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なんちゃって三国志(旧)  作者: 北神悠
1章 伝説の始まり
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第八話 彼女が噂の槍使い

「おいお前たち、そこで止まれ」


 俺たちは、連合軍の北部方面の本陣の入口で、衛兵に止められた


「あたしはりゅうび、義勇兵としてあたしたちを今回の戦に参加させて欲しい」


 りゅうびがいつもみたく、ない胸を反らせて衛兵たちに言い放つ

 衛兵たちはそんなりゅうびを見て一度顔を合わせ、大笑いした


 衛兵のその態度に、りゅうびは一発で怒りに火が付いたが、俺が必死に体を張って止める


 りゅうびには悪いが、仕方がない

 俺も立場が逆で、ここの衛兵をしていたら同じような行動に出たと思う


 なんせ、見た目は小学生みたいな少女が、軍に志願してきているのだ

 まず、耳を疑い、その後、微笑ましくて笑ってしまうだろう


 怒り狂うりゅうびを必死に落ち着かせ、俺は馬車の後ろにくくりつけていた鶏巾族の幹部つくねを、衛兵の前に転がす

 この三日間、ほとんど食事を与えなかったせいで、だいぶやつれて、肉団子ではなくつくね串位ににはランクアップしている


「この男は、鶏巾族の幹部をやってる奴だ、俺らが捕らえた。これでもまだ俺らをままごと遊びだというのか」


 俺の言葉に衛兵たちは、顔を見合わせ、ちょっと待っていてくれといい、一人が奥の方へ走っていった


 その後、そこそこ偉そうな男が出てきて、つくねのことを確認し、最初は驚いていたが、確かに本物だと太鼓判を押してくれた

 そのまま俺たちは義勇兵として迎え入れられ、陣地の中に案内された



「おお、もしかして、お前、りゅうびか? 」


 突然俺たちは横から声をかけた


 そこには30代そこそこの整った顔立ちをした男が立っていた


 その男を見て、りゅうびが目を丸くする


「もしかして、こうそんさんか」


「そうだそうだ、覚えてくれていたか」


「もちろんだ、すいきょう塾ではよく助けてもらったからな」


「しっかし、りゅうびがなんでここにいるんだ? 」


「あたしは義勇軍として、ここに参加したんだ」


 いつものように、偉そうに胸を反らす


「相変わらずだね、僕も今回当主として5000人の兵士を率いて参戦しているんだ」


「5000人」


 あまりの数字に、俺はついつい声に出してしまった


 それ気づいたのかこうそんさんが、こちらを見る


「君は? 」


「えっと……」


「こいつはあたしの軍師で、こーめーだ。こないだはこいつの策で、鶏巾族の幹部を生け捕りにしたんだぞ」


 俺が言いよどんでると、りゅうびがフォローしてくれた


「へぇ、それはすごいね」


「そ、そんな、白馬公と名高いこうそんさん様に褒めていただくなんて」


「ん、僕のことを知ってるんだ」


「なんだこーめー、こうそんさんのことを知っていたのか? 」


 しまった、現代の知識を利用してしまった

 この世界は、俺の知る三国志と微妙に違うから不用意な発言は避けていたのに


「えーと、ほら、こうそんさん様は有名だから」


 俺は必死にごまかした


「なんだ、そうか、君はわかってるね。後で僕の自慢の愛馬を見せてやろう、ふふふ」


 かなり必死の言い訳だったが、何とかなったようである

 と、ふいにりゅうびが小声で耳打ちしてきた


「こーめー、こうそんさんはナルシストなのだ」


 ああ、なるほど

 だから、有名って言われて舞い上がっていたのか


 そんなことを考えていると、目の前にりゅうびより少し身長の高い黒髪の女の子が急に現れ、じっと見つめてきた


「私はあなたみたいな人を駒としか考えていない、軍師という人間が大っきらいです」


 そう言うと彼女は、自分の身長よりはるかに大きい槍を引きずりながら、スタスタと歩いて行ってしまった


 突然のできごとに、俺は声を失った


「こーめー、あの少女に何をしたんだ?」


 りゅうびがジト目で睨んでくる


「いや、俺は別に。というか、あの娘とは俺初対面だぞ」


「あはは、ごめんよこーめーくん。彼女はなぜだか軍師が嫌いらしいんだ。悪い娘ではなしし、槍の腕はピカイチでね。たまたま、僕が彼女に雨宿りできる場所と、食事をあたえたら、その恩だといって護衛をしてくれているんだ」


「そうなんですか」


 ん、そこで俺は何か引っかかるようなものを感じた

 こうそんさんの下で働く槍使い?

 どっかで聞いたような


「ほう、おまえが褒めるほどの腕前なのか? 」


「ああ、彼女の槍捌きは芸術だね。僕は彼女より優れた槍使いにあったことはない」


「名前は何と言うんだ」


「ああ、そういえば言っていなかったね。彼女はちょううんと言う」


 なっ!

 そうか、そうだった、趙雲ちょううんは始め公孫賛こうそんさんの下で働いていたんだ

 そして、後に公孫賛を見限りりゅうびにつく

 劉備軍きっての槍使い趙雲があんな女の子なのか


 しかし、あの態度だと本当に仲間になるのか

 というか、俺のせいで仲間にならないんじゃないか


 そもそも、考えてみれば三国志の諸葛亮孔明が劉備の仲間になるのはもっと後だ

 確か、三顧の礼さんこのれいで劉備軍に迎え入れられるんだったな


 これってやばいんじゃないのか


 そう心の中でつぶやき、俺は頭を抱えるのであった

公孫賛の賛は本当は別の字です

ないので当て字にしました


こーめーの時折見せる、我々が知る三国志知識は基本的に漢字を当てます

間違えていたらごめんなさい

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