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なんちゃって三国志(旧)  作者: 北神悠
1章 伝説の始まり
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第六話 敬礼は「コケェッ」

「お前たち、止まれ! ここは我ら鶏巾族の砦、用があるなら要件を申せ」


 俺たちは、砦の門の10メートルほど前で見張り台の上で、雌鶏めんどりの被り物をした男に止められた

 りゅうびの部下たちから聞いた情報のとおり、被り物で階級を分けているようだな

 雌鶏の被り物をしているということは、そこそこの立場にいるやつか

 まずは第一関門だな


「おお、やはりあなた方は、鶏巾族の方々でしたか。それでは、ぜひ我々を中に入れてもらえませんか? 」


「要件はなんだ? 怪しい奴を中に入れるわけには行かない」


 こんな鶏の被り物をしている奴らに、怪しい奴と言われるのは非常にイラッとするが、俺は笑顔のまま言葉を続ける


「我々は、あの山の向こうの村に住む鶏の巫女様に仕える者だ」


「鶏の巫女だと」


 兵士は怪訝そうな顔をする

 しかしそんなことは気にせず、俺は一気に言葉をまくし立てる


「いいか、巫女様は日々鶏様からありがたいお告げを受けている、そして、今朝非常に重大なお告げが鶏様よりもたらされた」


「いったい、どんな内容だ? 」


「それは軽々と口にできるものではない、聞くところによると、本日こちらには鶏巾族の幹部の方がいらっしゃるらしいでないか、是非、お目通りを願う」


「し、しかし、そういわれても」


 よし、主導権は握った

 さすがに自分たちが崇める対象を持ち出されれば、無下にするわけにはいかないだろう

 それに、こういう縦組織は突然の判断に弱い、基本的に上にお伺いを立てて動いているからな

 

 もうひと押しだな


「それでは、仕方がない、我々はほかの幹部の方がいらっしゃるとこへ出向くまでだな。事は急を急ぐ事なのにな、これであれが起きてしまったら……おっと、これ以上言う必要はないな、それでは、お仕事中に邪魔をしてしまって、すまなかったな」


 俺を皮切りに全員回れ右をして、元来た道を帰ろうとする


「お、おい、待ってくれ、わかった、つくね様にこの件を伺ってくるから、しばらくそこで待っていてくれ」


 そして、しばらく待ったあと、門が開き、無事砦の中に入ることができた

 とりあえず、ここまではうまくいったなと、心の中でニヤリとほくそ笑むのであった



 砦に入ったあとすぐにボディチェックが行われた

 かごの中にいるりゅうびに対しては、全員で巫女様に触れるなんて恐れ多いとのたまったおかげで、軽くチェックされるだけで済んだ

 特に、その時のかんうさん達の演技は凄まじい気迫を感じた

 というか、あれは素だろう

 ほんとにりゅうびラブなんだなぁ

 と、心の中でため息をつく


 まぁ、そのおかげで籠への注意は反らせたようだけどな

 そもそも、仮にりゅうびがチェックされても問題はなかった

 ただ一点、武器を隠している籠を入念に調べられるとまずかった


 そこで、あえてりゅうびに砦の兵士たちの意識が向かうように、巫女装束(まぁ、鶏のコスプレだが)を着せ、神聖な存在のような演出をしたんだ

 ついでに、かんうさん達の想定外の迫真の演技も良かった


 その後、俺たちは砦の中心部のレンガ造りの小屋の前に連れて行かれた

 先導していた隊長が俺たちに、しばし待てと言って小屋の中に入っていった


 数分後、隊長は一人の大柄な男を連れ立って戻ってきた

 男は見れば見るほど凄まじい太り様であった

 腹は出すぎて、ベルトの位置が全く分からず、顎は二重を通り越して巨大な襟巻きをつけているようだった

 そして、頭の上にちょこんと雄鶏の被り物が乗っていた


「このお方が、鶏巾族ゆう州方面支部長のつくね様だ。つくね様、この者たちがつくね様にお話があるようで」


 つくね様と言われた肉団子は俺たちの方に顔を向けた


 ここからは、りゅうびの出番である


 りゅうびは、もったえぶるようにゆっくりと籠から降りる


「鶏様からのお言葉を伝えよう、『山の神が怒り、この地を狙う』」


「それは、どう言う意味だ? 」


「お前たち、あそこの山に祭壇を建てていないな」


 祭壇とは、鶏巾族が鶏様に感謝を捧げる場所である

 この祭壇は、基本的に鶏巾族がいる周辺には必ず建てられている

 一種の信者を増やすための広告塔みたいなものらしい


「お前たち、祭壇を立てなかったのか? 」


 肉団子(つくね様)が隊長にゆっくりと、しかし威圧を感じさせる口調で聞く


「そんなはずはありません、あそこの山には……」


「その祭壇は、つい最近心無いものに壊されてしまったようだ、しかし山の神はそうとは思わなかったようだ」


「では修理部隊を近いうちに……」


「それでは遅いのだ!」


 そうりゅうびが言い放つと、突然近くでどっかーんと爆発音がした


「何事だ!」


 隊長が突然の事態に、部下に対して大声で聞く

 その横で、肉団子がさっきの威厳はどこへやら、オロオロしていた


 音のした方から、兵士が一人駆けてきた


「ほ、報告します! 突然何かが我が砦に向かって飛んできて、砦の一部を破砕しました」


「何かとは、なんだ? 」


「はっ、ただいま早急に調べておりますが、突然のことだったので目撃者もおらず……」


「そうか、ご苦労だった。コケェッ」


「コケェッ」


 兵士は敬礼すると、持ち場へと走って戻っていった


「しかし、一体何事か」


「恐れていたことが起きてしまいました、今のが山の神の怒りです」


「なんだと? 」


「わ、儂らはどうすればいいんだ」


 ドッカーン


「ひいっ」


 バッカーン


「はう」


 ドッバーン


「ぶひっ」


 肉団子が衝撃が走るたびに気持ち悪い悲鳴を上げて、身を丸くする


「な、なんとかならんのか」


「すぐに、祭壇を修理しなければなりません」


「おい、お前たち、早く修理に行かんか」


 肉団子が荒々しく叫ぶ


「しかしつくね様、今下手に外に出れば」


「ええい、うるさい、早く行かんか! 」


 肉団子の無茶な注文に、兵士が困り果ててると


「わらわが何とかしてしんぜよう」


「何、巫女殿はなんとかできるのか」


「あたりまえだ、わらわは鶏の巫女、山の神を一時的になら鎮めることも可能だ」


「そうか、ぜひ頼む」


 りゅうびは、肉団子の必死の懇願にうなづくと、俺たちに目配せをした

 俺たちは、近場の木材を集め、りゅうびの前に積み、火をつける

 そのあいだにも、謎の衝撃は何度も砦を襲った

 

 火がつき、煙が上がりりゅうびがぶつぶつと呪文を唱える


 そうすると、今まで定期的に来ていた衝撃がピタッと止まった


 その様子を見ていた、砦の連中から、おお、と感嘆の声が漏れた


 

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