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学園生活1

甲高い終礼の音が退屈な座学の終わりを告げる

一つ小さな伸びをして、次の講義の教室に向かうために席を立つ


この世界では、物心ついたときから、18になるまで士官学校に通うことができる

()()とはいえ、別に()()だけを学ぶわけではない

歴史、法律、経済、儀礼作法、ビジネス、そしてもちろん、用兵、武技、魔法etc…

おおよそこの世界にある、知識や力の全てを学ぶことができる


一定の()を持つ者は、ある程度自分の自由にカリキュラムを決めることができる

極論、講義を取らずに()()()()にいってもいい。

凡そ、力を持つ者は家業自体が何よりの勉学になることが多い

彼らにとって学校とは、交友を広げるための場であり、その交流がひいては国のためになる

故に、彼らにはかなりの裁量の自由が認められている


他方、もうこの流れはお約束のようだが、

力の無いものに、選択の自由は無い

かろうじてでも、親が何か生業をもっている奴らはまだいい。

その受け継いだ()を生かすための講義を取り、ある程度の成績を納めていれば、

残りの講義は最悪落ちこぼれでもなんとかなる


問題は、自分のような孤児の場合だ

町中から集められた孤児は簡単な適性審査を受けた後、強制的にカリキュラムを決定される


別に、それだけなら百歩譲ってまだいい

なんてったって、明日の生き方も分からないような孤児を集めて、曲がりなりにも寝床と食事を提供してくれ、あまつさえ職業訓練のようなことまでしてくれる

見方を変えればまるで夢のような慈善事業だ。

立場が違えば、自分もその高潔な精神に拍手喝采して幾分かの寄付をするぐらいの事はするかもしれない


ただ、当然、そんな甘い話はない

そうやって集められた孤児たちは、基本的には早期に()()して早々に()()()()になる

…まぁ、その進路はお察しの通り

最前線やら、炭鉱労働やら、娼館やら、誰もやりたがらないが、誰かがやらなければならない

そういう()()()()()()職場で社会デビューを果たすというわけだ

最悪、奴隷としてスタートとゴールが同じだなんてことも御伽の国のお話ではない

夜伽の国のお話ではあるかもしれないけれど


それに加えて、更に最悪と呼べる事がこの世界にはある

“基本的に”身体的・魔力的な特徴は親からの遺伝の影響が強い

身体の大小・骨格の強弱に加えて、魔力的な素質の強いものは顔や腕に痣のような魔力紋が現れたり、瞳の色が通常とは異なったりする


…そして、()()要素があるということは()()要素も往々にして存在する

身体の特徴は分かりやすい。

往々にして、身体的な素養が弱い人間は、細く、薄白い肌の色素を持って生まれる。

更に最悪なことに、魔力的な素養もとても分かりやすい

魔力的な素質の極めて弱いものは燃えるような()()で生まれる


…と、ここまで振れば何が言いたいのかを大半の人間が理解するだろう

そう、僕は痩身白色、そして、()()を持って生まれていた

身体と魔力、そのどちらかの素養に極端に恵まれない人間は少ないが珍しい訳ではない

ただ、()()となると話は別だ

少なくとも、自分は生まれてからこの方、街の地下で生きていた時も、この学校に入ってからも

1人として、同じ人種の人間と出会ったことがない

こういった特徴を持った人間を、この世界では()()と呼び、区別する


自分の両親の記憶はもはや朧げだが、それでも自分を愛してくれていたことは覚えてる

しかし彼ら彼女らも、この世界では持たざる者だった

ある時から父は家に帰ってこず、母は病の床から目を覚まさなかった

父が家族を捨てた訳でないことは幼心ながら理解していた

誰も持たざる者に救いの手など差し伸べてはくれない

理不尽に憤るにも、己が身の上を嘆くにも、この身は幼すぎた


…話がずれたが、つまるところ

事実として、自分はほぼ全ての”暴力”にまつわることに一切の適性がない

かろうじて、商売には適性がありそうだが、一文無しの忌子の売るものなど、

気味悪がって普通の人間は買わないだろう


そもそも、ここまで生きられていることが奇跡に近いのだ

通常、忌子はその身体と社会的な立場の弱さから極端に寿命が短い

いままで同胞に会ったことがないのは、そういった事情もあるのだろう


ただ、そんな無能の塊をいくら学校と言えども長く置いておくわけもない

自分は()()()()()の卒業生として、数か月後の卒業が決まっている

配属先は、愛しい愛しいクソッタレな最前線

運よく綺麗に死ねればそれでよし、最悪は捕虜として奴隷になるのだろう

それが、僕という人間の終わりだ


だから、この時間も、部屋で本を読む時間を

ある意味では、余生を楽しむ趣味の域を出ることはないのだが、

それはあまりに余談が過ぎるだろう


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