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なんちゃって三国志(旧)  作者: 北神悠
3章 小沛太守補佐
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第四十三話 守るための代価

「しかし、既に各地に散ってしまった兵士たちを暴れさせることなく、対処する方法なんてあるのでしょうか?」


 俺は、まずやまだたち役人の意見を聞いた

 確かに既に策は俺の中である程度完成している

 しかし、今回のことがことなだけに、時間はないが出来うる限り慎重にいきたい

 

 結果として、彼らから出たのは長い沈黙と苦悶の声だけだった

 そして、ついにやまだがギブアップ宣言をしたのである


 やまだの言葉を聞き、俺は分かりましたといい今まで閉ざしていた口を開いた


「一個だけ、確実な策があります」


「なっ、本当ですか!」

 その場にいた俺以外の全員の目に光が灯る

 今まで、重苦しかった空気が嘘のように、全員が俺のことを期待の眼差しで見つめてくる


 しかし、極力この策は使いたくなかった

 実行すれば確実に彼らを集めることができるだろう

 この庁舎に間違いなく散らばった兵士全員うを集められる究極の方法だ

 しかも、多分最速で


 俺が考えた策は簡単に言えば、今流れている噂よりも、強烈な情報を流すといったものだ

 ただこの策を実行するにはどうしても、ひとつだけ大きな問題点があった

 それは間違いなく、犠牲者がひとり出るということだ

 今流れている噂よりも決定的な噂、それにはどうしてもひとり死んでもらうしかない


 俺が、今回の作の話を進めるほどに、皆の顔が曇っていった、中には俯くもの、歯を食いしばるもの出た

 とても残酷な作戦だ

 俺の手も机の下で小さく震えている


「以上が、俺の作戦です」

 俺は震える手をなんとか抑えながら、作戦を説明しきった


「それは、確実だろう。し、しかし、そんなことをすれば、かんう殿が黙っておりませんよ」

 やまだが、心配そうに返してくる


「大丈夫ですよ、実行は俺がやります。りゅうびには申し訳ないが、俺以外適任者がいないでしょう。かんうさんにもわかってもらうつもりです」


「だが、こーめー殿」


「誰かがやらなければいけないんだ!」

 俺は少し語調を強めて、言い切る

 全員が、俺の覚悟のされて口を紡ぐ


「それでは、私が」

 そんな中ちょううんが、自らを示し代わりを名乗り出る


 それを見て、俺はゆっくり顔を左右に振る

「いや、こんな仕事女の子のちょううんには任せられない」


「ですが、私のほうが素早いですし、身軽ですからうまくやれると……」


「いい、いいんだちょううん。この策を考えたのは俺だ、それに、俺はちょううんにはいつまでも綺麗なままでいてほしいんだ」


「こーめー様っ」


「大丈夫、なんとか知恵を使って生き残ってみせるさ」


「はいっ、私はこーめー様がどんな人間になっても、こーめー様の味方です」

 ちょううんが目に涙を貯めながら、嬉しいことを言ってくれる

 ふと視線が気になり、周囲を見てみると会議室にいた全員が、もう何も言うことは無いといった清々しい顔で俺のことを見ていた


「では、皆さん、情報を流す方はお願いします」


「ああ、小沛太守の名にかけて、こーめー殿の期待に必ず添いましょう」

 やまだがそう言うと、役人たちも大きく頷いてくれる


 俺は、彼らにもう一度深くお願いをし、会議室から出た



 会議室を出たところで、俺は隣に目線をやる

「で、ちょううん早速だが、お使いを頼んでもいいか」

 俺の横にぴったり付いてくる彼女に頼みを告げる

 彼女は頷き、任務を聞くと俺とは別方向に向かう

 その途中彼女は、名残惜しそうに何度か俺を振り返った


 ちょううんの表情に後ろ髪引かれる気がしてきたが、頭を振って思考をクリアにする

 さて、俺はすぐに準備だな

 潜入道具に、隠れる場所も目星をつける必要があるな

 とりあえず、あれをまずは手に入れないとな


 俺は、頬を叩き覚悟を決める、庁舎の奥にある鍵で厳重に守られた部屋の前に向かう

 ピッキングをして一つずつ錠前を外し、扉を開けて中に入る

 いつもなら、ここには警備や役人達がいるが、今は人払いをしてもらい、誰も近くにはいない

 

 ああ、あれを手にしたら後戻りできなくなるな

 りゅうびとの思い出が頭にフラッシュバックする

 そういや、俺とあいつの出会いはここから始まったんだな

 もう、あいつと出会ってから半年以上も経つのか

 年月が流れるのは、早いもんだな


 部屋の奥の引き出しの中で、目的のものを見つけ一気に掴む

 良心の呵責に耐えながら、俺は必要なものをまとめ、部屋をあとにする


 部屋に戻り、食料など外で生活する準備を整え、最後に例のモノを出して装備する

 これで、俺は重罪人だな


 小沛を守るために、ここにこーめーの孤独な戦いが始まった


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