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第5話 朝ご飯

 窓の外から、鳥の囀りが聞こえてくる。


 目を覚ました私は、何度か瞬きを繰り返した後、光の速さでベッドから降りて走りドレッサーを覗き込んだ。


 ――――そこにいるのは、赤色ではなく淡い橙色の髪で、銀色ではなく群青色の瞳で、十八歳女ではなく五歳幼女!


 私は感動に身を震わせながら、ガッツポーズする。


「夢じゃ……夢じゃねえ……いやマジ最高ですが……」


 うららかな朝日の入り込む部屋で、私は暫くの間余韻に浸っていた。


 *・*・


 居間にて用意されていた朝ご飯は、牛乳、サラダ、ポタージュスープ、目玉焼きの乗ったトーストという献立だった。


 昨日の時点で既に気付いていたことだが、母親ことコハナさんのつくる料理はとても美味しい。

 目玉焼きトーストに齧り付きながら、私は幸福に身を任せるように目を細める。


「どう? 美味しい、マルハナ?」


 向かい側に座っているコハナさんからの問いに、私は大きく頷いた。


「すっごく、おいしい! マルハナ、ママのごはん、だ〜いすき!」

「本当? マルハナにそう言って貰えて、ママとっても嬉しいわ……」


 そう言って、コハナさんは目の辺りを手で拭う。相変わらず涙腺が弱い。

 私の隣に座っているマルティスさんが、うんうんと頷く。


「本当に、コハナの料理は美味いよな。僕ももっと上手につくれるようになりたいよ」

「マルハナ、パパのごはんも、だいすきだよ〜?」

「ほ、本当か!? 何て優しい子なんだ、マルハナ……!」


 マルティスさんが瞳に涙をいっぱいに浮かべながら言う。この人もやはり涙腺が弱い。


(……というか、突飛な言動や涙腺の弱さに気を取られて、つい見失ってしまいそうになりますが……)


 私は改めて、マルティスさんとコハナさんを交互に見る。


(この二人、めちゃめちゃ顔整ってるんですよね……こんなイケメンと美人の子どもなら、そりゃあビジュがやたらめったらよくなりますよ……)


 私はひとり頷いた。

 その傍らで、コハナさんとマルティスさんが話を続けている。


「私も、マルティスのつくる料理好きよ。特にオムライスがふわふわで美味しいのよね」

「おおお、コハナ、ありがとう……! ほら、僕、オムライスが一番好きな料理だからさ。昔からそればかりつくっていたお陰かもしれないな」

「確かに、料理は経験が物を言うものね。それで言うと、私はスイーツが好きだから昔はお菓子づくりばっかりしてたわね……」


 二人の会話を聞きながら、私は可愛らしい果物柄のマグカップに入った牛乳をごくごくと飲んだ。


(そういえば私、「マルハナ=セグセーミュ感ある喋り方」、上手くできてるっぽいですね)


 マグカップを机の上に置きながら、私は安堵の息をふうとついた。


 と言うのも、昨日の誕生日会で割と素のまま喋っていたら、「ところでマルハナ、どうして今日はずっと敬語なんだ? 勿論それも可愛いけど」「確かに、いつもは自分のことを『マルハナ』って言うけど、今日は『わたし』よね。勿論それも可愛いけど」というご指摘を受けてしまったのだ。

 と言われても過去のマルハナ=セグセーミュがどんな感じで喋っていたのか知らないので、取り敢えず"幼女っぽい喋り方"を意識しているのだが、どうやらこれで大丈夫みたいだ。多分。きっと。恐らく。


(言われてみれば、常に敬語で喋ってる奴の方がレアですもんね……私も昔は違ったし……トロスたちに「勇者なのに言葉遣いが雑すぎるから、頼むから敬語で喋ってれないか」ってお願いされてからそうするようになって、それが癖付いて今もこのまんまですしね……)


 思考の流れで、私はトロス、シグレ、リリアンのことを思い出す。

 ……皆は今も、元気でやっているのだろうか?


 昨日、マルティスさんとコハナさんに、それとなく勇者関連のことも聞いてみた。

 そこで得られた情報は、「五年前、勇者一行が魔王を倒してくれた」「それから今まで、この国には平和がもたらされている」「勇者は亡くなってしまい、仲間の三人が今何をしているかはよくわからない」というようなものだった。

 つまるところ、余り大きな情報は得られなかったとも言える。


(…………まあ、きっと元気でやっているでしょう。ティアラではなくマルハナとなった今、もう皆と会うことはないと思いますけど……)


 私は、半分ほど残っていた目玉焼きトーストを齧る。

 もそもそと咀嚼しながら、少しだけ目を閉じた。


(とにもかくにも、私が今回の人生でやりたいのは絶対に『スローライフ』! げきつよ魔法を余すところなく使いまくって目指してやりますよ〜……ふふふ)


 心の中でほくそ笑んでいると、コハナさんから「……マルハナ? どうしたの、そんなににこにこして」という言葉が飛んできた。危ない危ない、顔に出ていたみたいだ。

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