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なんちゃって三国志(旧)  作者: 北神悠
1章 伝説の始まり
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第五話 帯と被り物と鶏の巫女と

 かんうさんが聖りゅうび偃月刀を片手で構え、もう一方の空いている手で、腰の帯を解き空中に投げる


「はぁっ! 」


 気合とともに、ロリコン偃月刀が一瞬のうちに左から右へと振り抜かれる


 俺は最初何をしたのか、わからなかったが、かんうさんが床に落ちた帯を拾い上げた時理解した

 帯が真っ二つになっているのである

 しかも横にではなく、綺麗に縦に切られている

 やっていることはとても地味なものであるが、それをやるのがどれほど難しいかは素人の俺でもわかる


 空中でクネクネと不規則に舞う帯がちょうどうまく横に伸びるるタイミングを見切る眼力


 そして、その一瞬の間に偃月刀を振る筋力


 正確に狙ったところを切り裂くコントロール


 すべてを兼ね備えて始めてできる絶技である


 俺がかんうさんの技に声も出せないでいると、りゅうびがつまらなさそうな顔でかんうに言う


「おいかんう、もっとちょーひみたいな、ぐわっでどかんみたいな派手な技はないのか」


「つまらない技で退屈させてしまい、申し訳ありません」


 あれだけの絶技をやったかんうはりゅーびに平謝りしていた


「ですがりゅーび様、私の技は相手を倒すための技なんですけれども」


「そんなのは知らん、つかえんやつだな」


 りゅうびの辛辣な言葉がかんうに飛ばされる


 さすがに不憫そうなので何かかんうさんに声をかけようとしたら、なんだか嬉しそうで気持ち悪かったので見なかったことにした


 かんうさんをいじりあきたのか、りゅうびが俺を見る


「で、こーめー作戦は出来たか」


「ああ、かんうさんとちょうひさんの実力が想像以上だったからな、うまくやれば誰も犠牲を出さずいけるかもしれない」


「おお、そんな作戦があるのか」


 りゅうびが目をキラキラさせてこちらを見る


「任せていおけ」



 地図で確認したとおり、小高い丘の上に小さな砦が立っていた

 

「こーめー、ほんとにこんな格好で行くのか」


 そこには先程まで、白銀の派手な鎧を着、ピンクの髪をツインテールにしていたりゅうびの姿はどこにもなかった

 彼女は白いフード付きのゆったりとしたローブを足元まですっぽりとかぶり、顔を目元以外を白い布でおおった占い師風の格好をしていた

 この服は、テントの一部の布を切り取って軽く縫い合わせただけの簡単なものだ

 最後にトサカの代わりに槍についていた、赤いふさふさの飾りを頭につけておしまいである


「ああ、りゅうび、お前は今から鶏の巫女だ」


 ふむ、といいながらりゅうびは自分の格好を見まわしていた

 そして、そのりゅうびを見ていたかんうさんが「りゅうび様は、何を着ても完璧です」とか言って騒いでいた

 とてもさっきあれだけの凄まじい技を見せた人間と同一人物には見えない

 

「それで、かんうさんともうひとりは、りゅうびの籠を運ぶ役をやってください」


「なんであたしは、籠に乗っていかないといけないのだ? 」


「もしもの時のために、かんうさんの武器を運ぶためです」


「なるほど、籠を運ぶ棒の中に隠すというわけだな」


「はい、さすがにあれだけ長いと、目立ちますからね」


「我が愛刀、聖りゅうび偃月刀があれば例え何人に囲まれても、りゅうび様には指一本触れさせません」


「かんうさん、戦う気持ちはありがたいのですが、戦闘は最悪の場合なんで、極力戦わないようにことが運ぶように頑張りましょう」


「それでは、作戦を説明します」




「おい、異常はないか? 」


「西側異常はありません」


 ひよこの被り物をした兵士が、上官である雌鶏めんどりの被り物をした兵士に答えた


「特に今は幹部のつくね様が滞在しておられる、くれぐれも警戒を怠るんじゃないぞ」


「コケェッ」


 上官に対してビシッと敬礼をする



 彼ら鶏を崇め、皇帝に反旗を翻した者たちは、頭上に掲げるのは鶏様だけとし、鶏の被り物をしている

 このころから、彼らをいつしか鶏巾族けいきんぞくと呼び、自身も鶏巾族と名乗った


 鶏巾族にはいくつかの階級が存在した


 幹部は赤いトサカを持つ雄鶏おんどりの被り物

 幹部の中でも位が高くなると、トサカが立派になる


 次に、各地域での隊長格、いわゆる中間管理職連中が雌鶏めんどりの被り物、普通の構成員は黄色いひよこの被り物をつけている


 

「隊長っ!!!」


「何事か?」


 西側の見張りの兵士が、慌てて隊長の下までやってきたのは、ちょうどお昼すぎのことであった


 隊長と呼ばれた男があわてて西側の見張り台に登った


 目を凝らしてよく見ると、数十人程度の集団がまっすぐこちらを目指してきている


 彼は、戦闘になってもいいように、警鐘を鳴らし他の者たちに指示を出していく


「全員、戦闘態勢を取れ。謎の集団が近づいてきているぞ」


「コケェッ!!!」



 

「おい、小僧。あいつら随分と多くないか」


 籠の前を軽々と担ぎながら、かんうさんが聞いてくる


「たぶん、俺たちを警戒しているんだと思います」


「なるほどな」


 俺はニヤリと笑い、改めて全員を見回し告げる


「作戦開始だ」

 

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