第二十三話 干からびてたのはわざとだし
彼の名前はそうそう
祖父も父も、皇帝に仕える高官であった
そんな一族の下に生まれたそうそうは、幼少の頃より高度な教育を受けさせられた
将来彼も皇帝に仕える官僚として出世することが、生まれた時より定められた運命であった
生まれてより、数年が経過し、中央の将来高級官僚になるべく学問を教える学校に入学させられた
そこで、彼は日夜厳しい監視の下勉学に勤しんだ
その頃のそうそうは、既に自分が官僚になると期待されていることに気づいていたし、特に自分の進む道に関して疑問を持っていなかった
彼自身、日々自分の知らない世界を学ぶことを楽しんでさえいた
そう、この時までは
さらに数年後、12歳になったそうそうは、才能に溺れず努力を重ねた来たため、高度な教育を受けた高級官僚の子弟の中においても、一際異彩を放っていた
自分よりもいくつも上の世代を含めても、彼に敵う知識の持ち主はいなかった
教師ですら、そうそうに教えを請うことすらあった
このころから彼は世界に対する興味を徐々に失っていった
そして、その半年後学ぶことはないと言い、学校をやめた
そうそうの家族は最初こそ難色を示したが、既にそうそうに教えを施せる人材が学校にいないことも知っていたので、個別に家庭教師を雇い、家で学ぶことに最終的に賛成した
家庭教師が来るようになり、一時的には彼の興味を湧きあがらせたが、どんな高名な者を招いても一ヶ月として彼に教え続けられる人物はいなかった
学校の外にさえ自分を満たすものがないと悟ったそうそうは、人生にも世界にも絶望していた
そんな時だった、彼があの本を見つけたのは
『勇者 ちゅうおうの冒険』
今から、何百年か前にいた殷という国の王様の話であった
要約すると、生まれながらにして凄まじい力を持ったちゅうおうが、その力で仲間と共に世界を統一するお話であった
これを読んだそうそうは、大きな衝撃を受けた
彼は今まで力を蓄えることしかしてこなかった
しかし、蓄えた力は使うもの
溜め込むだけじゃあ楽しいわけがない
誰もが普通なら気づくものだが、なんでもすぐに習得できてしまうそうそうには、斬新なものであった
そして、この気づきが彼の覇王としての才能を開花させてしまった
その後、そうそうは冒険譚にはまってしまい、ミイラになる寸前まで読んでいたところを従者に発見されて、あわや死にかけていたことは秘密である
そうそうが、自らの力を使う方法を模索し始めた頃、この近辺で暴れまわっている悪童がいるという噂が耳に入った
その話を聞いたそうそうはめがキュピーンと光った
彼は「俺の冒険はここから始まる」と言って街へ飛び出していった
これが、この後大陸で三大勢力の一角を担うそうそうの幼少期の話である
ちなみに、『勇者 ちゅうおうの冒険』は三流小説家がギャグで書いた駄小説だったらしい




