魔の森4
「…質問を変えよう。僕が特別とは?」
「貴方は、特に女神の加護が厚い。最低限の魔力で生きていけるほどに。
近年、貴方のように”普通に”昼の世界で生きられた眷属はいないんじゃないかしら」
確かに、今まで自分と同じ”忌子”を見たことはない。
「理は通っているな。だが、無条件に、はいそうですか、と信じられもしない」
「それはそうでしょうね。見てもらった方が早いでしょう。こっちに来て」
そういうと、女は湖の中に向かって進んでいく
自分も、それに続いて湖に足を浸す
「この中に、手を浸して。貴方なら、多分それで十分」
女はそういうと、身体をかがめ自身の腕を水に浸す
自分もそれに習い水の中に手を差し入れる
ピリリとした感覚が一瞬走ったかと思うと、手の甲が発光していた
いや、違う、これは
「…魔力紋…!?」
浮かび上がったのは、三日月と満月を組み合わせたような薄い印
間違いない。これは魔力紋
“加護を受けた者にだけ浮かび上がる、力の証”
「それが、貴方が月の女神の眷属である証。納得してもらえた?」
そういう女の手にも同じ紋様が浮かんでいた。
「分かった。信じよう。」
…ここまで状況証拠が揃って、それでも否定するのはただの偏屈だろう。
この世界には、隠された属性が存在していた
闇属性。
ドクンと大きく心の臓が跳ねる感覚がした
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改めて、女と向き合う
「自己紹介がまだだったわね。私は、ラミア。月の女神の眷属の巫女の家系、その末裔よ」
「ラミア。僕はニザールだ。」
「改めて、初めまして、ニザール。きっと、私たちの邂逅には意味があるわ」
「お前は、ここで何をしているんだ」
「私たちの一族の使命は、この祭壇の守護と、眷属の保護。
さっきも話したけれど、女神の眷属は昼の世界では長く生きられない。
だから、彼らを探してこの聖域で保護している」
「…ということは、お前以外にも僕たちの仲間が?」
薄くだけ口角を上げた女が森の反対側を指さす
「えぇ。反対側の湖畔に、私たちの集落がある。今は100人ほどが暮らしているわ」
100人。この世界で、100人も仲間がいる、というべきか、100人しか残っていないと言うべきか
「よかったら、貴方も来ない?少なくとも地べたで休むよりは快適な環境を提供できるわ」
断る理由もない。それに、単純に興味も惹かれる
「分かった。そうさせてもらう。」
「そう。そうしたらついてきて。」
そういうと、ラミアは静かに踵を返す
振り返り際にラミアが何かを呟いたような気がしたが、聞き取ることはできなかった
月の女神、その眷属
自分と同じ存在が他にもいる、そう考えると少し嬉しいような
胸の奥がざわつくような、不思議な感情が静かに胸中に宿るのだった




