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なんちゃって三国志(旧)  作者: 北神悠
4章 時代の幕開け
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第四十八話 まだ見えぬ高みの決断を仰いで

 小沛とはいくつかの小さい県をまとめた領地と、太守直轄領を足した郡の名前であるとともに、庁舎がある町の名前である

 最初俺がここに来た時もこのせいでいろいろ混乱したが、慣れとは恐ろしいものである

 まぁ、領地か街のことを言ってるのかは文脈から考えれば分かる事なんだけども


 現在、小沛の街で行われているりゅうびのライブは劉好団の連中をりゅうびに説得してもらい、公演数を減らしておこなっている

 劉好団の連中が多くのチケットを保持しているため、その席を譲ってもらい無理やり二回の公演を一回にまとめる強引な手段を取ったのだが、自体が緊急なのでやむおえないという形で、かんうさんも納得してくれた

 実際は、りゅうびの鶴の一声ですんだが、そこはかんうさんの名誉のためにも俺の胸の中にしまっておくことにした

 そして、その合間に作った時間でとうたくの反乱についての対策会議を行っている

 

 庁舎には小沛全体の工事をやった時に一緒に増築をし、100人が一堂に会して会議できる部屋を作った

 ちなみに会議以外にも、りゅうびのライブ時はリハ用のステージとしても使ったり、俺のアイデアをプレゼンしたりと多目的に利用されている


 現在この部屋にはりゅうびを中心に、小沛の政務、軍務の主要人物、県令と大きい街の代表者に集まってもらっている

 議題は、二枚の書簡についてである

 一枚はとうたくからのもので、簡単に言えば今までどおり中央に仕えろというもの

 そしてもう一枚が、反とうたく連合参加依頼である

 連合の中心はえんしょうというものらしい


「ここは、このまま中央に仕えるべきだ!」


「いやいや、とうたくという田舎役人に従うべきではない」


「とうたくは既に皇帝陛下を擁しているのだ、それはわかるだろう」


「皇帝陛下は無理やり従わされているんだ、今こそ我らが立ち上がり陛下をお救いすべきだ」


「えんしょうは名家の出身であるらしいが、信用できるのか?」


 と、まぁさっきから文官たちの意見は真っ二つである

 ちなみに武官連中、つまりりゅうび軍の幹部たちはりゅうびのライブがオジャンになったせいで、全員ふてくされていた

 こいつらは本当に、後で処罰だな……りゅうびに頼んでおこう


 文官たちの言い争いを眺めていると、おおよその陣営が見えてくる


 主にとうたく恭順派が、県令達と街の代表者

 反対派が、やまだを筆頭にする小沛の役人たちである


 この構成は、よく考えてみれば最もなことだった

 軍を持つ側と、持たぬ側の考え方の差だろう

 

 太守以上しか軍は持てない

 その上、りゅうび軍の連中は生きる目的が共通しているため、強調性も高いし、鍛錬も本当に真面目にやっている

 中身は残念ながら変態だが、傍から見れば精鋭部隊にしか見えない

 それを実際に目で見ているやまだ達は、そりゃ小沛がより有利になる状態

 つまりは戦で功績を立てる方を選ぶ

 反とうたく連合に参加し活躍できれば、俺たちはさらなる出世が可能だろう


 逆に県令たちはそれを知らない

 そうであれば、反とうたく連合とうたってはいるが、結局は皇帝に刃を向ける反乱軍である

 負けても、引き分けでも連合軍はおしまいだ

 

 鶏巾の乱で皇帝に対する信頼はそれほどあるのかとも思っていたが、多くの人間の中で皇帝は未だに絶対の存在で、信奉している民も多いことは小沛で政務をやってきておかげで痛い程分かった

 長い間の伝統と刷り込みは凄まじい

 実際、鶏巾族として活動していた者も、一旦足を洗ってしまえば再び皇帝陛下万歳と唱えているんだからわからないものだ

 それだけ皇帝というものの影響が計り知れないということだろう

 だから県令たちは皇帝がいる以上、例え傀儡だとしても従う方を選んでいるのだろう


「なぁ、こーめー」

 いい加減、話し合いに飽きてきてりゅうびが俺にしか聞こえない声で問いかけてきた

「お前はどう考えてるんだ?」

 俺は視線はずらさずに答える

「もちろん、反とうたく連合に参加する予定だ」

「……予定?」

 俺の含みのある言い方に気づいたりゅうびが重ねて聞いてくる

「そう、予定だ。今のところは決めかねてる」


 ふーん、とりゅうびが相槌を打ちつつテーブルを小さく叩く

 説明しろということだろう

 俺は、どうりゅうびに説明したもんかと思考する


 現状、情報が少なすぎるというのが俺の考えだ

 しかし時間は有限であり、今議論を繰り広げている彼らも情報が少ないのは分かっているだろう

 それがわかった上での話し合いだ

 俺も何も知らないのであれば、こうやって黙ってないで議論に参加していただろう

 でも俺には少しだけこの世界の未来の知識と、一部に常人離れした高い能力の持ち主がいることを知っている

 例えば、りゅうびであったり、かんうさんであったりだ

 そして、俺の推測が正しければとうたく側には間違いなく大物がいる

 最低でもとうたくとりょふは何らかのスキル持ちだろう

 それに対抗する手段がなければ、反とうたく連合に参加する意味はない

 えんしょうは有名な人物ではあるが、それだけでは力不足感がある

 それ以上に、あの勢力がどちらにつくかで、大きく動きが変わる


 りゅうびには、かいつまんであいつらがどっちにつくかで決めると話した

「あいつらって、誰のことだ?」

 そんなの決まってるだろ、と俺は前置きをし

「そうそう達だ」

 と言った

 りゅうびは一瞬驚いた顔をしたが、自分の中で納得したようだ

 スキルについてわかっていなくても、感じ取るものはあったのだろう


 そして、俺の知りうる限りではそうそうは反とうたく連合に入るはずだ

 だから予定

 既に、密偵は送ってあるので、それを待って決める予定だ

 ただ、俺やりゅうびが頭ごなしに決めてしまっても組織としては良くないので、ただただ眠い会議ではあるが議論させて時間を稼いでいるのであった

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