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なんちゃって三国志(旧)  作者: 北神悠
2章 覇王降臨
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第二十五話 そうそうの決断

「そういえば、戦ってる時はあまり気になんなかったが、お前臭くね」


「なっ」


 そう言って、かこうとんは自分の服を引っ張り上げてすんすんと匂いを嗅ぎ、顔をしかめた

 さっきまでオレの隣にいたかこうえんは既に何歩か後ずさりしていた


「なぁ、風呂入ったのいつだよ」


「えーと、一週間前に水浴びしたのが最後だったかな」


「お姉ちゃんはいつもなかなか水浴びしてくれないんです」


 鼻をつまみながら、かこうえんが訴えてくる


「おい、そうじん、縄と布」


「えっ、は、はい」


 そうじんはどこからともなく縄と布を持ってきて

 全員で暴れるかこうとんを布で巻いて、ぐるぐるにふんじばった


「さて、それじゃあオレの屋敷に行くか」


「あの、本当にいいんですか?」


 かこうえんが遠慮しがちにオレを見上げてくる

 姉と違って随分と礼儀正しいんだな

 ちなみにその姉はそうそうの馬の後ろにくくりつけられて、むーむー言っている


「ああ、構わん。お前たちはオレの仲間だからな」


 オレが自信満々に言ってやると、かこうえんの顔に笑顔が灯り何度も頭を下げて礼を言われた

 ああ、勇者ってのも悪くないなと思ったのはオレだけの秘密だ

 その後、暗くなるのを待って、街の住人に見つからないように俺の屋敷に戻った


 もちろん、帰るなり全員で風呂にかこうとんを放り投げたのは言うまでもない

 沈んだまま浮かんでこなかった時はさすがにびびったが、とりあえずかこうえんたちの協力もあり、彼女は綺麗になった

 小声で、これから風呂は3日一度は入ろうとかなんとか甘いことを言っていたので、十回ほど風呂に沈めたら、毎日風呂に入る大切さを分かってくれたらしい

 そして、彼女が着ていた服一式はもはや災害物質だったので、気に入らない貴族の屋敷に放り投げといた

 その後、その貴族の家は更地になり、彼がどうなったのかは知らない



「それで、そうそう、これからあたしたちは何をすればいいんだ?」


 先程まで風呂怖いとか端の方でうなされていたかこうとんが聞いてくる

 彼女は結構立ち直りが早いようだ、馬鹿なのかもしれないが


「ああ、今のところ何かする必要はないぞ。まぁ、この屋敷は幸いオレ専用に建てられたものだから、誰かの目を気にする必用はないし、オレは目標も見つかったからな」


「目標ですか?」


 かこうえんが遠慮がちに聞いてくる


「オレは官僚になろうと思う」


「ええ、そうそうにい官僚なんてあんなつまんない仕事絶対就くかって言ってたのに」


 そうじんが驚いたように声を上げる

 まぁ、そう言うのもわからなくもないがな

 実際、オレはついこの間まで権力とかに興味なかったし、俺より優れている奴なんていないと思ってたからな


「オレだって考えが変わることだってあるんだ、オレは勇者になるからな、その為には力が必要だろ」


 オレはニヤリと笑う


「おお、なんだか知らんが、そうそうが悪役に見える」


「お姉ちゃん、そんなことを言ってはダメですよ」


「で、偉くなってどうするんだ、そうそう兄?」


「はっ、そうじんわかんねえのかよ、オレはこの国を変えるって言ってんだ。まずは実績と能力のあるやついっぱい集めないと何にもならないだろ。今日かこうとんと戦って思ったが、オレ一人の力じゃ生きてるうちには無理そうだしな」


「そうか、じゃああたしは剣でそうそうの力になってやるわ。弓での援護は任せたわよ、かこうえん」


「うん、お姉ちゃん」


 かこう姉妹は二人で頷き合う


「そうじん、何ぼーっとしてるんだ、お前も俺の力になるんだよ」


「えっ、僕も仲間に入ってるの」


「何言ってんだよ、当たり前だろ、この中でオレ以外に今のところちゃんとした役職もらえそうなのはそうじんだけだからな」


「えぇ!」


「お前の腕には期待してるぞ」


「わかったよ、こういう時のそうそう兄の押しは断れないんだよな」


 そうじんも、観念したように頷く


「まずは、オレがそこそこ出世して、かこうとんやかこうえん達を雇えるようになるまでは、オレの屋敷の専属従者にでもしておくから、屋敷の中では自由にしていていいぞ。お前の部下にもそういうふうに伝えておけ」


「くっ、すまないそうそう、あたしは物を壊すことしかできないからな役にたてなくて」


 かこうとんが悔しそうにうつむ


「なに、しゅんとしてるんだよ。いずれお前の力を存分に発揮してもらうから、頼むぞかこうとん」


「ああ、任せておけ」


 かこうとんは、ぱっと顔に笑顔を咲かせて、素振りをしてくるといって愛用の大剣を持って外に出ていってしまった


「すみません、そうそう様。姉はそそっかしいもので」


「別に構わないさ、それに、かこうえん、俺がかわせないような矢を打てるお前の腕も期待してるぞ」


「は、はいっ」


 かこうえんは深々と頭を下げて、かこうとんを追っていった


「ところで、そうそう兄、気になってたんだけど、結局そうそう兄の言う勇者って何するの?」


「はっ、そんなの決まってるだろ、頑張ってる奴を笑顔にする世の中を作る奴のことさ」


「それって、勇者ちゅうおうの冒険のちゅうおうの台詞せりふそのまんまなんじゃ……」


「うるせぇ!」


 そう怒鳴るそうそうの顔は、少しだけはにかんだようで、気恥かしそうで、それでいて誇らしげなものだった






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