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春の嵐
乾ききった冬の空に暗く立ち込める雲
頬を切り裂くような冷たい風は横殴りの雨粒へと変わる
草木は枯れた枝を必死に引きとめじっと我慢している
僕は降りしきる雨の中立ちすくみ
体を震わせるばかり
自分は何をしようとしているのだろう
どうしたら良いのだろう
冬の冷たい雨は容赦なく僕の体温を奪っていく
草木はなぜあんなにじっと我慢できるのだろう
そんなことを考えていると
心の奥底に仄かに光る蝋燭の火に気が付いた
そうか、そうなんだ
みんな春が来ることを知っているんだ
あの蝋燭の火は春の暖かさの記憶
この雨がやめば春が来る
この僕にも必ず春が来るんだ
だから右足を一歩前に出そう
春の訪れを迎えに行くために




