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なんちゃって三国志(旧)  作者: 北神悠
3章 小沛太守補佐
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第四十六話 劉好団本部特別裁判所

 あの後、俺はちょううんに担がれて、なんとか庁舎まで帰って来れた

 診断の結果、右足はバッチリ折れていて、肋骨もヒビが入っているとのことだった

 ちなみに、かんうさんに吹っ飛ばされて、建物に突っ込んだちょうひさんは服が少し破けて、汚れた以外はかすり傷一つなかったそうだ

 一体、どんな体の構造しているんだろうか

 

 俺の治療が終わるなり、かんうさんに首根っこを捕まれ劉好団りゅうはおだん本部に連行された

 というか、いつの間にこんなもの作ったんだ

 小沛の開発には目を光らせていたつもりなのに、請求書、領収書類にもしっかりチェックを入れていたのに、目の前に建てられた三階建ての劉好団本部塔を見て、改めてかんうさんの有能さを目の当たにした気分だった

 はぁ、胃が痛い


「おい小僧、何を考えてるか知らんが、これは劉好団の私財を投じて建てたものだ。私が横領などりゅうび様の足を引っ張るまねするわけないだろう」


 完全に心が読まれている

 しかし、劉好団にそんな財力があるなんて全く考えていなかった

 なぜなら、ライブの収益も物販の収益も全てちゃんと収支報告書を作って、小沛の金庫に入れているのだから、そこからお金を稼ぐことはできない

 りゅうび関連のグッズの製造販売も領内では全面的に禁止している上、取り締まってるのは他ならぬ劉好団自身だから、まさかそんな早まった真似はしないだろう

 とても給料集めただけで建てられるものでもない

 そんな訳で、俺はかんうさんがこっそり小沛の金を横流ししたものだと思っていた


「そんなに、どうやって建てたかきになるのか?」


「あっ、いや、えっと……そうですね、気になります。小沛の税収を増やす役に立つかもしれないですからね」


「ふんっ、それは無理だ。この建物を建てた費用は全て働いて稼いだのだからな」


「えっ、いやでも、かんうさんたちはりゅうびのライブでそれどころじゃ……」


「なに、一日一回の睡眠を三日に一回に減らしただけだ」


 いや何この人、ダイエットのために一食抜いちゃった的な軽いノリで言ってんの

 人間そんな簡単に睡眠減らせないよ

 俺も仕事で貫徹することもあるけど、その後はフラフラで、体にすごい反動来るし


「りゅうび様の為であればその程度のこと我々には何の問題もない」


「でも、この建物を建てるとどうりゅうびに貢献できるんですか」


 あれ、俺地雷踏んだか

 かんうさんだけでなく、近くにいた劉好団の連中まで、そんなことも分かんないのか的な視線で見下ろしてくる

 えっ、わからない俺がおかしいのか


「小僧、ここはな、りゅうび様に対する結束と忠誠を高めるための場所なんだ」



 おお、なんかかっこいいと思った十分前の俺はなんて愚かだったのだろう

 かんうさんの話を聞くに、要はこの建物は、りゅうびのグッツを飾るコレクションルームと、りゅうびのライブのダンス(親衛隊用)の練習場と、りゅうびついて語り合う集会場が合体した建物らしい

 つまりは、りゅうび好きにはたまらない憩いの場だった

 本当に、こんなくだらないことに命削ってなに考えてんだ


 だいたい、この建物についてわかった頃、俺は二階にある小さな会議室に案内された

 そこにはりゅうび軍の古株たち、つまりは現りゅうび軍の中心人物たちが勢ぞろいしていた

 そして、俺は中に突き飛ばされるなり縄でぐるぐる巻きにされ、全員から槍(もちろん刃の方)を突きつけられた

 うん、なんかすごいデジャブだ


 俺の様子を確認したかんうさんは口を開いた


「さて、今回の件詳しく話してもらおうか、事と次第によっては今日が命日になるぞ」


 うわぁ、なんか洒落になんないことになってる

 というか、りゅうびに知られるとまずいことをこっそりやるためにこの建物立てたんじゃないのか

 うん、やっぱり人間本当にどうしようもない死を目の前にすると冷静になるもんだ

 それに、今回はやったことに関しては俺にはなんの後ろめたいこともない

 俺は咳払いを一つすると、今回の騒動について一つ一つ丁寧に話した

 まぁ、こんなとこで死ぬわけにもいかんしな




「……というわけで、俺がやったことはやまだ達も認めたことだし、あの状況ではこれしか小沛を、ひいてはりゅうびを守る手はなかった」


 俺の話を聞き終えた、幹部たちは皆一様に額に皺を寄せて難しい顔をしていた


「……ちっ、今回のことは不問にしてやろう」


「隊長! りゅうび様を汚したやつを許すんですか」


「今回は、小僧の策がなければ我々は間違いなくりゅうび様に迷惑をかけていた。それを防ぐ為というのなら、りゅうび様が認めている以上、我々が手出しはできないだろう」


「ぐっ」


 何人かの男たちは悔しそうに声を漏らす

 ってか、こいつら俺のこと殺す気満々だったのか

 その後、何人かは不満そうにしてはいたが、俺はなんとか劉好団本部へんたいのそうくつから五体満足で帰還することができた

 足が折れてたので、帰る頃には日が落ちていたが、自室までたどり着きそのまま力尽きた

 しかし、マジで今回は死ぬかと思った

 もう二度とこんな作戦したくない

 余計な噂を流したやつ覚えておけよ


 ちなみに、後日劉好団本部はりゅうびにこっそりばらし、ちょうひさんの投石によって粉々に崩壊させておいた

 ざまあみろ

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