニヨニヨしていただけたでしょうか?


 今年もよろしくお願いします。

 それでは、皆さまにとって今年一年が昨年より、良い一年でありますように。


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