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なんちゃって三国志(旧)  作者: 北神悠
3章 小沛太守補佐
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第三十三話 りゅうびの魅力

「なあ、あんなこと言ってよかったのか?」

 りゅうびがいつになく心配そうな視線で俺を見つめてくる


「ああ、税のことか、あれなら問題ない」


 税制改革の大枠を話したあと、太守のやまだを始め、横領をしていた役人たちには残っている着服した金の返却と贅沢品や嗜好品の売却を命じた

 りゅうびの魅力の力があるので逃亡なんてことはないと思うが、一応既に下級役人や召使たち、外の警備兵なんかは昨日のうちに味方につけてある

 やまだ達は随分と横暴を働き、彼らを虐げてきたようで、税金の話をしたら、ほとんど全員二つ返事で俺たちの味方になってくれた

 そのため、もし逃亡者がいても即刻捕まえて、ここまで引きずってきてもらうように手はずは整っている

 また、ちょううん達には太守の館の無駄な調度品や美術品を回収して売り払うように頼んだため、今この部屋には俺とりゅうびのふたりっきりである

 

「さっきも言ったとおり、支出はかなり減らせられるからな、まあ他にもアイデアはあるし、無理な話じゃない。それにお前は住民が苦しんでるとこ見たくないだろ」


「それはもちろんだが……」


「りゅうびが、極力人が死んだり苦しんだところを見たくないってことは、そんなに付き合いが長くない俺だってわかってるつもりだぜ」


「む」


「お前、戦いで人が死ぬたびに悲痛そうな顔をしてたもんな」


「……なあこーめー、あたしはやっぱり甘いのかな」

 自信なさげにりゅうびが問うてくる


「ああ、すっげえ甘いと思うぞ」


「っ」


「けどさ、そんなお前だからみんな付いてきてるんじゃないか」


「……」


「俺だって、最初は元の世界に帰るためにお前の提案を受けてただ付いてきただけだ。でも今はお前が立派な君主になるまでは、お前の傍で一緒にやっていきたいと思っている」


 確かにりゅうびの魅力の力は凄い、でも俺はそんな力だけじゃないと思ってる

 だってそうだろ、自分は自分の能力のおかげで好かれてるなんて悲しすぎる

 豪を攻める時に、誰も死なない策ってわかったあとのりゅうびのはしゃぎようは俺は忘れない

 こいつは口では偉そうになんだかんだ言うし、態度はでかいけど、本当は俺たち一人ひとりを大切に思ってくれてることはこれまで一緒に戦ってきて痛いほど伝わってきてる


 あくまでりゅうびの力は、りゅうびの本当の魅力を知るきっかけに過ぎないと俺は考えている。現に俺やちょうひさんはりゅうびの信者(ロリコン)じゃないが、こうしてりゅうびに仕えている


「だから、今のままのお前でいいんじゃないかと俺は思うぞ」


「……ありがと」

 りゅうびは小さい声でぼそっと漏らす


「ん? なんか言ったか?」


「う、お、お前はもっと策を出してあたしを支えろって言ったんだ。だいたいこーめーはいつもいつもいつも、策の全体像は教えないで、あたしたちを驚かして、全く人が悪い」


 りゅうびをフォローしたつもりなのに、何故か俺が怒られた




「で、具体的にどうするのだ?」


「やっぱり全部説明しなきゃダメか?」


「もちろん、主であるあたしが知らないのに、お前が一人でしたり顔決め込んでるのはむかつくからな」


「わかったよ」

 なんか地雷踏んだ気がするな

 まぁ、どうせりゅうびには頑張ってもらうわけだし、後で全て披露する楽しみがなくなるのは辛いが説明してやるか


 現状、このまま35%に税率を下げた場合、間違いなく小沛は干からびる

 しかしな、今年に限って言えばやまだ達からせしめた現金と、鶏巾族討伐の報奨金が俺たちにはある

 それを使えば、領内の改革に乗り出す資金は十分だ


 だが、それは今年だけの話。今後も小沛を運営するには最低でも50%以上の税率が必要になる


「それでは、だめではないか」


 ああ、普通はそう考える

 しかし、小沛にはたくさんの金脈が眠っている


「おお、金が出るのか。それなら一気に大金持ちだな」


 いや、さすがに金鉱石は出ない

 というかそんなものがあるなら、間違いなくほかの権力にまみれた連中にこの場所を奪われている

 そうじゃなくて、隠された資源があるということだ


 まずは、この辺にはかなり多くの盗賊がいる

 しかし、彼らの多くは元農民

 言ってる意味わかるか?


「えっと、農業ができなくなったから盗賊になったということか」


 ああ、そうだ

 増え方を見るに、間違いなく税率を高めたのが原因だろう

 だから、税率を下げれば彼らは農民に戻すことが可能だ

 というか、お前が説得してきてほしい


「わかった、それは頑張るが、そんなに効果が出るのか?」


 ああ、もちろん

 盗賊が農民になればまず税収が増える

 それに、盗賊被害が減れば、それだけ他の者たちの収入が増えるし、盗賊の警備に回している支出も抑えることが可能と一石三鳥の手だ


 これが、俺がりゅうびに頼みたい策だ


「ということは、他にもあるのか」


「それはほら、わかってからのお楽しみっていう」


「話せ」


「いや、だが、こういうのは後で種明かしするのが」


「あたしと寝たことを、かんうにばらす」


「ちょっ、おまっ、それズルくねえか」


「言うのか、死ぬのかどっちだ?」


「ちっ、わかったよ」


 りゅうびはすっかり復活したようで、いつもの黒い笑顔を浮かべていた

 まぁ、これで良かったのか

 しかし、種明かしは軍師の楽しみだっていうのに、なんていうあくどい手を使うんだこいつは

 

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