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なんちゃって三国志(旧)  作者: 北神悠
2章 覇王降臨
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第二十八話 帰還解散、手は粉々

「そうそう様、お帰りなさいませ。向こうはどうでしたか?」


 すうせい軍の本陣から帰ってきたそうそうを見つけると、かこうえんが落ち着いた所作で近寄り、そうそうの外套を受け取りながら声をかける


「ふん、中々だったぞ。実際に戦っていたやつには会えなかったが、あるじと軍師に関してはすぐにでもオレの側近にしたいレベルだ」


「そうそう様がそこまでおっしゃられるのは珍しいですね」


「まぁ、断られたがな」


「しかし、そうそうにい、良かったんですか、すうせい将軍の心象もだいぶ悪くしてしまったようですし」


「それは問題ない、すうせいの奴は確かに現在の腐敗した皇帝のしたにいる人間にしてはそこそこの人材だが、それでも所詮は凡人の域は出ない」


「いや、そういうことじゃなくて」


「わかってるよ、敵を増やすなってことだろ。だが心配するな、オレの計画は既にすうせい位敵に回したとこで揺るがん」


 そうじんは諦めたように深くため息をついた


「なんだ、そうじん言いたいことがあるならはっきりしろよ。っと、そんなことよりも、かこうとんは帰ってきたか?」


「はい、お姉ちゃんは血を洗い落とすと言って少し前に自分の天幕に戻ったので、もうすぐ、あっ」


「ん、そうそう、だいぶ早く帰ってきたのね」


 先ほどの重厚な黒い騎士姿とは打って変わって、革製の簡素な鎧姿の赤髪の少女かこうとんが後ろから声をかけてきた

 あいかわらず馬鹿でかい大剣は背中に背負ったままである


「さっきはよくやったな」


 かこうとんの姿を確認したそうそうは、開口一番彼女をねぎらった

 そうそうの、言葉にかこうとんは照れたように笑う


「んで、これからあたしたちはどうすんの?」


「とりあえず高蓮砦こうれんとりで落としたからな、とりあえずいっかいオレの領地に帰る」


「残っている残党兵は駆逐しないのですか?」


「ああ、今は兵士一人でも惜しいからな、次の獲物が見つかるまでは内を固めることに力を注ぎたい」


「じゃあそうそう兄、一旦帰還するということで作戦をねってきますね」


 そう言うと、そうじんは走って行ってしまった


「相変わらずそうじんは真面目だよね」


「お前もてつだってやれよ」


「いやぁ、あたしは戦い専門だから」


「おまえなぁ」


「そういうそうそうだって、結構裏方押し付けてるじゃん」


「オレはいいんだよ、なんせ一番偉いからな」


「ぶー」


「はぁ、二人共くだらない言い争いはそこら辺にして、準備をしてください。そうそう様がいないと兵達は安心して動けませんし、お姉ちゃんは自分の部隊くらいはまとめてこれるでしょう」


 そこには、有無を言わせないかこうえんの笑顔があった




 そうそう軍がそんなやりとりをしている頃、りゅうび軍は幹部を集めて今後の方針を話し合っていた


「えっと、それじゃあわたしたちは一回解散するんですか」


 とりあえず大きな戦で戦果を上げた

 敵将の首は取れなかったが、それでも砦の攻略や見張り用陣地の占拠、野戦の援護と俺たちはそこそこの活躍をした

 それこそ、通常の義勇兵ではありえないほどの大きな成果である

 また、すうせい将軍の推薦も受けられそうなので、俺たちは一旦初期のメンバーを除いて、ほとんどの義勇兵を一回故郷に帰そうという結論になった

 一度は、りゅうびに忠誠を誓った連中ではあるが、今後も力を貸してもらう上でも、一旦家族や友人に合わせないままずるずると戦争に巻き込むのは忍びない


 また、別の理由もあって、これはりゅうびにすら明かしていないが、ひとつの実験もかねようと思っている

 それは、りゅうびの人を引き付ける力の持続性である

 俺たちはこれまで、士気を上げるために要所要所でりゅうびの魅力をすり込んでいった

 だからこそ、ここまで乱れることなく結束してここまで戦ってこれた

 しかし、今後りゅうびが自分の勢力を広げていくのであれば、りゅうびの軍師としてりゅうびの力を把握するのは大切なことである

 

 どちらにせよ、りゅうびがどこかの職に就くにも3000人以上の私兵を持ったままでいるのは良くない

 中央の印象も悪くなるだろうし、維持する費用もない現状では解散は必然であった


「ちょううんも、一回故郷に帰っていいぞ。俺の護衛は……」


「いえ、私はこーめー様の護衛として残ります」


「いや、でも」


「こーめー様にお仕えすると誓ったときに、そういった未練は全てなくしました」


「お金も」


「私はこーめー様のお側に居させてもらえれば、ほかには何もいりません」


 ちょううんは澄んだ黒い瞳でまっすぐ俺を見つめてくる

 そんな目で見られてしまえば、俺は何も言えなかった


「わかった。すまないけど、これからもよろしく」


 俺が手を差し出すと、ちょううんは嬉しそうに微笑み、俺の手をギュッと力強く握り返してくれた

 この信頼を裏切らないようにがんばらないとな

 しかし、小柄な見た目に油断していたが、ちょううんは戦場で鬼神の如きの強さを誇る武人だった

 マジで手が砕けるかと思った

 不用意に握手をするのはシャレにならねえ


「それで、こーめーあたしたちはどうすんだ?」


「もちろん、すうせい将軍について首都長安に行く」


「しかし小僧いくら人数を減らしたとは言え、我々は長安に滞在出来るだけの金はないぞ」


「そこらへんは大丈夫です。既にすうせい将軍にお願いしてありますし、実際長安には俺とりゅうび、護衛に何人かのみしか行きません。それ以外の人達はいくつか調べ物をしてもらいます」


「調べ物?」


 全員の疑問をりゅうびが代表して聞いてくる


「はい、今後のりゅうび軍の方針を決めるのもとっても必要なことです」


 そう言って、オレは主要な諸侯の分布が書き込まれた地図をみんなの前に広げた

 

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