こばなし! 「眼鏡とって!」
伊月ちゃんとサンタくんの短い小話です。
時系列ではバレンタイン後くらいとなります。
ある日のこと。あたしはサンタくんにお願いをしてた。
「ねぇねぇサンタくん! 眼鏡とって!」
「あ? なんだ、突然。拾い食いはするなと言っただろ?」
「ち、違うもん! そんなことしてない! ただとってみたらどんな感じなのか、気になっただけだよ!」
安定の失礼さだよ、サンタくん!
プリプリ怒りながら否定すると、サンタくんは一先ずって様子で頷いた。だからっ! なんでまだ疑ってる目してるの!?
「……ま、いいが」
そう言うと、サンタくんは片手を眼鏡のフレームにかけた。
眼鏡をかけてる人って、外すと印象が変わるって聞いたんだよね。サンタくんの場合、どうなるのかな?
サンタくんの顔から銀縁がなくなるなんて、なんか違和感あるかも。なんて、って……え……。
「……」
「どうだ?」
「……」
「? おい、なにアホ全開で口開けてんだ」
「ッハ! ア、アホでもチビでもないもん!」
いけないいけない、ぼうっとしちゃった。
「……? ああ、なるほど。伊月、俺に見とれてたな?」
「っ!? そ、そそそそんなことないよ!?」
「そうか、まあそれなら仕方ない。存分に鑑賞しろ」
「なに言ってるの!?」
ううう! 本当は見とれてたけど! だけどなんか認めたくない!
もともと美形なサンタくんが眼鏡とっても、イケメンの種類が変わるだけだったよ!
むしろ別人みたいで、余計ドキドキしたなんて言ったら、絶対ますますからかわれちゃう!
サンタくんはニヤニヤ笑ってるし! このままじゃ、すぐバレちゃういそう。
あ、そうだ!
「め、眼鏡借りるね!」
「あ、おい! 俺のは度数が強くて、伊月には――」
サンタくんの静止を振り切って眼鏡をかけてみると、視界がグラグラ揺れた。水の中にいるみたい。
う……酔っちゃいそう。気持ち悪いかも。
「ううー」
「バカか。人の話は聞け」
「だって、気になったんだもん」
サンタくんには普段、どんな風に見えるのかなって。
「いっつも、こんなのかけてるの?」
すっごく目が痛い。涙が出てきて、瞬きを何度もしちゃう。
サンタくんを見上げてみると、やっぱりその顔が歪んでる。こんなに近いのに、不思議。
……? あれ? サンタくんの顔、なんか赤くなってる?
「……伊月、わざとか?」
「え? なにが?」
「……はぁ。厄介だな」
「???」
変なサンタくん。
『上目遣い、涙目、瞬き多し、困り顔、かつ自分の眼鏡かけてる』でクラクラのサンタくんでした。