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初陣2

もうまもなく戦場に突入しようかというタイミングで、空から大量の火球が降り注いだ

それは友軍と敵軍の境目に落下し、防音と共に砂塵を巻き上げた


砂塵が晴れると、目の前が大きく開けていた

自分の1~2列先には、大きなクレーターと、人であったろう黒炭が散らばっていた

後数列前にいたならば、自分がそこに転がっていただろう

まずは、3割の領域に自分は居れたらしい

まもなく、クレーターの向こうから兵士が殺到してくる。

不意に、そのうちの1人と目線が交差する

自分と同じ境遇だろうか、年若い兵士が困惑と恐怖を嚙み殺した顔で突撃してくる

それはまさしく、()()と呼ぶにふさわしい形相だった。


相手が大きく上段から振り下ろした剣を半身で躱し、

粗末な皮鎧の隙間から直剣を差し入れる

張り詰めた皮膚を割き、肉に切っ先が差し入れられる、

頸椎の横を抜け、動脈を切断する。その感触はなんとなく、腸詰め肉を裂く時の感覚に似ているな、などと随分と場違いな事を考えていた。

初めての殺人。不思議と、心は凪いだままだった。


一つ呼吸を整え、前へ出る

突き出された剣を打ち払い、切り返しの刃で首の動脈を断つ

不格好に繰り出された剣を受け流し胸当ての無い肝臓に切っ先を突き入れる

他の相手に夢中になっていた兵士の心臓に横から刃を貫き通す

打ち払い、受け流し、足を払い、柄で殴り入れ、転がった頭を踏みつぶし

躱し、殺し、避けて、殺す

時には横やりを入れながら、時には背後から切伏せながら

殺し、殺し、殺す。


何人かをモノ言わぬものに変えたあたりで、ポッキリ根元から剣が折れた。

その相手が持っていた剣を拝借したが、これまたすぐに刃こぼれが酷くて使い物にならなくなった

どの国も、最前線に配属されるような兵士に支給される装備はこの程度なのだろう

何本目かの剣を駄目にしたところで、これ幸いと槍を持った兵士が穂先を突き出してくる

僕は腰に刺した短刀を抜き、左手で一撃を受け流し右手を首へ押し付ける

するとどうだ、何の抵抗もなくその一撃は相手の頸椎を両断した

おかしな感触に左手の方へ目線を映すと、受け流した穂先に刃が食い込んでいる。

一体どんな切れ味だ。始めからこちらを使っておけばよかった。

この程度の鈍なら、まともに打ち合ってやる必要も無いじゃないか


上段から剣を振られれば避けてそのまま首を刎ねる

中団から剣を振られれば刃が届く前に腕を両断し首を刎ねる

槍が突かれれば避け、時には受け流し、引き戻すより前に首を刎ねる

こちらへの目線が切れれば、身体を低くし横から刃を内臓へ突き入れる

砂塵が上がればそれに紛れて後ろから心臓を一突きにする

スパスパとサクリサクリと後ろからの友軍に踏みつぶされぬように、

足を止めず、ただただただただ前へ進む


ふと気づけば、背後からの足音がしない

振り返って見てみれば、そこには敵軍の背中

どうやら、随分と戦場の奥地へと足を踏み入れていたらしい


視線を前に戻すと、少し開けた地形に大槍を担いだ騎兵がいた

ご丁寧に、馬まで鎧をつけたガチガチの重騎兵だ。

こちらを視認すると、ソイツはとてつもない速度で突撃してきた

それはまるで巨大な鉄塊が猛スピードで突っ込んでくるようなものだ

粗末な皮鎧と短刀が2本だけで機動力の無い歩兵では、防御も回避もままならない


…まぁ、普通はそう思うだろう。

そうでなくとも、単調な”突貫”という動きがより単調な直線運動になる

装備はご立派だが、動きが読みやすいという点では先ほどの新兵と大差ない


懐から小瓶を取り出し、()()()目掛けて投擲する。

直撃した瞬間、割れた瓶の中の”毒薬”を浴びた馬は足並みを乱す

騎士が必死に手綱を手繰り寄せるが、間もなく馬は足を縺れさせ転倒した

必然、馬上の騎士も空中へ放り出され、慣性のまま僕の前に転がることになる

ソイツが槍を振り上げるより早く、僕は鎧の隙間から騎士の首に刃を突き立てた

一度大きく痙攣した後、動かなくなった。


続くようにもう一騎が突撃してきた

次は、馬の足目掛けて短刀を投擲する

違うことなく吸い込まれた刃は馬の右前足を両断し、同じように馬上の騎士は地面に投げ出された。

そして僕も、同じようにその首にもう片方の短刀を突き立てた


投擲した刃に括りつけていた紐を引き素早く回収し

さて、次は騎馬戦か、などと考えて顔を挙げると、

無情かな、視界を埋め尽くすほどの火球が目に入った。

直感で分かる。あぁ、これはどうしようもない。残念ながら、ここは”3割”の場所では無かったらしい。

最後の足掻きに、自分に直撃しそうな火球に短刀を投擲する

刹那、火球は轟音を立てて炸裂し、僕の意識は暗闇の中に沈んでいった


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