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なんちゃって三国志(旧)  作者: 北神悠
4章 時代の幕開け
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第六十三話 りゅうびへの愛は夢までも

 俺たちは森の中をひたすら進んでいた

 連合軍本隊から夜のうちにこっそりと別れた2000人は音を最小限に押さえ、呼吸を殺してただ前へ前へと歩みを進めた


 最初に休憩をとったのは太陽の光が真上に来る頃であった

 全員およそ12時間程歩きづめだったので、声は発していないがかなり疲労しているようだった

 それもそうだ、ただ歩くだけでもきついのに、足場の悪い森の中を完全武装で突き進んできたのだ、日々鍛錬をしている兵士たちでも堪えたであろう

 だが、俺たちの存在がバレるわけにはいかない

 奇襲する上で最低でも作戦開始までこちらの位置を気取られるわけにはいかないのだから


「こーめー様、一応周囲の確認してきましたが、敵と思われる気配はありませんでした」


「おお、そうか、疲れてるのに悪いなちょううん」


 俺は、兵士たちがへばっている中、一人で周囲の見回りに行ってくれたちょううんの頭を撫でて労う


「ふわぁ、こーめー様、私なら大丈夫です。日々鍛えてますから」


 そう言って、ちょううんはその場で軽やかにぴょんぴょんと跳ねてみせる

 本当にまだ余裕あるみたいだな

 この小さい体にどんだけスタミナが詰まってるんだ

 ただでさえ、俺の荷物も持ってくれているというのに

 まぁ、おかげで俺は他の兵士たちのようにへたり込むことなく指示が出せているんだがな


「そうか。けど、ちょううんにはこれからもたくさん働いてもらうから、休んできてくれていいぞ」


「私は問題ありません。それに、ここは敵地ですからこーめー様を一人にして、おちおち休んでいられません」


「はぁ、わかった。じゃあ俺もそこの木陰で休むから、一緒に休もう」


「はい、わかりました。そういうことなら、お側で少し休まさせてもらいます」


 木を背に二人で腰を下ろして、少しすると左肩に重さを感じた

 やっぱり疲れてたんだよな

 そう心の中でつぶやきながら、俺は左肩にちょこんと頭を乗せてすやすやと眠るちょううんの寝顔を見ながら優しく頭を撫でてやる


「ほう、こーめー、随分と楽しそうだな」


 突然声をかけられ、驚いて体をびくつかせそうになるも、なんとか踏みとどまりちょううんを起こさないように、ゆっくりと振り向く


「仕方がないだろ、こうでもしないと休んでくれないんだからな」


「そう言いながらも役得とか思ってるんだろ」


「……思ってねえって」


「ふうん、そうか」


 そう言って、りゅうびはなんの断りもなく俺の右側に腰を下ろす


「なんだよ」


「別にいいだろ、あたしはこーめーの主なんだから、どこに座ろうとあたしの勝手だ」


 ふわぁぁとあくびをしながらりゅうびが言う


「いや、お前俺を枕にして寝る気だろ」


「なんのことだか」


 そう言って、りゅうびは目を閉じてしまった


 五分後


 さぁ、みんなも一緒に考えてみて欲しい

 両肩に寄りかかって眠る二人の美少女

 そのあいだに挟まる男

 うん、ここまでは良い

 というか、昔の俺ならこの男に殺意すら抱いただろう


 だが、ちょっと待って欲しい

 いいか、左に寝てるのはここまで俺のフォローを一生懸命にやってくれた女の子

 そして、もうひとりは曲がりなりにも、俺の主だ

 起こすに起こせないのだ

 

 まぁ、主の方は起こしたところでせいぜい殴られるくらいで済むが、しかしそれでは確実にもうひとりも起こしてしまう

 ここまでほとんど休憩していない彼女を起こしてしまうのは申し訳ない

 じゃあこのままでいればいいじゃないか、このリア充野郎だって?


 ははっ、そんな単純な状況だったら良かったんだがな

 なぁ、おまえらはわかるか

 例えて言えば、過激な新興宗教の信仰を一身に集める像を、彼らの聖地でベンチにしている気分をだ

 ああ、見つかったら死ぬだろうな

 

 わざわざりゅうびに見つからないように、ちょっと離れた木陰をあえて選んだのに、なんでこいつはここがわかったんだ

 いや、既に済んでしまったことを嘆いてもしょうがない

 それよりも、この状況からいかに生還するかだ

 やはり心を鬼にして、ちょううんを起こすか

 いや、それじゃあまるで俺が保身しか考えていないダメ野郎になっちまうじゃないか

 しかし、このことがかんうさんに伝わったら……



 しまったぁ、気付いたら寝てた

 横ですやすやと気持ちよさそうに寝られてたらな

 しかし、ここはどこだ

 っていうか、俺縛られてないか?

 薄暗くて、よく見えなが、体の自由がきかない


「お目覚めか、軍師殿」


「な、なんだおまえ」


 どうやら、俺は天幕の中にいるようだった

 だんだんと目が慣れてきて、改めて見回してみると周囲には黒ずくめの男たちが俺を囲むように立っていた

 そして、上座にあたる所にツインテールの木像が置いてあるのを見て、俺はおおよその状況がわかった


「軍師殿には、劉好団一般条項23条りゅうび様独占禁止と、37条りゅうび様の御体に不要に触れる、そして1283条の軍師こーめーであることに抵触している嫌疑がかけられている」


「いやいやいや、前の二つはともかくとして、最後のは明らかに悪意を感じるんだが」


「そんなの知ったことか!」


「考えたのお前らだろ」


「……ちっ」


「舌打ちすんなよ。ていうか、縄ほどけ。今何時か知らんが、そろそろ進軍しないとヤバイんだから」


「ふっ、りゅうび様の問題より大きな問題などない」


「へぇ、今回の作戦失敗したら、りゅうびの迷惑かけるのはお前らだぞ」


「ぐっ、ごちゃごちゃうるさいっ! ならば、貴様を地獄に落として我らも死ぬまでだぁ」


「やべっ、挑発しすぎた」


 槍を持った男たちが一斉にこーめーに襲いかかる


「うわぁー」

 ………

 ……

 …


「……めー様。起きて……さい、そろ……時……です」


 ゆさゆさと、体がゆすられる

 ん、んあ


「ちょううん、こういう時はこうするんだ」


 ズコン

「ぎゅへぇ」


 突然の衝撃に意識が急速に覚醒させられる


「いってぇ、りゅうびもっと丁寧なおこし方あるだろ」


「集合時間になっても、ぐーすか寝ているお前が悪い」


「こーめー様、大丈夫ですか」


 ちょううんが心配そうに俺を覗き込んでくる


「大丈夫だ、怪我もしてないし、いつものことだからな」


「いえ、そうではなくて、起こすとき、うなされているようでしたから」


 ああ、あれは夢か

 しかし現実で実際起きそうだから、ちょううんの側から離れないようにしよ


「こーめー様?」


「ん、ああ悪い、なんでもない。ちょっと悪い夢でも見ていたみたいだ」


「そうでしたか」


「ああ、心配してくれてありがとな、ちょううん」


 なでなで


「はわぁ、いえ、私は部下として当然の心配をしたまででして……」


「おい、いつまでそこでじゃれてるつもりだ、行くぞ」


 そう言うと、りゅうびは不機嫌そうに歩いて行ってしまった



久しぶりの投稿なのに話を進めず、ギャグ回で終わってしまって申し訳ありません

次から一気に物語を進めていこうと思います


今のところ、どんなに忙しくても引退は考えていませんので気長にお付き合いください

いつも読んでいただきありがとうございます

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