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こばなし!   「とりっく おあ とりーと!」

 ハッピーハロウィン!

 と、いうわけで、番外編です!


 伊月ちゃんとサンタくんのハロウィンは、いかほどに?


 あ、宣伝ですが、『気まぐれなヒマワリ』にもハロウィン番外編 up していますので、そちらもよろしければどうぞ!

 カボチャがおいしくなって、もみじが赤くなる時期。

 そんな時期に、お菓子がもらえてさらにイタズラまでできちゃう、夢の一日がある。


 待ちに待ったその日の今日、あたしは声高に魔法の呪文を言っちゃう!

 きっと無礼講なはずだもん!


 廊下で待ちせて、ターゲットのサンタくんを捕まえた。


「サンタくん、とりっく おあ とりーと!」

「……ハッ」

「……うぅ、無言で鼻で笑わないでよぅ」


 ちょっとテンションあげちゃったかなって思うけど、でもその反応は傷ついちゃうよ。


「出会いがしらになんだ、チビ」

「チビじゃないもん!」


 久々にチビ呼びしちゃうほど、カンにさわったの!?


「だって、ハロウィンだよね? だからほら、とりっく おあ とりーと!」

「……まぁいい。頭に花咲かせたようなセリフについては流してやっても構わない」

「ちょっと! ひどいよサンタくん!」

「けどな。……なんだ、その格好」

「無視!?」


 うう、自己チューサンタめ……。今日もドエスっぷりは絶好調すぎるよ。


 格好って……この服装のこと?

 あたしが着ているのは、胸元に白のレースがいつけられた黒のワンピース。アクセントの黒のリボンがかわいいなって思う。

 あとは頭に黒のとんがり帽子。おさえてないとずれ落ちちゃうくらい大きなサイズ。


 魔女っぽくて、今日にピッタリじゃないかな? 


「なにかおかしい?」

「……いや、変じゃないのが変だ」

「??」


 なにが言いたいのかな?

 先生にも、頭をなでられただけで特にはおとがめなしだったよ?


「ちなみに、誰にされたんだ? 伊月から着たわけじゃないだろ」

「? よくわかったね? そーだよ、なんか、キレイなお姉さん達にプレゼントもらったの。せっかくだから、着ないともったいないかなって」

「……」


 たまにお菓子をくれる先輩達がくれたんだよね。服なんて高そうだからいいのかなっておもったんだけど、なんだかんだで押し切られちゃって……。


 サキちゃんにも奈々ちゃんにも結美ちゃんにも、「いいね」って言われたよ?

 なのになんで、サンタくんはすっごく渋い顔してるの?


「いや?」

「……っ! チッ!」

「舌打ち!?」


 どうして!? 首傾げただけだよ!?

 なにが気にくわないの?


「……ワザとだろ、本当に」

「……いつもいつも思うんだけど、その『ワザと』ってなに?」

「それを伊月が知っていれば、俺は苦労してない」

「??」


 だから、それを教えてくれればいいのに。でもいっつも、「すぐに伝われば楽だけどな……」ってにごすんだよね、サンタくん。


 深ーいため息を吐きだしたサンタくんは、あたしに顔を向けた。


「……まぁいい。それで?」

「? それでって?」

「なにをしに来たんだ?、伊月は」

「なにをしにって……」


 え、ええ? なにって、そんなの……。


「と、とりっく おあ とりーと?」


 お菓子をもらいに来ただけ、なんだけど。


 だけど、サンタくんはあたしの返事に目を細めた。

 うっ! その表情って! 嫌な予感がするよぅ!


 絶対、ぜぇ~ったい! ロクでもないこと考えてるときのサンタくんの顔だ!


「へぇ、そうか。伊月は菓子をもらうためだけで、俺に会いに来たんだな?」

「……う、うん……?」


 え、どうして怒ってるの? 

 サンタくんと同じクラスだからクラスで待ってても良かったけど、すぐにこの服見せたかったんだもん。ちょうどいいから、お菓子をお願いしただけなのに。


 サンタくんの威圧におされて思わずうなずいちゃったけど、それでますます怖い気配が強くなっちゃった。

 うう、魔王サンタ降臨しちゃってる!?


