1周年記念こばなし! 「……嘘つき!」
どうも、梅津です!
梅津の『小説家になろう』での活動1周年である今日は、サンタくんシリーズ1周年記念でもあります!
と、いうわけで小話を急遽 up します。
活動報告では「したいな~」なんて臭わせていましたが、なんとか間に合いました。
ではでは、どうぞ!
「えっと……あの~サンタくん」
「なんだ、伊月」
なんだじゃないよ! 言いたいことなんて、わかってるくせに!
振り向きながら睨みつけても、サンタくんはニヤッと嬉しそうに笑い返した。
むぅうううううっ!!
「……嘘つき!」
「嘘なんてついてないだろ」
じゃあ! なんで、どうして!
「ホラー映画だったよ!?」
「バカが、サスペンスだ。あれは」
「内臓グシャア、頭ポーンだったのに!?」
「よくあるぞ。例えば――」
「べつに聞いてないもん! 言わないで!」
あたしが本気で嫌がるのがわかって、サンタくんは語るのを中断してくれた。だけど、どうして嬉しそうにしてるの!?
うう、なんとなく理由なんてわかっちゃうけど。サンタくんのエス! 鬼! 悪魔!
「なんだ? 伊月」
「うっううん、なんでもない!」
うう、笑顔で圧力をかけてこないでよ! 魔王バージョンのサンタくんって苦手なんだから。
「う~……」
休日の今日は、サンタくんと一緒に映画館に来てた。サンタくんのオススメの映画があるっていうから、楽しみにして。……なのに!
「ひどいよ! サンタくんのバカ!」
休みの日にまで意地悪しなくてもいいのに!
文句を言えば言うほど喜んじゃうってわかってるけど、でもどうしても言っちゃうよ!
そのぐらい、怖かったんだもん。今だって、手が震えてるし指先まで冷えちゃってるよ。
サンタくんがおごってくれるなんて、何事かと思ったのに。こんな落とし穴があるなんて!
払ってもらってるから、文句を言うのは失礼だって思うけど。でも、こんなことをされたら誰だって怒るよ!
「せっかく……」
「なんだ?」
「……なんでもないもん」
せっかく、サンタくんから誘ってもらったのに。素直に楽しめなかったなんて。
そんなの、ヤだよ。
我慢したいのに、頬がふくらんじゃう。
こんなことをしたら、ますます子供っぽく見えちゃうのに。
せめて顔を見せづらくさせたくて、首を動かして顔を横に向けた。
「頬袋をふくらますな。冬籠りでもするつもりか?」
「……しないもん。サンタくんのバーカ」
ふーんだ。つーんだ。
サンタくんのバーカバーカ。
前にサンタくんと出かけた時は、あたしにデートだって言い聞かせるみたいなこと、たくさんしたくせに。アーンだって、手つなぎだってしたくせに。
こんなの、デートじゃないもん。
あたしだけ素直に楽しみにして、ウキウキしちゃって。なんだか、すっごく損した気分。
サンタくんは、そうじゃなかったの?
「……ハァ」
頭上から落ちてきたため息に、とっさに肩を揺らしちゃう。
……呆れられちゃった?
「……悪かった。やりすぎた」
「え……?」
サンタくんが謝った?
ビックリして、背けてた顔をサンタくんのほうに向けちゃう。
サンタくんは普段の偉そうな態度じゃなくて、苦い表情だった。
めずらしいかも。サンタくんがあたしに謝るなんて。
思わず口をポカンと開けて、サンタくんを見つめた。
「ほら」
「へ?」
サンタくんに手を出された。
なに? この手?
よくわかんないけど、あたしの手をのせればいいの?
『お手』みたいに手をのせると、すかさずサンタくんがあたしの手をつかんだ。
わわっ!? ちょっと、いきなりどうしたの!?
「……行くぞ」
「え? え?」
サンタくんが急に歩き始めたから、引きずられちゃうよ。
慌ててついてくようにしたけど、ちょっと待って。
「ね、ねぇ! サンタくん、行くってどこなの?」
「DVDレンタル屋」
「え、ええ!?」
脈絡がまったくわかんないよ!
どうして突然?
前を歩くサンタくんに聞くと、ブスッとした口調で返された。
「伊月の好きな映画を教えろ。仕方ないから、俺が趣味を合わせてやる」
「!」
偉そうなセリフ。俺様な言い方なのに、内容は真逆で。
「いいの?」
「そのかわり、観賞する場所は伊月の家だけどな」
「え、ええええ!?」
顔だけ一瞬こっちに向けて、笑った。
うう、サンタくんの意地悪!
……でも、あたしのためなんだよね。
それって、すごく嬉しい。
――でも。でもね。
「……うん、わかった」
「……は?」
サンタくんの目が丸くなった。もしかして、あたしがすぐに頷くなんて思わなかったのかな。また、からかうつもりだったのかも。
それでも、意見を変えるつもりなんてないもん。
「そのかわりにね、サンタくんの好きな映画も見たいの。……できれば、あたしでも見れるのがいいんだけど」
「ダメかな?」ってサンタくんに聞くと、渋い表情になった。
……? どうしたの?
「伊月、ワザとか? 俺の理性を試してるのか?」
「? そのワザとっていつも言ってるけど、よくわかんないよ。あと理性って?」
「室内で生殺しか……自分で自分の首を絞めているのか、俺」
「??」
小声で何言ってるの? よく聞こえないよ?
ため息だって吐いちゃうし。
いつの間にかサンタくんの歩く速度がゆっくりになったから、彼の横に移動する。
隣から見上げて、サンタくんの顔を眺める。眉間にしわ、寄ってるよ?
「……覚えてろ、伊月。後でまとめてツケを請求してやる」
「え、えええっ!?」
ツケ!? ツケって何!? あたし、サンタくんから何も借りてないよ!?
慌てるあたしを見て、サンタくんはちょっと満足したみたいで鼻で笑った。
もう! 何なの一体!? わけわかんないよ!
納得できなくって、ムゥと口をとがらせちゃう。すると、サンタくんがすぐになだめるように、つないだ手のひらに軽く力を込めた。
そんな少しのことで、嬉しくなる。なんだか、サンタくんのいいように振りまわされてるみたいで、少し悔しい。
いつかあたしのほうが、サンタくんを振りまわしてみせるんだから!
***
――ねぇ、サンタくん。
あたしね、意地悪だけど優しいサンタくんのことを、もっともっと知りたいの。
だから教えてね。
「だから、どうしてあたしがそこに座んなきゃいけないの!?」
「いいだろべつに。特等席だ。光栄に思え」
「膝の上でなんて、落ち着けるはずないもん!」
うううう……でも、知るのはゆっくりでもいいかも!
こんなのばっかりなんて、心臓が壊れちゃうよ!
12月1日は『映画の日』です。
それにちなんだ内容でした。
読んでくださり、ありがとうございました。