第二十一話 アイドルに鳥が勝てるわけがない
俺たちの活躍(主に俺以外)により、高蓮砦攻撃に関して、後顧の憂であった豪の攻略が完了した
さて、あとは仕上げだけか
通常なら、行軍中に、しかもこれから重要な戦の前に捕虜という存在は、重要な幹部を人質にすることや、肉の壁として矢面に立たせるなどの一部特殊な運用方法使わない限り、正直足でまとい以外の何者でもない
その上、自身の補給経路を持たない俺たちが、自分達の半分よりも多い数の人間を捕虜にするのは無理な相談であった
「と、普通はこう考えるのが常識だ」
こーめーは、不敵に笑う
「こーめー様、何かいい策があるんですか」
ちょううんが期待を込めた目で見つめてくる
ちなみに、遠目に棒が半分以上めり込んだ鐘が見えるがきっと見間違えだろう
こんなに純粋に見つめてくるいい子が、あんな歪なオブジェを作るわけがない
ああ、そうだ、きっと気のせいだ、鐘を鳴らしたのはちょううんらしいが
それも、なぜか三回で終わったが
絶対違う
そんなことを考えながら、ちょううんを見つめてると、首をかしげて不思議そうに見つめ返してくる
ああ、すさんだ戦場で心が洗われるようだ
おっと、今はそんなことをしている時ではない
俺は、改めてりゅうびに視線を送る
やってこいと
彼女は、自信満々に頷き、親指をぐっと上に立てると、捕虜たちの方へ向かった
なんと勇ましい姿だろうか
かんうさんも意を酌んだのだろう、ハートの中心にデフォルメされたりゅうびの絵が背中に書かれているハッピに袖を通していた
会員の人たちも同じハッピを着だしていた
どっから出したのだろう
変態の考えることはわからない
まぁ、そっとしておいてやろう
その後、ちょううんにはすうせい将軍に使いに出てもらった
うまくいったことを報告しなくてはならない
ちょううんに手紙を渡し、見送る
小一時間後、りゅうびと2000人のりゅうび軍の兵士とともに、りゅうびに熱狂をあげている元鶏巾族の兵士たちがいた
所詮鳥類が、我が軍の最終決戦兵器、偶像には勝てなかったようだ
彼らが被っていた鶏の被り物は無残にも、そこらへんに投げやられていた
義勇兵を集めた時もそうだが、こんなにうまくいくとは
どれだけ飢えているんだこの世界は
この勢いで行けば、戦わなくても世界を取れるんではないだろうか
その間ちょうひさんは、ずっと背中に重りを乗せて腕立てをしていた
乗ってる重りも遠目で見ても余裕で100キロはあるだろう岩石の塊である
それを背負いながら、見た目はおっとりそうなメガネの巨乳美人が腕立てしているのである
シュールすぎて全く声がかけられない
まぁ、放っておこう、俺はナニモミテイナイ
ジャンケンで負けた、りゅうび軍の兵士は、この世の終わりのような顔をしながら、片付けと次の準備をしていた
終わったら、向こうに参加してもいいというと、ゴキブリもびっくりの機動力を見せて、100人しかいないのに3000人以上の準備を終え、いつでも出発できるようになった
ちなみに、むこうのライブはオールナイトに突入しそうだ
りゅうびコールが衰える気配がない
しかし一体何をやっているのだろう
見たい気もするが、踏み入れてはいけない領域な気がして踏みとどまる
「こーめー様!」
そんな折、すうせい将軍に使いとして出していたちょううんが戻ってくる
ああ、やっと帰ってきてくれた、俺の常識成分が
すうせい将軍からの返答内容は、いたってシンプルで、このまま進軍し、高蓮砦の前で合流だそうだ
俺は、りゅうびを止めに行った
ちょううんとちょうひさんという最強の護衛をつけて
ちょうひさんにはものすごく話しかけずらかったが、俺の命には変えられない
軟弱者と思うかもしれないが、トリップした3000人を俺一人でどうしろというのだ
護衛の二人のおかげで、なんとか劉備の下までたどり着き、ライブを止めた
もちろん、10回くらい死にそうになったが
それも、8割くらいはかんうさんの手によって
あんたりゅうび軍の幹部だろ
自重しろよ
と、面と向かって言ったら殺されそうなので、心で呟いた
兵数を増やし、しかも高蓮砦の情報も手に入れた
なんせ、隊長格まで今やりゅうびに骨抜きだからな
今後の作戦も立てやすい
次の日の早朝、俺たちは、すうせい将軍と合流し、いよいよ明日は、高蓮砦攻略戦だ




