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なんちゃって三国志(旧)  作者: 北神悠
4章 時代の幕開け
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第七十四話 本命の一手

 連合軍前軍第二陣が汜水関の城壁の上に登りきろうとしている頃それは起こった


 ギィィィィ、と重厚な音を立てて、ついに難攻不落とされた汜水関が開門した


 門が開いた瞬間、連合軍からは割れんばかりの歓声が響いた



 同じ頃、汜水関の内部では城門のことなど気にする余裕もないほど激しい一騎打ちが繰り広げられていた


 間合いの長い槍を持つかゆうがそんけんから距離をとり、高速の突きを連続で打ち込むと


 そんけんは、剣の柄に近い部分でそれを弾き、勢いに乗ってかゆうの懐深くまで潜り込む


 しかし、かゆうが柄を短く持って槍を振り抜いてきたため、そんけんは接近を諦めて防御をする


 先程から互いに一進一退の攻防が続いていた



 そんけん軍の兵もとうたく軍の兵も、この激しい一騎打ちをただ見守ることしかできなかった

 この時代、将同士の一騎打ちは神聖なものであったし、達人どうしの戦いに下手に素人が混じろうものなら、逆に迷惑をかけてしまうからである


 

 二人の実力はほぼ互角と言って良いものだった


 いつまも続くかと思われた戦いは、城門がかんとうにより開けられたことによる歓声によって崩されてしまった


 本来で長所である戦場を把握するという将としての才覚が、この時ばかりはかゆうの足を引っ張った


 城門が突破されてしまったという致命的な状況に、かゆうの意識の底、無意識レベルの思考のブレ


 凡人ならばともかく、一流の武人同士の戦いにおいて本の一瞬でも気をそらすことは命取りである


 わずかに精彩を欠いたかゆうの突きを、そんけんの剣が弾く


 かゆうもとっさに槍を引き戻すが、大きく軌道が逸れた槍を守りに戻す時間を与えてくれる相手ではなかった


 そんけんの二擊目は正確にかゆうの胸を突いた


「ぐっ……」


 かゆうの口からドロリと血が溢れる


 一瞬の停止の後そんけんは、深々と刺さった剣を体の回転による反動で引き抜き、一気に距離を取る


 剣を引き抜かれたかゆうは、そのまま人形のように崩れ落ちた


 そんけんは、その様子を横目で見つつ、剣についた血を振り払うと、高らかに天空に剣を振り上げる


 その瞬間、そんけん陣営からはどっと歓声が湧き、とうたく軍の兵士は剣を取り落とすもの、膝を着くもの、顔を伏せるもの様々いたが、一様に戦う気を失った


 そして、城門からなだれ込む連合軍前軍の歓声が大きく響いた



「どうやら、終わったみたいだな」


 汜水関の左側の山の中腹に作った仮設舞台の上でりゅうびは、制圧されていく汜水関を眺めていた


「ちょうひ、かこうえんは引き続き未だに抵抗してそうなところに攻撃を続けておけ」


「りょーかい」

「はい」



「これで、汜水関は終わったな」


 かこうとんが馬の上で大きく伸びをする


 そうそう達は、既に汜水関の門の入口付近に到達しており、連合軍中軍も僅かな功績を求めて流れ込んでいた


 未だに各所で小さいていこうがあるものの、門が破られ、大将であるかゆうが打ち取られたためもはや連合軍の勝利は確定していた


「なぁ、そうそう、勝ったのになんでそんな難しい顔をしてるんだ」


「いや、オレの思いすごしなんだろうが、どうも腑に落ちなくてなぁ」


「?」


「いや、気にしなくていい、それよりかこうとんは騎兵を連れて汜水関の先の斥候をしてきてくれ」


「ええぇ! さっき戦いが終わったばかりなのに、まったくそうそうは人使いが荒いなぁ」


 そうぶつぶつ言いながらも、かこうとんは部下に指示を出し、斥候の準備をする


「かんうも頼んだ」


「ああ、わかった」



 かんうとかこうとんが斥候に出て、汜水関の制圧が大まかに終わったときそれは起こった


「敵襲!!!!」


 突然の声に連合軍は一気に浮き足立った


 山の上から、突然鳴り響く馬蹄音


「くそっ、ここの敵兵は捨て駒だったわけか。全員動けるものは陣形を組んで、左右から来る敵に備えろ!」


 咄嗟に、そうそうが叫ぶも、山を下ってくる敵の方がそれよりも早かった


 制圧作業をしていた、山際の兵士はなすすべもなく蹴散らされ、一気に汜水関に敵が流れ込んできた


 連合軍前軍は戦闘後ということもあり、陣形はバラバラで、けが人も多く、中軍は手柄を得るために陣もなにも関係なく乱入してきたため、おおよそ15万もの兵がいるにもかかわらず、全く対抗できなかった


 そんな、連合軍が大混乱に陥る中、そうそうは一つの疑問を覚えた


「? なんで、左側は敵が出てこないんだ」


 当初、馬蹄は両方から聞こえたはずである

 しかし、右側からは敵が出てくるも、左側は未だに敵の姿がない


 だが、そんなそうそうの疑問は、次の瞬間一気に思考の底に追い込まれてしまうのであった


「りょ、りょふだぁ!!」


 その声に、右側に視線を移してみると、人柱が上がっていた

 連合軍も、ただ黙ってやられるわけでなくいくらか犠牲を出しつつも、ある程度陣形を組み始めていた


 しかし、りょふはそれをあざ笑うように、連合軍の中を切り開いていた


 そして、りょふの凶刃はこの戦いの貢献者である、満身創痍のそんけん軍に及んだ


 そんけんは、彼我の戦力差を鑑み、直ちに撤退命令を出す

 しかし、全員がそれに間に合うはずもなく

 りょふは、一際目立つそんけん軍の大将そんけんに向けてほこを振りかぶる


「そんけん様ぁ!」


 それに対して、そぼうが横からりょふに斬りかかる

 そぼうの渾身の一撃は、りょふに弾かれ、そぼうは吹き飛ばされる


 弾いた返し手で、りょふの鉾は無情にも完全に無防備なそぼうに振り下ろされる


 ていふとかんとうはそんけんを守るために、そんけんのすぐ側に寄っており

 こうがいは反対側で、兵を指揮していたため、誰もそぼうを援護できる状況になかった


「そぼうっ!」


 そんけんが咆哮の様にそぼうの名を叫ぶも、受身を撮り損ねた彼に対応できるだけの余力はなかった  

山の左右がわかりづらいと思ったので、近日中に修正いれます

一応、汜水関側の視点で左右を書いています

なので、左側(北側)りゅうび軍がいる方

右側(南側)そんけん軍がいる方

左翼とか右翼も自軍か敵軍かで変わってくるので、なんとかしないといけませんね

いよいよ、汜水関編も大詰めとなってきました

次回更新は明日の夜を予定しています

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