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なんちゃって三国志(旧)  作者: 北神悠
4章 時代の幕開け
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第六十九話 かゆうの選択

「ちっ、やつらしぶといな」


 なかなか数の減らない連合軍前軍の第一陣に対して汜水関側の将兵はいらだちを見せていた


「かゆう様、ここは予備隊も投入して一気に攻めてはどうでしょうか?」


「いや、それでは相手の思う壺だ、確実に相手を削っていけばいい」


「はぁ、しかし」


「矢の予備は十分にある、それに城壁前にいる守備隊は我らの精鋭だこれが抜かれることはない」


「はっ、わかりました」





「予備兵は投入してこないか、じゅんいくどう思う?」


「そうだねぇ……やっぱり第一陣が適度に粘ってるのが原因かな」


「お前もそう思うか」


「うん、第一陣の働きは本当に素晴らしいよ、そこそこちゃんとした装備と進軍の遅さのおかげで、じわじわとプレッシャーはかけながらも、下の守備隊の射程まではなかなか踏み込んでないからね、敵も相当焦れてるはずだけど、そこは流石の名将かゆうだね」


「猪武者という噂もあるようだがな」


「そういう気質は持ってるかもしれないけど、ここまでこれだけ綿密な計画が練れるとうたく軍がただの突撃馬鹿に兵5万もつけて重要な場所を守らせたりしないよ」


「なるほど、偽報というわけか」


「ある程度はね、でも先陣やってるくらいだから、相当な戦馬鹿だと思うけど」


「なぁ、そうそう~」


「お前はもう少し我慢してろかこうとん」


「むぅ」


「ははは、こっちにも戦馬鹿がいたね」


「じゅんいく、あたしを馬鹿って言ったな」


 かこうとんが、ギロリとじゅんいくを睨む


「お~、怖い怖い、たすけてそうそう君」


 じゅんいくがそうそうの影に隠れるように逃げ込む


「貴様、主を盾にするとは武人の風上にも置けん男だな」


「別に僕は武官じゃないし」


「っ! まてっ! ふふふ、どうやら動いたみたいだな」


「じゃあ、僕は後ろに下がってるね」


「そうそう、どういうことだ」


「城壁の上をよく見てみろ」


「……数が減ってる?」




 二十分前


「周囲の哨戒している兵は?」


「既に位置はだいたい把握していたので、全て排除しました」


「よし、それじゃあこっちも始めるか。太鼓始め」


 ダンっ、ダンっ、ダンっ


 汜水関の後方に地を鳴らすような太鼓の音が響き渡る


 この音にわずか配備された汜水関後方の守備兵が飛び上がり、慌てて上官の方へ走り出した


 太鼓の音に呼応して森の中から様々な軍の旗が上がり、「うおぉぉぉぉ!!!」という叫び声まで聞こえてきた

 

 汜水関の後方守備の責任者はこの光景を見て、慌てて司令官であるかゆうの下まで駆けていった



「かゆう将軍、緊急事態です!」


「何事だ、騒々しい!」


「そ、それが、後方から敵の増援が現れました」


「なんだとっ! 数は?」


「旗と、声から推測しますに5000はいるものかと思われます」


「5000……そんな兵力いつの間に、くっ、後方には2000か、やむおえん前面の弓兵を3000後ろに回せ、それでなんとか凌ぐんだ」


「はっ」


「かゆう様、予備兵力を投入しては」


「それでは、本軍が前進した時に対応できなくなる」


 この時、かゆうは迷っていた

 現在の汜水関の配置状況は、城壁の前に精鋭5000、城壁の上に3万、後方に2000、予備兵力1万3000だった

 予備兵力といっても、もちろん本陣に詰めている守備兵や伝令兵、昨夜巡回していた兵もいるため実際に戦力となり得るのはそのうち1万といったところであった


 かゆうとしては、予備兵一万を部下の進言通り投入するわけにはいかなかった

 出兵前の会議で軍師より、常に奇襲に備えよときつく釘を刺されているからであり、かゆう自身も敵が奇襲をしてくるだろうと考え、対応できるようにしていたからである


 汜水関の側面は一見無防備であるようにも思えるが、しっかりと奇襲対策がされており、堀や柵などで容易に突破できないようになっている

 しかも、敵は後ろから奇襲をしてきた

 数は5000

 挟撃を狙っているのは間違いない

 

 守備戦において、挟撃はあまりいいものではない

 少ない兵力を分散させないといけないうえ、連携もとりにくく、兵士の疲労もたまりやすい

 特に今回は、6倍の兵力差がある為、少しの油断が命取りにつながるのであった


「よし、予備兵力のうち5000を前に投入する。一気に敵の先方を蹴散らし改めて後ろの対策をする」


「了解しました」



「そうそう、敵の数が減ったと思ったら、今度はさっきより増えてきてない?」


「ああ、よし、ここまではうまくいってるみたいだな」


「どういうこと?」


「敵は予備兵力を投入してきたって事だ、気に聡いやつならこの機会を逃さないだろう。かこうとん、オレ達も前に出るぞ」


「何、ついに出番か」


「ああ。第二陣、第三陣前進!」


「「「おうっ!!!」」」



「かゆう様!」


「ああ、やはり挟撃狙いか、しかし、その程度の計略では汜水関は落ないぞ」


「守備兵を動かしますか?」


「その必要はない、まだ弓だけで耐える。連戦しているものは後列と入れ替え、少し休憩を入れさせておけ、穴は予備兵を入れて対応しろ」


「はっ!」



「くそっ、密集するな、狙われるぞ! 姿勢は低く顔は絶対出すな!」


 連合軍第一陣はおよそ一時間ほども汜水関からの矢にさらされるも、7割以上の兵士が耐えていた

 その要因は、今回のために用意された木製の盾と、他の軍から回してもらった重装の鎧、そして汜水関の方も今後の戦闘を考慮して全力で矢を撃ってないことと、こーめーの後方からの奇襲など多くの要素が重なった結果とも言えるが、それにしても異常なほどの生存率であった


 そうそうは、この時点で損耗率を6割ほどと計算していたことからも、彼らがどれだけ奮闘したかが伺える

 さらに、折れかけてきていた兵士たちの心にさらに火を灯す出来事が起きた

 最初に気づいたのは誰かわからないが、その情報が伝わるのは一瞬だった


「援軍が来たぞ!」


「「「うぉぉぉぉぉぉおおおお!!!」」」


 突然の第一陣の奮起に、かゆうは予備兵力の残りの5000の投入と、休ませていた弓兵の復帰を余儀なくされた



「……敵が動いた」 

夜にもう一回アップします

誤字脱字あったらすみません

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