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なんちゃって三国志(旧)  作者: 北神悠
4章 時代の幕開け
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第六十四話 覇王そうそうとの夜

 連合軍本隊から別れた日の夜、俺たちは目標到達地点である山の中にいた

 この場所には数日前にさらに大回りで出しておいたりゅうび軍の補給別働隊が、補給物資を準備してあった

 奇襲戦における大事なことは、まずは敵に察知されないこと、そして迅速な移動である

 その為、奇襲を行う実行部隊の荷物を減らすために、500程別に部隊を先行させたのである

 おかげで、一夜にして汜水関の側面に回り込むことができた


「しかしこーめー殿、敵も奇襲には警戒していると思うのですが」


 横にいたかこうえんがそんな疑問を口にした

 まぁ、最もな疑問である


「普通ならそうだが、ここなら問題ない」


「そうなんですか?」


「実際は、そうじゃないかと予想してるだけだけど、この場所は汜水関からもだいぶ離れてるし、ここを俺たちが通るとは思わないだろうからね」


「思わない場所?」


「明日になれば、わかるよ」


 かこうえんは、まだ納得がいかなそうな顔をしていたが、俺がりゅうびに呼ばれた為、仕方なくではあるが引き下がってくれた


 にしても、さすがそうそうの腹心だな

 なかなかいい洞察をしてやがる

 まぁ、それだけの器量なんだから、そうそうがああ言ったのも頷ける


 

 俺は三日ほど前、ついつい言葉端に呟いてしまった言葉をそうそうに聞かれた時のことを思い出していた


 

 声をかけられた瞬間、俺は驚きを隠せなかった

 よりによって一番聞かれてはまずい相手に聞かれてしまった


「ほう、随分動揺してるみたいだな。まぁいい、お前もその若さでそれだけの力を発揮してるんだ、人には言えない事情の一つや二つあるだろうさ」


「聞かないのか?」


「なんだ聞いて欲しかったのか?」


「……」


「ふんっ、まあいい。それよりもこーめー、無駄死には許さんからな」


 くっ

 重い、心臓を体の中をどろりと舐め回されるような、強烈なプレッシャーがそうそうから湧き出る

 これが、覇王そうそうの本来の迫力なのか

 しかし、気圧されるわけにはいかない

 俺にだって守るべきものはある


「いままで、誰ひとりとして無駄死にさせたつもりはない。俺はこれからもそうでありたいと思っている」


 と、息が詰まりそうな空気の中、俺はそうそうに気丈に言い返す


「そうか、それならいい。かこうえんを任せたぞ」


「ええ。しかし、こちらも言いたいことは同じです」


「ふんっ、このオレを誰だと思ってるんだ。そうそうの名にかけて悪いようにはしないさ」


 そう言い、そうそうは身を翻して元来た道を帰っていった

 


 結局、なんでそうそうが突然後ろから現れたかは分からずじまいだったが、きっと部下のことが心配だったんだろ

 偉そうなことを言いながら、部下を心配するあたりはどっかのツインテール少女とそっくりだった

 そう思うと無意識に口元が緩んでしまう

 いかんいかん、相手は後の覇王だぞ

 情が湧いたりして、寝首を掻かれたりしたら目も当てられない



 簡単な宿営の準備が終わると、りゅうび軍の幹部たちは中央に集まった

 敵軍の目もあるため、火が使えないので月と星の薄暗い明かりの中、作戦会議が開かれた


 会議の前に


「私も会議に参加していいんですか?」


 とかこうえんが遠慮がちに質問してきた


「ああ問題ない、りゅうびにも確認とったし、君は客将扱い、兵は付けてないけど将なんだから、作戦会議に参加する資格は十分にあるし、もちろん質問や意見があれば是非言って欲しい」


 わかりました、とかこうえんは頷いた

 しかし、相変わらず美人ではあるが表情が硬いな

 まぁ、慣れない場所だからな

 ちょううんも最初の頃は大変だったしな



「それでは、作戦の説明を始めたいと思います」


 俺は、地図を広げ汜水関の位置と、現在の連合軍本隊の予想地点、現在地を簡単に示した

 今連合軍は汜水関まで残りおよそ一日半といったところであろうか

 順調に行けば、開戦は二日後になる

 位置としては、東の方である


 一方俺たちは、汜水関の丁度北側にいる、もちろん相応の距離離れているため、裏手に回って奇襲するには最速で二日後であろう


 そして、そんけんは南側から回っている

 

 そうそうもなかなかに狡猾なことをしてくれる

 二方向から奇襲させることで、片方が失敗してももう片方がバックアップできるようにと考えているのだろう

 真逆に位置している以上連携も取れない

 まぁ、取れる位置にいても連携を取らなかったと思うが


「とりあえず、俺たちの目下の問題は汜水関よりも先にある」


 俺がそう言うと、全員の口から怪訝そうな声が上がる

 そりゃあそうだ、現代の地図なら等高線や航空写真などあるが、この時代の地図なんて一部例外を除いて大きな街や関と街道が結ばれただけの簡素なものだ

 地形のことなんてほとんど記されていない

 俺も事前に情報を集めてなければ、こんな位置に宿営を作ったりしなかった

 かこうえん、さっきの疑問に答えようじゃないか


「この先には崖がある、それもかなりきついのがな」


「もしかしてこーめー殿先ほど、敵に見つかる心配がないって言ったのは」


「ああ、そういうことだ。登山家ならいざ知らず、奇襲を仕掛けれる規模の軍勢が超えられるはずない崖にわざわざ見張りを置く必要はないからな」


「しかし、それでは」


 そこまでかこうえんが言って、ふと彼女は気づいた

 取り乱しているのが自分だけということに

 だからこそ、疑問する相手を変えた


「りゅうび殿、何故悠然と構えておられるのですか?」


「ふっ、うちの軍師は悪知恵だけはピカイチだからな、どうせ何か考えてるんだろ」


「ああ、もちろん」


「しかし、崖を」


「大丈夫ですよ、かこうえんさん、こーめー様の智謀は天下一品ですから」


 なかなか納得できないかこうえんを、誇らしげな笑みをたたえたちょううんが落ち着かせる


「そういうわけで、ちょうひさん、それにかこうえんさん、明日はよろしくお願いします」


「ん、りょーかいだよ、こーめーくん」


「わ、わかりました。それで方法は」


「ああ、もちろん今から説明する、名付けて作って登ろう階段作戦だ」


「んー、微妙だな」


 りゅうびそりゃないぜ、俺この作戦名考えるのに徹夜したってのに


 そんなこーめーの心の叫びは誰にも理解されず、作戦会議は普通に進行し、終了後各々の寝床へと帰っていった

更新が遅くて申し訳ありません

現実が忙しくて時間がぁ


と、愚痴って済みません

今回は複数の軍が展開しているので簡略図を載せます

(携帯版の人はずれたりしてたらごめんなさい)



崖 りゅうび軍




 汜

 水     連合軍本隊

 関




 そんけん軍?

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