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第18話 チラシ

「ふわあああああ…………」


 私は大きな欠伸をしつつ、ベッドで上体を起こす。

 それから、隣で布団から耳だけ出して眠っているわたあめを優しく揺さぶった。


「わたあめ、朝ですよ〜……気持ちのいい朝ですよ〜……」

「…………ふる、ふ〜」


 眠たげなわたあめが、のそのそと布団から出てくる。

 それから、わたしの太ももの上に移動すると、再び目を閉じた。


「わたあめ、二度寝しちゃだめですよ〜……起きるんですよ、わたあめ〜……」

「ふる、ふる〜……」


 ぶるぶると震えて眠気を飛ばそうとしているわたあめが愛おしい。

 私はわたあめを頭の上に乗せると、ベッドから出てカーテンを開く。

 眩しい朝の光に、思わず目を細めた。


「さて……今日も、スローライフを目指すとしますか……」

「ふるふ〜……」


 取り敢えず私は、わたあめと一緒に一階へ朝ご飯を食べに行くこととした。


 *・*・


 マルティスさんは既に仕事に行ってしまったようで、コハナさんが「マルハナ、おはよう! 今日もとっても可愛いわ……!」と出迎えてくれた。

 わたあめが私の頭から降りると、コハナさんの元へぴょこぴょこ跳ねていく。


「ふるふ〜っ」

「ふふ、わたあめちゃんもすっごく可愛いわ」

「ふっふっふ」


 コハナさんに撫でられて、わたあめは上機嫌のようだ。


 私は椅子に座ると、用意されていたトーストにマーガリンを塗る。


(そういえば、家族との時間をマルハナ2に任せっぱなしでしたし、今日はコハナさんと過ごすのもいいかもしれませんね……)


 そう思いながら、マーガリンを塗り終えたトーストを一齧り。

 サクサクのパンと濃厚なマーガリン、相性が抜群だ……!


 美味しさに浸っていた私はふと、机の端の方に置かれている数枚のチラシに目を止めた。

 何のチラシだろうか……そう思って、一番上にあったものを手に取ってみる。



『初心者大歓迎♪ 超簡単・にこにこふっくらパンづくり教室☆』



「初心者大歓迎……超簡単にこにこふっくらパンづくり教室……!?」


 私は目を見張りながら、チラシのタイトルを読み上げた。


 パンづくり……何て、スローライフっぽい言葉なんだ……!


 感銘を受けている私に、コハナさんが「あら、マルハナ。それが気になるの?」と声を掛けてくれる。

 私はすぐさま「マルハナ=セグセーミュモード」になった。


「うんっ! マルハナ、これ、きになる〜!」

「そうなのね! 実は今日の午後開催みたいなの。当日予約も可能らしいから、問い合わせてみる?」

「ええっ! ありがとう、ママ〜!」

「いいのよ、ちょっと待っててね……」


 コハナさんはポケットから通信石を取り出すと、居間を出ていく。

 私は右手にマーガリントーストを持ちながら、左手に持ったチラシを隅々まで眺める。


『ワイワイ楽しくパンづくり! お子さまにも人気の教室です』

『講師はパンをつくって30年・ミカ=ヴィジャウィン先生』

『焼き立てのパンを試食可能! お持ち帰りもできます』


「おおお……期待値上がりますよ〜……」


 前世で多少料理をしてはいたが、パンをつくったことはない気がする。

 パンづくりを極めれば、私の理想のスローライフにまた一歩近付くのではないだろうか。


「ふるっ……ふるる……」


 私はふわふわの尻尾を揺らしながら、朝ご飯のマモノフードをもぐもぐ食べているわたあめの背中を見る。


「使い魔にも美味しく食べてもらえるパンがつくれるようになれば、わたあめも喜ぶ気がしますしね……」


 広がる夢に、私はうんうんと頷いた。


 そのとき、コハナさんが居間に戻ってくる。


「マルハナ! 無事予約できたわ。今日はママと一緒にパン教室に行ってみましょうね」

「わーいっ! マルハナ、すごいパンつくる!」


 私はにこにこと微笑みながら、またマーガリントーストを一齧りした。

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