「……なるほど、わかった」

「な、なにが……?」


 言葉が震えちゃった。

 だって、サンタくんの声が淡々としてるんだもん!

 冬にはまだ早いよ!


「望み通り、菓子をくれてやる」

「……え?」


 お菓子? くれるの?

 ポカンとしちゃってサンタくんを見てたら、彼はポケットを探ってなにかを取りだした。


 棒付きキャンディーだ! 一口大の大きさのアメ玉がついてるだけなんだけど、おいしいんだよね!

 とくにあたしは、モーモーミルク味が好き! 濃厚で、でもでもしつこくなくって、もう何本でも食べれちゃう!


 って、それ、そのモーモーミルク味だ!

 いいなぁ、ほしい!


 ジッと見てたら、サンタくんがべリベリと包装紙をはがし始めた。白いビー玉みたいなアメが、すぐに出てくる。


 あたしが目で追ってるのを視線で確認した後、サンタくんはニヤッと笑った。


「あーー!!」


 食べた! 食べちゃった!

 あたしだって欲しいのに!


「うるさい、伊月」

「ううううぅぅぅ……だってぇ」


 口に物を含んだ状態でサンタくんがあたしを注意した。

 たしかにサンタくんのアメだったけど! でも、でも目の前で食べることないと思う!


 涙目でにらんじゃったあたしは、悪くないもん!

 大体、「菓子をくれてやる」って言ったくせに!


「うううぅぅぅ……嘘つき。サンタくんの嘘つき!」

「失礼だろ、このチビ」

「チビじゃないもん!」


 噛みつくみたいに文句を言っても、サンタくんは嬉しそうに笑ってるなんて。


「うう~……お菓子ぃ」

「……ふぅん。欲しいか?」

「くれるの!?」


 もう一つあるのかな!?


 期待してサンタくんを見上げると、口になにか入った。


「っんむ!?」

「ほら、やる」


 一気に口の中に甘ーい味が広がって。でも口の水分が全部持って行かれちゃうくらい、しつこい味じゃなくって。

 うん、これってモーモーミルク味だ!


 う~ん、やっぱりおいしい!

 嬉しくって、ほっぺをおさえちゃうよ。


 意地悪してても結局お菓子くれるんだから、サンタくんって優しいよね。

 笑顔でお礼を言おうとして、サンタくんの顔を見た。


 ……あれ?


「ね、サンタくん? サンタくんの食べてたアメは?」

「それ」


 サンタくんの指がさした先。それは私の口で。


 サンタくんが食べてたのは同じモーモーミルク味で、あたしが食べてるのも、同じモーモーミルク味で……。


 !? ま、まさか、だよね!?


 サンタくんは良い笑顔で、あたしに告げてきた。


「どうだ? 俺がなめてたアメは?」

「な……!?」 


 顔が一気に熱くなった。


 なんで!? どうしてこんな、恥ずかしいことしちゃうの!?

 だって、これって!


「間接キス、だな」

「~~~~バカァ!!」


 得意げに言わないでよぅ! ううう、あり得ないよ!

 サンタくんに羞恥心しゅうちしんはないの!?


 本当は今すぐ食べるのをやめちゃえばいいんだけど、捨てるなんてできないよ。もったいないもん!


 でもでも、食べ続けるのも恥ずかしい!

 一体どうすればいいの?


 うめいて考えてると、サンタくんがポツリと呟いた。


「そういえば、まだ言ってなかったな?」

「な、なにが?」


 気恥ずかしくって震えながらサンタくんを見た。

 うん、すっごく笑顔だね! でもどうしてかな、あたしはすっごく悪い予感しかしない!

 背筋がゾクゾクするよ!


「今日はハロウィンなんだろ?」

「……」


 この先の展開が読めても、逃げ出すことができない。だって、サンタくんの目が、『逃がさない』って無言で伝えてる。


「伊月、Trick or Treat?」


 サンタくんはそう、魔法の呪文を甘くささやいてきた。

 口の中のアメだまをさし出したのか、それともイタズラをされちゃったのかは、ご想像にお任せします(笑)。

 ではでは、また。

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