第十八話 私のセリフはないのかbyかんう
りゅうえんのとこを出発して二日、俺たちはとりあえず南を目指すことにした
南で起きている、鶏巾族を討伐するためである
そして、なんとか活躍して、りゅうびをどっかの官職に着けることである
一昨日の戦いのおかげで、ある程度の食料などは手に入れることができたが、今後もりゅうび軍として活躍していくには、定住できる土地と2000人を養えるだけの収入が必要である
かんうさんやこうそんさんさんの話によれば、乱世のため戦で功績を上げれば、りゅうびのような少女でも役職はもらえるらしい
俺たちには、一騎当千の武将が三人もいる上、激戦を乗り越えた2000人の兵士もいる
うまく敵と当たれば、功績も充分立てられる
「りゅうび様、遠くの方で土煙が上がっています」
「なんだと、どっちの方だ? 」
「あの山の麓です」
兵士の指す方を見ると、うっすらとではあるが土煙が上がっていた
「こーめー、どうする」
「もちろん行ってみるさ。ちょううん、何騎か斥候を連れ先行して、様子を見てきてくれ」
「はい、こーめー様」
そう言うと、ちょううんは槍を構え直し、斥候を率いてあっという間に土煙の方に消えていった
「随分と、懐いたもんだな」
りゅうびが、ニヤニヤと言ってくる
俺はそれを、適当にあしらいつつ、次の指示を出す
「かんうさんとちょうひさんは、前で全体を引っ張ってください。もしあそこで戦闘が起こっているなら、早く行くことに越したことはないですからね」
かんうさんとちょうひさんが前に出ると、りゅうび軍全体が駆け足となった
「こーめー、だいぶ軍師が板についてきたではないか」
「いや、やればやるほど、ああしとけばよかったって悔やむばかりだよ」
「ふん、だれかの上に立つとはそういうもんだ」
「なんだりゅうび、俺のことを慰めてくれるのか」
「なっ、ちがう、あたしは、その、ああ、もうめんどくさい、こーめーのばーかばーか」
「お前時々やたら精神年齢下がるよな」
「うっせ」
りゅうびはそう言うと、そっぽ向いてしまった
まぁ、こいつのおかげで俺はここまで生きてこれたわけだからな
しかし、ますます元の世界に帰りにくくなったな
いや、とりあえずりゅうびがちゃんとした役職につき、仲間を養えるようになるまでは一緒にいてもいいか
しっかりと、土煙が確認できるところまできたとこころで、斥候に出ていたちょううんが戻ってきた
「こーめー様!」
ちょううんは元気に手を振りながら、俺のもとまでやってきた
「報告します。現在、あの山の麓では鶏巾族と中央の軍が戦っている模様です。規模は鶏巾族3万、中央軍が2万といったところで、少し押され気味でした」
「中央の軍は大将は誰かわかったか」
「りゅうび様、申し訳ありません、戦闘が激しく遠目だったものでそこまではわかりませんでした」
「いや、これだけわかれば十分だ。ちょううん、ありがとな」
そういって俺は、ちょううんの頭を撫でてやると、彼女は嬉しそうに目を細めるのであった
「……ちぇ、なんだよちょううんばっかり」
「ん? りゅうび何か言ったか?」
「な、なんでもない。ほら、全軍助けに行くぞ!」
「「「うぉぉぉぉぉぉぉおおおおおお」」」
俺たちりゅうび軍の突然の横からの奇襲に鶏巾族軍は大混乱に陥り、息を吹き返した中央軍によって一気に潰走させられた
りゅうび軍はかんうさん・ちょうひさん・ちょううんの活躍もありほとんど被害も出さずに的に打撃を与えることができた
突然現れた俺たちに、最初は中央の軍も警戒をしていたが、鶏巾族軍を打ち破る頃には共闘し、戦いのあと部隊を再編していると、むこうの将軍がわざわざやってきた
「この軍の大将は誰だ?」
将軍の取り巻きが、大声でそう叫ぶ
「あたしが、この軍の大将りゅうびだ」
「おお、此度の戦、真に助かったぞ。我が軍は戦続きで、だいぶ疲弊していたからな」
将軍はそう言うと、馬から降りて礼をした
通常では、どこの誰かもわからない俺たちに、万の軍を率いる将軍が頭を下げるなんてありえない
この将軍は相当の器量の持ち主である
俺たちは、将軍と同じように馬から降りる
「いえいえ、われわれも鶏巾族討伐に思いを同じくして立ち上がった同志、当然のことをしたまでです」
俺は丁寧に将軍に応える
「そうか、それは心強い。そこで、提案なのですがりゅうび殿、我らはこの先の鶏巾族の砦を討伐に向かっているのだが、一緒に来てはいただけないだろうか」
「もちろん、一緒に戦わせてもらおう」
「私は、中央より鶏巾族討伐に任じられたすうせいと申す。りゅうび殿、こちらこそよろしく頼む」
りゅうびとすうせい将軍はがっちりと握手を交わす
一緒にりゅうび軍の幹部もすうせい将軍に挨拶をし、俺とりゅうびはすうせい将軍の天幕まで移動した
天幕に入る前、りゅうびが小声で俺に話しかけてくる
「こーめー、中々良い将軍に巡りあったな」
「だが、あまりにもすんなりしていて、なんだか拍子抜けだな、もっと上から偉そうに言われると思ったんだが」
「大丈夫、あの男はいいやつだ」
「また、お前のカンか」
「ああそうだ」
りゅうびはニヤリとわらって、天幕の中に入っていった
まぁ、あいつがそう言うなら問題ないだろうが、一応は警戒しておくか
気を引き締め直し、俺はりゅうびに続いて天幕の中に入っていった




