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なんちゃって三国志(旧)  作者: 北神悠
3章 小沛太守補佐
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第四十一話 居眠りの代価

「こ、こーめー殿いったい、その『じんざいはけんぎょう』とは、なんなのですか? とても郡とは関わりが無いように思えるのですが」

 狼狽気味にやまだが俺に聞き返してくる


 俺は人材派遣について噛み砕いて全員に説明する

 依頼主の要望において適切な人材を派遣すること

 通常は派遣した人物に給料が払われ、派遣元は紹介料もしくは仲介料として一定の金額を受け取るということ

 

 そして、今回軍を使ってそれを行う理由は簡単である

 主に現状人材派遣が必要なのはこれから開墾が必要な、未開拓地域が主流になる

 特に主要幹線道路から遠い村や、今まで盗賊がいて開発が進まなかった地域などは貧しく人を雇う金もない

 賃金が支払われないのであれば、開発に対する働き手など出てくる訳もなく

 結局はその村の人員で開拓をしなければならず、中央に近い村に対していつまでも貧しく、税収もなかなか上がらない

 

 そこで俺が考えたのは、賃金を中長期的な税という形でもらうことにして、軍人を開発に向かわせるアイデアだ

 今年だけの目線で考えれば、これはあまりメリットが感じられないようにも思える

 それこそ、この町や周辺の道路や川などと同じように税金で人を雇い、開発すれば良いということになる

 しかし、その方法には大きな欠点がある

 住民たちの中央への依存心を高めてしまうということだ

 困ったら俺たちに泣きつけば助けてもらえるという風潮を作るのはよくない

 自分の頭で考えないようになると人間はどんどんダメになる


 援助と甘やかしには大きな差があるということだ

 例えばこんな話がある

 あまり食べ物が多くない山の村の男に食べ物を与えるのは簡単だ

 しかし、それは甘やかしでしかない

 本当に彼のことを思うのであれば、食べれる植物食べれない植物の知識を与え、動物の狩り方さばき方を教えることである

 そうすれば、自分がいなくなっても彼は生きていくことができるし、彼に子供が出来て、その子供も一人で生きていけるようになる

 どんどんと子供に伝わるうちに、知識や技術は進歩し、より効率的な植物の栽培をしたり、動物を囲い込み家畜として育てるようになり

 多くの人たちの営みを育み、栄えさせることができるというわけである

 ただ、食料を与えるだけではこうはならない

 

 そして、これはまさに今回のことにも当てはまる

 俺としては、なんとしても早急に小沛の経済を潤わせ、強い地盤を作り、多くの兵士を抱えられるようにしたい

 今回の、人材派遣計画はこの三つを全て達成するうえで最速の方法だと考えている

 

 それに、あの男が動くのはもうすぐ冬になる現状を考えると、最速で春過ぎだろう

 まだ、余裕はあるにしても、俺たちに時間がないのは事実だ

 それまでに、最低5千の軍を維持し続けるだけの力が欲しい

 

 とにかく、今回の軍人で人材派遣を行うことで賃金なし、まともな訓練ができないのは痛いが、体はしっかりと鍛えてこれるだろう

 それに、集団で作業することは最終的に軍隊として統率された動きをするためのいい訓練になるし、地方での生活で遠い戦地でも戦える精神面もある程度鍛えられるはずだ

 今回の余剰金を使って、とりあえず兵士7千人分を一年以上養っていけるだけの蓄えは出来た

 税も、基本的に価値が認められれば何で支払ってもいいとしたので、食料もかなりストックがある


 俺は、一連の話を全員に伝えた

 最初は懐疑的な表情の者や、りゅうびに仕えるのは自分たちだけで十分だと言うように敵意さえ向ける者もいたが、概ね納得してくれたようだ

 馬鹿な発言をした幹部連中は、一番きつくて遠い場所に派遣してやろう

 そう俺は、心に誓いながら、改めて具体的な予算案や派遣先をまとめた資料をちょううんに配ってもらう


 そこから、さらに話を詰めていった

 ちなみに、右側はりゅうびに熱い視線を送っているかんうさんと、空気椅子で体幹を鍛えているちょうひさん以外全員10分もしないうちに船をこいでいた

 それに対して、役人たちも俺の考えに賛同してくれたのか、参考になる発言や、優れたアイデアなどを数多く出してくれた

 俺とやまだはうまく意見を取りまとめ、りゅうびは時々眠そうに目をこすったり、あくびを噛み殺していたけれど、必死に聞いて、わからないところはどんどん質問していた


 ちなみに、その後りゅうび軍側の参加者連中は全員りゅうびの命令によって、ちょうひさんの自主訓練に参加させた

 数日はかんうさんを除いて、這って動くのもままならない程の筋肉痛でダウンしていた

 いい気味だ


 人材派遣の方は、正式に軍人派遣計画として動き出した

 軍人派遣の派遣先の公募をしたら、すぐに多くの村や地域などから要請の返事が来た

 その中から俺たちが改めて選抜した場所に、既に集まっていたりゅうび軍のメンバーのうち1000人程を第一陣として出発させた

 とりあえず、これで一ヶ月ほど様子を見て、問題がなければ募兵を行い、土木の知識などを軽く教えてどんどん派遣していく予定である


 これと並行して、以前から行っている工事の方もどんどん進めさせていった

 毎月の商人達からの収入は月を経るごとに右肩上がりになり、人口も順調に増えた


 一ヶ月後、各地での軍人派遣はなかなかの成果を上げていた

 最も税収が増えた村を手伝った部隊には、りゅうびのライブの最前列チケットを出す、と言ったのが功を奏したようだ

 

 りゅうびには、かんうさんを中心とした護衛を連れて、再び領内を巡ってもらっている

 この話をするとき、最初俺はりゅうびに断られると思っていたのだが、二つ返事で了解してもらった

 たぶんりゅうびなりに、自分が出来ることを考えていたんだろう

 既に、春にりゅうびのライブをすることも決定している

 

 今、小沛は最高に盛り上がりを見せている

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