第三話 鶏は世界を征する
俺は目を見開らいた
ここは、三国志の世界だっていうのか
いやしかし、それにしてはりゅーびが女なのはおかしい
着ている服や装備にも違和感がある
まるで、漫画の世界にでも来たみたいだ
「ねぇねぇ、りゅうちゃん、この男の子は誰? 」
「ああ、ちょうひ、こいつは今日からあたしの軍師になったこーめーだ」
「りゅうび様の軍師ですか、こんなうさんくさそうな小僧がですか」
「なんだかんう、あたしの人選が不満か」
「いえ、そんなことはありませんが」
ちょうひと呼ばれた女性は、まだ幼い顔立ちがのこるものの、大人の女性の雰囲気をかもし出している
特に武器と見れるものは持っておらず、ひらひらした動きやすそうな服をまとていた
一方で、かんうと呼ばれた青年は人懐っこそうな顔立ちの好青年で、身長が高く大きな薙刀のような武器を持っていた
ちょうひは、俺の手を取り
よろしくねと優しそうに微笑みながら言ってきた
「ああ、よ、よろしく」
女の人の手って柔らかいなぁ
「なんだこーめー、ちょうひに惚れたのか? 」
ニヤニヤとりゅうびが言ってくる
「ちっ、ちがう、っておまえ、俺のことからかってんだろ」
「きさま、りゅうび様になんて無礼な口をきいているんだ!」
ひぃっ!
かんうが持っていた薙刀を俺の首筋に当てる
「やめろかんう! こーめーの言葉遣いはいい。みんなあたしに敬語だからな、こんな奴がいても面白い」
「しかしりゅうび様」
「うるさい、それに武器をしまえ」
「はっ」
かんうはしぶしぶと武器をしまい、俺から離れる
その後、りゅーびとの出会いを話している間に17回ほど殺されそうになったが、なんとか受け入れてもらえた
まじで、生きてて良かった
未だに、かんうさんは俺を生ゴミでも見るかのような目で見ているけど、気にしないでおこう
「で、りゅうび、具体的に俺らはこれからどうするんだ」
「ああ、そうだったな、あたしたちはこれからこの大陸でおきている大規模な農民の反乱を鎮圧しに行くんだ」
農民の反乱?
もしかして、三国志の始まりである黄巾の乱のことか
「その農民の反乱て、黄色の被り物をした農民たちが各地で武装蜂起している奴か? 」
「こーめー何を言ってるんだ? 彼らは確かに被り物をしているが、黄色じゃないぞ」
「小僧、知ったかぶりをするんじゃない」
「しかし、ちょうかくってやつが太平道っていう宗教を使って、農民たちを扇動して反乱を起こさせてるんじゃないのか?
「あのですねー、こーめーさん、ちょうかくって人が首謀者ってことはあってんですが、彼らは鶏さんの被り物をしてるんですよ」
「は? 」
「今、大陸では食糧難が続いていてな、いよいよ食べるものがなくなってきて、皇帝が大陸全土の鶏を焼き鳥にして飢えをしのげとお触れを出してな、それをきっかけに鶏を心から愛するチキンラブな連中が大陸各地で大々的なデモ活動を行い……なぜか多くの農民の心に響いたらしく、気づけば鶏=神になってしまったんだ」
りゅうびがため息をつく
「まぁ、それもちょっとおかしな宗教でとどまってくれればよかったんだがな、彼らの考えに乗っかるあくどい連中が現れだし、三つの派閥を生み出してしまったんだ、一つはもともとの純粋に鶏を崇めるだけのグループ、こいつらは特に問題がない」
「二つ目が、鶏を言い分に無法を働くグループ、鶏が神なんだから、領主や皇帝に従わないといった連中、最後に三つ目だが、鶏が収める世の中鶏天の世をつくろうと皇帝に反旗を翻したグループだ」
「で、これから相手にするのはどのグループなんだ」
「もちろん三つ目の鶏天の世を作るなんて世迷い事を言ってる連中だ」
「無法を働いてるやつらはいいのか? 」
「あいつらは、結局反抗する大義名分が欲しい盗賊崩れだからな、領主にでも任せておけばいいのだ」
「ん、そういや、りゅうびは領主じゃないのか? 皇帝の末裔とか言ってたし」
「ふんっ、あたしは今はただの義勇軍の棟梁でしかない」
「その割には、みんな結構いい装備してると思うんだが」
「ああ、それはあたしにはスポンサーがいるからな」
「スポンサーか、それはすごいな」
「あたしの美貌にかかればそれくらい余裕だ」
りゅうびがいつものない胸を張るポーズをとる
「さすがりゅうび様です、私も劉好団の隊長として喜ばしいです」
かんうさんの言葉を皮切りに兵士たちから歓声が上がる
かんうさん、りゅーびをやたら崇め倒してるな
やはり義兄弟だからなのか?
というか、劉好団とはなんなんだ
「かんうさん、劉好団ってなんですか」
俺は恐る恐るかんうさんに聞いてみた