第三十九話 集計結果
ここ小沛で行われるりゅうびのライブも二回目を無事終了させることができた
一日10公演を30日間ぶっ通しで行われたライブは多くの人達に感動と満足感を与えた
ライブの主役であるりゅうびはほとんど寝ることもできず、その日の最終公演のステージの幕が締まるまで必死に観客たちに笑顔と元気を振りまいていたらしい
まぁ、最後の方は公演が終わるとともにへたりこんでいたらしいし、三日前の最終日にはブッ倒れてそのまま一日ずっと眠りっぱなしだった
かんうさんの立てたスケジュール表をちらっと見せてもらったが、すごいハードスケジュールだったからな、公演前に俺の部屋に逃げ込んできて以来、この一ヶ月まともにあいつの顔を見ていない
まぁ、俺の方も金の工面でそれどころじゃなかったからな
しかし、それも今週でおしまいだ
俺たちが小沛に来て約半年、今週が年に一回の住民たちの納税期間である
一週間にしている理由は、手続きが時間がかかることもあるが、日付を一日にまとめてしまうと強奪されたり、問題が起きた時に対処する時間がない、休みが合わないなど諸般の事情があるため、例年一週間の間に、各村、各町にいる代表者、もしくは太守管轄の納税窓口に税を収めることになっている
今年も、同様の手法をそのまま流用させてもらった
ただし、今年は人口が以上に増大したことと、定住期間にばらつきがあり、納税額にも差を出しているため、りゅうび軍の面々にも納税に協力してもらっている
かんうさんとちょうひさんには交代で、税を収める倉庫の警備を頼み、りゅうびは山田達や俺と今後の予算の会議を一昨日からやっている
予算会議は、簡単に言ってしまえば、今後一年間の小沛の税金の使い方について決める会議である
俺が国内整備を進めたせいで、全体のほとんどは工事費の補填分のに当てられた
その他、領地の人口が増え発展したために発生する、警備兵や事務員などの人件費、施設の維持費などの増額する案件がいくつか
交際費や不要な品物の購入費など多くの無駄の削減案などいくつか懸念事項はあったので、全て資料にまとめ一つ一つ話し合った
最初はやまだ達も色々と不満は訴えていたが、40時間程連続で会議をしてやったらだいぶ折れてくれた
交渉はやはり粘り強さが大切だと学んだとても有意義な会議だった
その後も、細かいところは詰める必要があるので、現在適度に休憩を挟みながら会議をしている
そして、二週間後
ついにこの日が来た
三日前までに、倉庫に今年納税された全てが集められた
その後、夜通しで集計を行い、今日ついに集計結果が俺のもとにやってきた
既に予想額は計算されていたので、おおよその額は検討がついているのだが、それでも俺は眠れない夜が続いた
なんせ、今の小沛には凄まじい借金があるからな
税がちゃんと集まるかよりも、ちゃんと借金が返せるのかが俺には心配でしょうがなかった
工事費もそうだが、その頭金のために作った債権も返さなければならならない
もし滞おるようなことがあれば、俺の命で償いきれるものではない
まず、小沛は金が回らなくなり、郡は瓦解
そして債権の不履行により、りゅうびの信用は地に落ち、復権は望めなくなる
俺は意を決して集計結果に目を通す
そこに書かれていた数字は、そこには想定額をはるかに超える金額が表示されていた
ざっと予想の1.5倍
俺は一瞬目を疑った、あまりのズレに計算が間違えているんじゃないか
もしかしたら、一桁少ないんじゃないか
しかし、何度見返しても少ないなんてことはなかった
詳細を上からチェックしているとその理由がはっきりした
商人達からの徴収項目が、凄まじいことになっていたのである
収穫を終えた農民たちが、今年は税が低くなったために例年よりも多くの食料を売却できたこと
りゅうびのライブ中の観客達の消費
商人同士の取引額の増大
増えた住民たちによる、家財道具や生活必需品の大量購入など
増加要因は考えればきりがないが、何よりもそれだけの収入を上げた商人たちがしっかりと売上を報告し、税を納めたことがこの結果につながっているのだろう
ライブや道路などのインフラの整備など俺たちが行ってきた地道な改革が、商人たちの信頼につながったのであろう
他にも、各項目で想定よりも税収多い
この世界の税制度はまだまだ未発達なところが多く、税の納付漏れが結構あったり、うまく脱税されたりと抜け道がいくつも存在していた
そのため、推定税収もそれに合わせて少し少なめに見積もっていたことも、今回の嬉しい予想の裏切り方をされた要因だった
俺は直ちに工事の取りまとめ業者を呼び進行に見合った工費や、既に支払いを待ってもらっていた商人たちに滞納分を支払った
その他、予算会議で計画した通りに、各部署に必要経費をまとめて渡した
そして、それでも余ったお金にニヤニヤしながら、今後の計画をねるのであった




