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【SF 宇宙】

最後の孝行

作者: 小雨川蛙

 

 昔。

 とても傲慢で、尊大なものが居た。

 それは自分の持つ力と立場を十分に理解していた。

 誰よりも。

 だからこそ、尊大なものは他者を圧しながら生きていた。

 全ての命は尊大なものを恐れ、従い、平伏した。

「私が全て正しい」

 尊大なものはそう言うと命を戯れに奪い、慈しみ、そして弄んだ。

「全ては私のために存在する。私に従うことこそが正義で私に逆らうことこそが悪なのだ」

 事実だった。

 だからこそ、全ての命は果てしなく長い間、その事実を受け入れていた。


 そして、今。

 人間という種族の王がそれを打ち倒した。

 多くの犠牲を払いながら。

「王。これでいかがでしょうか」

 王の下に大臣がやってきて一つの紙を手渡した。

 受け取った紙に書かれていた文章を王は無言のまま読んでいたが、やがて小さく頷き大臣の方を向いた。

「これでよろしいですか?」

 それは王が尊大なものを打ち倒したことを永遠に遺すための記録だった。

 王が承認した故にこの記録は歴史として残されていくのだ。

「少しだけ、手直しをしよう」

 王はそう言うと筆を取り文章のとある文字を訂正した。

 大臣は怪訝な顔をしてその文字を読みとる。

「『偉大なる王により【魔王】は撃ち滅ぼされた』……何故、訂正を?」

 王は短く、そして手向けるように静かに言った。

「せめてもの孝行だ」

 大臣は口をつぐみ、静かに頷いた。


 王の記した【魔王】という文字のインクにより【神】という文字が塗りつぶされていた。

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― 新着の感想 ―
いろんな視点で物語を書かれていて、面白いです。 人類の神殺しですね。 ”神”→”魔王”は孝行なんですね。 むしろ悪意を感じてしまいました。。。 もし良ければその想いを教えていただけると幸いです。
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