第二十二話 第二の英雄
オレにはできないことがなかった
言い方が違うな
オレは目的のために出来ないことはなかった
親は中央で重要な役職に付き
身の回りの世話は従者が全てやってくれた
学問も武術も望めばなんでも学ぶことができた
オレは14歳でこの世に飽きた
つまらねえ
わくわくしねえ
勉強も
武術も
最初は楽しかった
オレに教える連中も、最初はオレの成長具合に喜んだ
しかし、いつもオレはそんな連中よりもできるようになり
最終的にはオレに恐れをなして逃げちまう
つまらなかった
なぜオレはこんな世界に生まれたのだろう
嫌な夢を見た
最も退屈だったあの頃の夢だ
7年たった今でもたまに見る
本当に最悪だ
「キャプテン!」
「おお、見えてきたか」
オレは愛車の駄悪炎屁羅亜号の窓から外を覗いた
そこには、斥候の情報の通り、鶏巾族どもの拠点の一つ、高蓮砦がしっかりと見えた
「オレ様の騎士をここに呼べ」
近くにいる兵士が、前方の方に慌てて駆けていく
しばらくすると、禍々(まがまが)しい大剣を携えた完全武装の黒騎士が真っ黒の巨馬を駆りやってきた
「お呼びですかキャプテン」
「お前なら何人であそこの砦を落とせる」
「我がブラックサンダー騎士団1000騎で十分です。ほかの兵の手を煩わせる必要はありません」
「そうか、じゃあオレ様は明日の昼にはあの砦の見張り台の上に茶を飲みに行くぞ」
「掃除をしてお待ちしております」
黒騎士はそう深々と頭を下げると、もと来た方へ馬をとばしていってしまった
ああ、今は間違いなくオレは充実している
目指すは世界最強だ




