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なんちゃって三国志(旧)  作者: 北神悠
1章 伝説の始まり
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第十六話 策の全貌

 鶏巾族の本陣を陥落させた俺たちは、こうそんさん軍と合流して、負傷兵の応急処置や物資の確保など戦後処理をしていた


 こうそんさん軍とりゅうび軍の首脳部は、鶏巾族が使っていた天幕の内、最も損傷が少ないものを利用して仮の本陣としていた


「で、こーめー殿、今回の戦でどこまで予想していたのだ、それにいくつかに落ちない点がある」


「同感だな、さてあたしたちがなんで勝ったか説明してもらおうか」


 天幕の中で、俺はこうそんさんとりゅーびに詰め寄られた


 かんうさんやちょーひさん、それにこうそんさん軍の幕僚ばくりょう達も、口にこそ出さないものの無言のプレッシャーを送っていた


 俺は、最初から事の顛末てんまつを話した


 義勇兵をまとめた話


 動かずに、後ろから牽制けんせいしていた話


 機を見て、突撃を行った話


 ここまで話したところで、こうそんさんが唸った


「よくそこまで計画したな、まるで綱渡りのような作戦ではないか」


 こうそんさんのつぶやきは、至極最しごくもっとものことだった


 実際、いくつか対策は練っていたものの、失敗すれば全滅ということもいくらでもあった


 例えば、義勇兵がまとまらない、鶏巾族軍が俺たちの隊列に恐れずに突っ込んでくる、計算より早くこうそんさん軍が瓦解するなど、可能性を挙げればきりがない


 しかし、そもそも少ない兵数で敵と当たるというのは、絶対に無理がでる


 戦の基本は、相手よりも多くの兵を集めることである


「まぁ、ここまでは、大体想像もできるだろうし、知ってる連中もいるはずだ。たぶん聞きたいのは、そのあとの総力戦のとこだろ」


 ここまで、だいぶだらだらと語っていたが、誰ひとりふざける者はいなかった


「俺は、りゅうびにもこうそんさんさんにも出した指示は、連合軍の本隊が攻め上がるまでは、ただひたすら全力で戦い、本隊が攻め上がってきたら、端に寄り、隙間から本陣に攻め上がれといったものだった」


「そして、ちょうひさんに本陣に投石を行ってもらった」


「そう、そこだ、なぜそのあと鶏巾族軍は後退したのだ。ちょうひ殿の投石だけではとてもあのようなことが起きるとは考えにくい」


「ああ、その通りだ。俺はもう一つ、同時に策を打っていた」


 鶏巾族はわかりやすいくらいはっきりとした、縦組織たてそしきである


 しかも、被り物で序列じょれつを決めている


 俺は、昨日の会議の後、りゅうえんの狙いもわかっていた

 まぁ、状況やこうそんさん軍の配置を考えると、見え見えではあるがな


 だが、この戦いに勝利するには、どうしても連合軍本隊を引きずり出す必要があった


 そこで、奴らの被り物を利用させてもらたんだ


 まず、こうそんさん軍の撤退に合わせて突撃させたとき、何人かの兵に、途中の死体に紛れてもいらった


 鶏巾族軍は寄せ集めの集団だから、混乱している隙に、極力指揮官の被り物を探し、うまく潜り込むように指示を出した


 指揮官クラスも多くやられていただろうし、素人目にも指揮官の被り物がどれかもわかるからな


 特に、あの時は前線がぐちゃぐちゃで、所属もバラバラになっていただろうから、潜入は簡単だっただろう


 そして、そのあとすぐに、俺たちは総力戦に打って出た


 俺たちも、まとまりきれていなかったが、鶏巾族軍だって同じだ


 それに加え、投石というわかりやすい形での本陣への攻撃


 そこで、指揮官クラスが一度本陣の援護だ、下がれとか叫んだらどうなると思う


 ただでさえ、疲れはたまり、目の前の敵は強敵である

 下がりたくなるだろ

 しかも、上官が下がっていいと言ってんだからな


 結果として、鶏巾族軍は後退をしたというわけ


 そして、連合軍本陣はそれを、俺らが奮戦して押し返していると受け取ったわけだ


 後は、皆の見ていた通りだ


 そこまで、話し終えると、不思議な沈黙が起き、その場にいた全員が俺を見ていた


「こーめー、お前凄いな」


 と、りゅうびが言うのを皮切りに、皆が俺に対して賞賛の言葉をかけてくる


 俺が照れて、頭を掻いていると、突然天幕が空き、伝令兵が入ってくる


「お取り込み中失礼、こうそんさん殿、そしてりゅうび殿は直ちにりゅうえん様の元へ参じよ!」


 伝令はそれだけ叫ぶと、再び出て行ってしまった


「やはり、呼び出しか」


 こうそんさんが諦めたような口調で言う


 それもそうである、りゅうえんにしてみれば今回の戦いは、俺たちをダシにするはずが、自分が逆に俺たちの引き立て役になってしまったのである


 不問で済むはずがなかった


「むぅ」


 りゅうびも、難しい顔をしてうなっている


「大丈夫だりゅうび、頭を使うのは俺の仕事だ」


 そう言って励ましてやる


 この局面でりゅうえんのやってきそうなことなど、ある程度想像がつく


 俺は、かんうさんとちょうひさんに耳打ちをして、りゅうびと護衛を引き連れてりゅうえんのもとへ向かった


 さて、どうなることやら

    

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