第四十九話 おじゃべりじゅんいく
小沛でこーめー達の会議が行われる5日前
遠く離れたある街の小さな会議室で、5人の男女による話し合いがおこなわれていた
「で、おまえら何か意見はあるか?」
そうそうが発言を促すやいなや、ガタンと椅子を鳴らしてかこうとんが元気良く立ち上がった
「あたしはとうたくと戦いたい」
胸に手を当て、自分の主張をアピールしている
「姉さん、迷いなく即答しますね」
姉の大げさな行動にやや呆れ顔で、かこうえんが反応する
「あたしはとうたくには興味ないが、西ではなかなか名の通った武将がいるらしいからな。あたしはそいつらと戦いたい」
「ああ、そういう理由ですか」
はぁ、とかこうえんは姉の戦闘狂っぷりに頭を抱えて狼狽する
そんな、妹に気づくはずもなく、かこうとんは腰に手を当てて満足そうに笑っている
「はははは、かこうとんらしい答えだな。で、そうじんはどう思う?」
急に振られたそうじんは、面食らいつつも考える素振りをしながらつぶやく
「そうですね……状況から考えて……」
「わかった、そうじんありがとう」
「ちょっ、そうそう兄僕はまだ何も言って……」
「どうせ結論はえんしょうにつくだろ」
と、そうそうが面倒くさそうに言う
「うっ、そうだけどどうして……」
「男のくせにびーびーうるせえな。だいたい、状況からかんがえて~って話すやつの言いたいことなんて言わなくてもわかる」
「僕は、ときどきそうそう兄の頭の中が見てみたいよ」
そうじんがふてくされてように言う
「なにしょげてんだよ、元気出せって」
落ち込むそうじんの背中をバシバシとそうそうが叩く
「で、お前はどう思うじゅんいく?」
そうそうはここまで一言も発していないもうひとりの人物に声をかける
「くっははははははは! やっとぼくの番が回ってきたようだね」
ジャラジャラと身につけた大量のアクセサリーを鳴らしながら、大振りなジェスチャーでじゅんいくと呼ばれた金髪の青年が話し始める
「もういいや」
「いやいやいや、待ってくれよそうそう君」
「お前話長そうなんだもん」
「軍師のぼくが語らずして軍議が成り立つと思うか? いやならない」
じゅんいくはそうそうに顔をジリジリと近づける
「ああ、もうわかったよ。手短に話してみろ。ただし、そこまで言うんだからそれなりの話をしなかったら、今度は許可しても20文字以上話すのを禁止するぞ」
「ぼくを誰だと思ってるんだい、そうそう君、ぼくは天才軍s……」
「やっぱ、文字制限するか?」
「くっ、わかった、わかったから、ぼくに話をさせてくれ」
とじゅんいくはさっきまでの偉そうな態度はどこへやら、ぺこぺこと頭を下げて懇願する
こいつはこの無駄口さえなければいいんだがな
そうそうとじゅんいくが出会ったのは、まだそうそうが役人になったすぐ後のことだった
そうそうは役人登用試験を主席で突破した
しかし、学科試験でそうそうよりも高得点を出したものがいた
それがこのじゅんいくであった
ただ、彼はどんな人間にも砕けた口調しかできず、奇抜な見た目と合わせて試験には落ちた
それに目をつけたそうそうが最初は自分の秘書として雇ったのである
じゅんいくの働きっぷりは、そうそうの想像を超える程優秀だった
そうそうが現在治めている郡が数年で十倍の収入を得るようになったのも、じゅんいくの働きによるところが大きい
ただし、無駄口が多いのが欠点で、下手をすると自分のことから重要機密までペラペラと話してしまうので、はい、いいえ以外はそうそうが許可しない限り喋れないようにしている
ちなみに、筆談させるとよく要約された美しく見やすい文章にまとめられるため、じゅんいくのことをよく知らない者たちからは本当に優秀な人間と勘違いされている
その上、執務室に閉じこもっていることが多いので、外にいてもじゅんいくと気づくものは本当に一部の人間だけで、裏では幻の執政官と呼ばれている
「という感じで策を打った上で、えんしょうの呼びかけに応じるのはどうでしょう?」
じゅんいくが話し終えると、じゅんいく以外の四人は全員驚いた顔をしていた
「さすがはじゅんいくさんですね」
「やるな、じゅんいく」
「なるほど」
「ちっ、文句のつけようがねぇ作戦だ」
そうそうだけがひとり悔しそうな顔をしていた
その顔を見てじゅんいくは満足そうに鼻を鳴らして、席に着いた
「よし、じゃあ方針は決まった、かこうえん、かこうとんは兵の準備を頼む。あの男も今回は連れて行くから呼んでおけ」
かこう姉妹は互を見つめ合って、頷く
「ぞうじん、お前は例の準備を頼む、じゅんいくお前も今回は付いてきてもらうぞ。政務の方はオレ達がいなくなっても回せるように手配しておけ、以上解散」
「「「「はっ」」」」
そして、数日後そうそう達は、えんしょうに指定された集合地点へと兵を進軍させた
この報告を受けて、りゅうびもも小沛から軍を出発させた




