初陣4
目を開けた時、僕は見知らぬ場所に立っていた
星の無い藍色の夜空、白銀の満月
足元を見れば水鏡のような水面が自分の姿を写していた
直感的に、これは現実ではないと感じる。
確か、意識が途切れる直前に不可避の死が目の前にあった
ということは、ここは死後の世界とやらだろうか。
それなりに人を殺しはしたけれど、あの状況、あの境遇では致し方ないと見逃してくれたのだろうか?
天国かどうかは分からないけれど、少なくともイメージしていた地獄とは違う
静かで、幻想的で、…それをいうなら、先ほどの現世の方がよほど地獄だ。
そんな他愛のないことを思考しながら、何かに誘われるように足を前に進める
歩けど、歩けど景色は変わらない
水平線の果てまで夜空は続き、足元の水鏡は月光を反射して淡く光を放つ
代わり映えの無い風景だが、不思議と不快な気持ちはしなかった
どれほど歩いたか、ふと気づくと、目の前に人影が現れた
こちらに背を向け、月を眺める誰かの影
あぁ、自分は、その流れるような銀髪を知っている
不意に振り向いた女の眼は、赤い燐光を宿していた
女は距離を詰めると、何事かを呟いた
「—---------------------------------------------------」
その言葉を聞き取ることはできず、代わりに首から下げた銀のネックレスが
チャリンと静かに音を立てた
それを合図にしたかのように、再び意識は暗転していった
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「…ごほっ」
次に目を覚ますと、煤けた夜空が目に入った
息苦しい。身体も鉛のように重い
けれど、動く。身体は動く。
ゆっくり意識が覚醒してくると、酷い死臭が鼻につく
半身身体を起こしてみれば、足元には自分が殺した重騎士が転がっており
少し離れた場所に短刀が転がっていた。
続いて、立ち上がり自分の身体と周囲の環境を確認する
五体は満足、五感も良好。酷くに喉が渇くのと体中が軋んで痛むことを除けば
大きな支障もない。
辺りを見渡すと、
まるで巨大な獣の爪が地面をえぐり取ったかのようにクレーターが広がっていた
何故かご丁寧に自分がいる一帯だけが綺麗に死の跡を避けていた
当然、周囲に自分以外に命がある者はいなかった
少し歩き短刀を拾い上げる。
大きな損傷は見られず、刃こぼれもない。
しいていうならば、少し重くなったような気がするが、それはこの身体の不調の影響の方が大きいだろう。
どうやら、ここは”3割”の場所だったようだ
親愛なる友人達からの贈り物によってこの場所は作られ、自分は命を拾った
深い感謝の念と共に静かに月を見上げるのであった




