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魔の森1

改めて周囲の状況を確認する

既に戦場には夜の帳が降りており、周囲からは物音ひとつしない

あの衝突から時間が経ち、両軍ともに撤退したのだろう

或いは、それより早くこちらの本陣が落とされたか、だ。

戦況を思い出すに後者の可能性の方が高いだろう。


…意図はどうあれ、帝国軍は明確に戦争の意志を示していた。

この戦闘はあくまで開戦の狼煙であり、

これから帝国はその物量をもって周辺の小国を呑み込むのだろう。

残念ながら、本気になった帝国を止める術は祖国にはない。

既にこの戦闘の状況は届いていることだろう。

となれば、滅びゆく都に戻ったところで意味はない。

再度死地に放り出されるか、帝国に捕まり捕囚の身となるか、

どちらにせよ、折角拾った命の無駄遣いもいいところだ


さて、それではどうするか、という思考に移ったところでふととある言葉が頭によぎる

「…魔の森、か」

懐に仕舞ってあった地形図を広げる。

なるほど、気付けば自分は随分と戦場の奥まで迷い込んでしまっていたらしい。

件の森の位置はちょうど現在地から真北、月の位置を見るに、今晩中に辿り着ける距離だ。


森というからには、何かしらの動植物が生息しているだろう。

植物が育つということは、水源もどこかしらにはあるはずだ。

なるほど、確かに当面身を隠すにはもってこいの場所かもしれない。

…全く、まるでおあつらえ向きじゃないか、と薄く笑って地形図をしまう


そうと決まれば、行動は早い方がいい。

日が昇れば帝国の後詰がこの戦場を通過するだろう。

その時に姿を見られるのは美味しくない。

そう決めると、手近な死体の懐を確認する

爆心地の近くは酷いものだが、

少し離れたところにある死体にはまだ装備が残っているようだ。

…やはり、帝国はそのまま追撃戦に移行したのだろう。

今この時の自分にとっては追い風な話だが、ゾっとしない話だ。


輸送兵が持っていただろう携帯鞄に、数日分の行動が可能な食料と水分、

それと少しだけ質のいい皮鎧などを拝借した。

あまり多くを持ちすぎると体力の消耗も激しくなる。これくらいが妥当だろう。

改めて装備を点検した後、夜の闇に紛れて魔の森を目指す

道中、魔の森に関する伝承などを思い出しながら


—--------------------------------


魔の森

正式な名前は失われて久しいその巨大な森は帝国・共和国・小国群全てに面した真ん中

つまるところ、この大陸の中央に位置している。

その全貌は誰も把握できていないが、

単純な大きさであれば小国1つ分くらいあるのではないかと言われている。


なぜ、こんな巨大な森が度重なる戦火を避けてこんな場所に残っているのか

その理由は、曰く、()()()()()()からだということだ。


過去、各国から何度も調査団が派遣され森の調査自体は行われた

しかし、そもそも森からの生存者自体がとても少なく、

かろうじて生き残ったものがいたとして、酷くに衰弱しきって支離滅裂な発言を繰り返し

とても公式記録で残せたものではなかったという


またかつては、森の豊富な資材を求めて貴族の子弟たちが開拓団として森に入ったことも

あったという。しかし、それも長くは持たなかったという。

森自体に未知の危険があることはもちろん、切り出された資材にも呪いが宿ったという

家屋を建てれば常ならざる者の気配が常に付きまとい、住んだものは悉く狂死し

薪にしてくべれば出た煙を吸ったものはみるみる生気を無くし命を落とすという

森自体も危険であり、リスクを負って切り出した資材も使い物にならない

いつしか、魔の森には呪いが宿っているという噂だけが広がり、

立入る者は誰もいなくなった


古い禁書を紐解けば、そこは旧い神が降臨した地であるだの、失われた魔力の結節点であるだの、

眉唾物の記載が散見される始末だ


魔法のある世界だ、呪いがあると言われても不思議ではないが、僕は信じていない

なぜなら、()()()()()()()()()()()からだ。

魔法は、必ず何かの”属性”に分類される

この世界の属性は、全部で6つ

火・水・木・風・土、そして光

暦にも使われるこの6属性、伝承に語られるような効果を発現させる

特に、物理的な干渉を伴わない事象に影響を与えるのは光属性の特徴だが、

光含め、()()などという事象はこの属性のどれにも属していない。


つまるところ、戦術上の扱いが難しい要地なのだ。

豊富な資材は確かに魅力的だが、明確に国境を敷かれていない緩衝地帯

もしこの資源を”勝手”に使ったならば、それこそ戦争の大義名分を他国に与えかねない

軍隊を通そうにも足元も視界も悪い地形は大掛かりな部隊の行軍には向かず、

軍事的な利用価値も低い

しかし、仮にこの森が開拓されてしまえば各国への進行ルートが増え防衛費がかさむ

つまり、禁足地であってくれたほうが都合がいい

そんな地形だからこそ、呪いなどという分かりやすい理由をつけて

人がむやみに寄り付かないようにしているのだろう、と考えている


だからこそ、自分のような逃亡兵にはとても都合がいい。

特に、自分は先の戦闘で明確に7()()として処理されているはずだ

人目がないのであればそれに越したことは無い

身を隠しながら、今後の動きを考えさせてもらおう


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